第20話 問題と問題

 俺は食堂に来ていた。

 白を基調とした清潔感がある広々とした室内だ。


 アルトルクス学園内の買い物は月に電子マネーが支給されそれを使い買い物をする。食堂で食事を摂るのも電子マネーが必要だ。


 俺は日当たりのいい席を探しそこに座る。俺が頼んだのはカレライスだ。カレライスから湯気が出ておりそれが、出来立てなのを証明している。

 手を合わせ小声で感謝を告げ食事をする。俺は辛いのが苦手だがこの食堂のカレーは甘口でかなり助かっている。


 食事を摂っていると聞き覚えのある声が俺に話しかけてくる。


「ここいいですか?」


 声の主の方を見る。

 スズ・リフトだ。最近俺によく絡んでくるクラスメイトで俺の悩みの一つでもある。


「ああ、どうぞ」


 そう言うと無表情だった顔が不満気になる。原因はわかっている。俺の口調のせいだろう。彼女はテストが終わってから俺に敬語はやめろと言ってきたのだ。俺が距離を取るために敬語で話すと不満気になる。そっちは敬語なのに。


「……いいよ」


 仕方なく崩して話す。スズは俺の向かいの席に座り持っていたうどんを置く。

 正直スズと一緒にいると気まずい。俺の方は壁を作らないで、スズは壁を作っているように感じる。

 スズは黙々とうどんをすする。スズから同席したいと言ってきたのにも関わらず会話を切り出そうともしない。


 俺はあまりの気まずさに耐えかねて話題を絞り出す。


「リフ……スズはあれから気力操作に問題はない?」


 俺は自分で出した質問の答えを知っている。つまり俺の質問は会話をするための話題の一つだということだ。


「はい。問題ありません」


 え?それだけ。

 俺はスズの淡白な答えに動揺する。そんなあっさりした答えだと「そうか……」としか、言いようがない。

 俺は次の話題を熟考する。


「あなたがアッシュ・レイジネス?」


 俺の考えはその聞き覚えのない声によって掻き消される。

 声の発生源を見ると、見覚えのある人物が立っていた。


「はい、そうですけど。あなたはえ〜と確か、ルーシュ・ダ・カトリックさん?」


 俺は白々しく聞く。


「そうよ!話があるからちょっと来なさい!」


 何故、聖女の妹が俺に用があるんだ。コイツとは俺が一方的に知っていただけであって一切の関わりがないはず。

 断る理由を探すが、カレーは完食しており、スズは我関せずといった態度で黙々とうどんをすすっている。

 よし、勉強をしたいからという理由で断ろう。


「すいません。実はこの後勉強する予定でして……」


「そんなの私と関係ないわ!早く来なさい」


 コイツまじか。


「でもこの後友達と――」


「いいから早く!」


「実は――」


「早くしなさい!」


 俺は今までの会話で察した。コイツ人の話聞かないわ。俺はため息が出そうになるがぐっと抑える。


「わかりました。行きます。」


「ついてきなさい!」


 無事に済みますように。


 俺はそう願った。

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