第19話 狂神

 俺は休日を無気力にベットの上で過ごした。いや、今は日曜日の昼だからまだこのまま過ごすとは決まっていないが、このまま過ごす予定だ。

 こんなに落ち込むとは思わなかった。人間とは脆い生き物だなと改めて感じる。

 他の事を考える余裕ができてきたのがわかる。俺はこんな一回の失敗で気力を無くすのか、俺の覚悟はそんなものなのか。


 否――


「だりぁーー!!!」


 自分を奮い立たせベットから飛び起きる。


 でも残りの時間何をしようか。久しぶりにあの"空間"に行くか。あいつに挨拶してないし。


「ふぅーー」


 目を瞑り息を大きく吐き、神に祈る。

 耳鳴りが起こり脳が超高速で回転する感覚に陥る。脳がはちきれそうになりそれが成功の合図だ。

 目をゆっくりと開ける。俺の前に広がっている光景は寮の部屋から一面真っ白の空間が広がっていた。

 そんな空間に酒瓶が転がっておりその中に人がだらしない格好でいびきをかいて寝ている。

 その格好を見て俺は呆れる。そいつは俺が近くによっても起きる気配はない。

 俺はそいつの顔を1500年ぶりに見る。人間とは思えないほどの白髪と白い肌に白い目、兎に角全てが白い。顔は百人に聞いたら百人が美人というほどの美の結晶のような顔だが、今はだらしなく口を開けてねている。体は凹凸がなく最低限の人間の形を持っている。


「おい、起きろ」


 俺は声をかける。だが、返ってくるのはいびきだけだ。


「おい!起きろ」


 いびきが返ってくる。


「最後だ。起きろ!!」


 いびきしか返ってこない。

 俺はある程度の力で腹を踏みつける。「ギュフ」と声が上がりやっと目が覚めたようだった。

 そいつは、驚いたように起き上がり周りを見渡す。そして、俺の顔を見ると信じられない物を見たような顔になるが、それは一瞬ですぐに歓喜の表情をし涙を浮かべる。


「うおーーー!アル、逢いたかったぞ!!」


 そいつは俺に飛びつくが、俺は足で顔を抑え止める。

 アルとは俺の前世のアルクスという名前のとこからとってアルだ。


「キモいから落ち着け」


「落ち着いてられるか!おいおい何千年ぶりだよ、転生するからと言ってから全然会いにこないから、失敗したんじゃないかと思って心配しだぞ」


 心配しただと、嘘つけ。

 俺は酒に酔いつぶれていたコイツのだらしない姿を思い出す。だがそれを言ってもどうせ流されるから言わない。


「約1500年経ったけど、まぁ成功したよ」


 俺は腰を下ろし寛ぐ。


「遅すぎるぞバカヤロー。お前が居ないから暇で人類を滅ぼすとこだったぞ」


「やめろ、やめろ」


 俺はへらへらと返すが、コイツ――創造神エルダの言っている事は冗談じゃない。エルダは簡単に世界を滅ぼす力を持っており、エルダは世界に執着心はない。つまり冗談ではないということ。


「今まで何やってたんだよ?聞かせろ聞かせろ」


 俺は今までの事を話す。


 エルダとの関係はかなり長い。今までの人生で最長だろう。だからといって俺はエルダの事はそんなに好きじゃない。理由はいくつかあるが一番はコイツの普通じゃないイカれた考えだ。

 エルダは俺以外の人類になんの価値も見出していない。なので俺が死んだら世界を放棄するか破滅させるかのどちらかだ。


 俺の話は終わりエルダは一つ頷く。


「本当に力を隠すんだな……まぁお前の人生だ。手は出さんよ」


 嘘だ。俺はエルダの事を信用していない。理由は、前世の時俺と勝負したいという理由で国を操作し一国の兵を俺にぶつけた事件が原因だ。


「お前は酒漬けの生活か?」


「まぁな!」


 エルダはいい笑顔で返す。

 エルダは俺の住んでいる世界では主神と崇められている。だが、こんな姿の神を見たら信仰している人は発狂するな。


 俺が神は信じても神は偉大だと信じないのはエルダが大酒飲みで狂人のような考えをもつ創造神なのが原因だ。


「程々にしろよ……」


 俺は呆れてそういった。

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