第18話 スズ・リフトの気持ち
私の名前はスズ・リフト。アルトルクス学園に通うことになった女学生です。
私は昔から人見知りです。緊張するわけじゃないんですが何を話したらいいかわからなくなり壁ができてしまいます。これだと人見知りではなくコミュ症ですね。
そんな私も今日からアルトルクス学園で新生活です。この学園は厳しく少しテストや実技で悪い点を取ってしまうと退学になってしまうような学園です。自分で言うのもちょっと変ですが私は基本的に真面目な性格だと思います。なので勉強面では問題ないと思います。そう、勉強面では。
私はすぐに問題にぶつかりました。それは、気力操作です。いくら教えてもらった通りにやっても上手になりませんでした。これには先生も困り顔で、申し訳なくとても恥ずかしかったです。
私が苦戦しているなか先生に褒められている生徒を見ました。
その生徒の名前は確かアッシュ・レイジネスだった気がします。入学式の時隣の席で目つきが怖かったので覚えてました。
彼に教えてもらおう。私はすぐに思いつきましたが、同時に悩みました。今まで関わったことがない彼に教えてと頼んでも教えてくれるのだろうか。
私は、不安と気力操作を天秤にかけました。悩んだ結果、勇気を出して教えてもらおうという結論に至りました。
そこから彼が一人になるタイミングで話しかけました。少し声が震えていたかもしれません。そんな臆病な私に彼は笑顔でいいよと言ってくれました。嬉しかったというよりとても安心しました。
二人で道場に着き早速練習を始めました。
彼はまず気力を右腕に集めてほしいといい私はそれに従い失敗しました。次に腕に気力を流すからそこに気力を集めてと指示を受けます。これを言われた時私にあった感情は驚きでした。彼は自分の体内の気力操作も上手でさらに他の物に気力を流せるのかと、純粋に驚きました。
彼が気力を流すと腕が暖かくなってきました。これが気力という物かと感動しながらも気力をそこに集めようと集中します。
さらに彼は、力を抜いてリラックスをしてと言いました。私は彼の言葉で体がガチガチに固まっていたことに初めて気づきました。私は言われるがまま力を抜きます。すると、今まで微かにしか感じなかった気力をハッキリと感じるようになりました。
そこからは簡単で今までの苦労が嘘みたいに気力操作ができるようになりました。
そんな中私は、彼は何者なのか疑問を持ちました。今の一年生はまだ習ってない他の物に気力を流し込む気力操作を平然とやり、先生もお手上げだった私の問題も短時間で解決する。
私は人生で初めて天才と呼べる人物に出逢ったような気がしました。
そして私は人生で初めて関わりたいと思いました。強い人は人を惹きつけるのでしょうか。
彼とはそれから世間話程度をするようになりました。彼が敬語を使って距離を保つので私も敬語で彼が嫌がらない距離を保っています。何かお礼をと思って尋ねても、彼は丁寧な言葉でそれを断りました。私は心の中にモヤモヤする物を感じながら渋々引き下がりました。
ですが彼は、勉強を教えてほしいと頼んできました。勉強は私が得意分野だったので私は快く承知しました。
私は恩を返すように出来るだけ丁寧に教えました。彼のレベルを理解し、どこが苦手が考え教えました。
そして試験結果。私は自分の名前より彼の名前を先に探します。
そして彼の名前を見つけて、その結果に申し訳なく思いました。彼の顔を見ると世界の終わりのような顔をしており、その姿は私が気力操作をできない時の様子と重なってるように見えました。
私は自分の順位を見る気にもなれず、ただ責任を感じました。これは私のせいです。今頃になってあの時はこう教えていればなど後悔が浮かんできました。
謝って済むべき問題なのだろうか。ただ彼は私が謝ったら笑顔できっとこういうでしょう。
「大丈夫だよ」
私はその優しさに甘えていいのでしょうか。否、いい訳がない。人生初の、友人になりたい人を自分の心を軽くするために利用するなどいい訳がありません。
ただ彼は私と距離を取っています。行動で謝ろうと思っても彼は私を頼りません。
それなら、彼の近くにいよう。彼が困ったら助けよう。彼――アッシュと友達になろう。
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