第16話 ベンキョウワカンナイ

 あれからスズとの距離は少し縮まった。縮まったと言っても挨拶や世間話を一言二言交わすくらいだ。だが、これでいいと思っている。仲が良い人物を作るのはとても重要な事だと思うが、作りすぎは厳禁だと思う。俺の場合は一人で充分だ。それに、スズにも壁があるように感じた。それならわざわざ距離を縮める必要もない。


 それと、スズの気力操作のレベルは周りと同じくらいまで成長した。気力は感覚を覚えれば簡単に使えるようになると、俺は考える。

 この事に関してスズは俺にかなり感謝してくれているらしい。何かお礼をと言われたが、別に何か欲しいというわけでもないので断った。


 今俺は自分の部屋で机に向かって勉強をしている。最近は勉強漬けで、学校にいる時も、自分の部屋にいる時も勉強しかしていない。友人関係を多少犠牲にしても、近くに迫っている実力テストで上位を取るという目標は達成できない。

 英雄なら頭もいいだろ、という固定概念は今すぐ豚の餌にでもしてほしい。頭の悪い英雄だっているんだ。


 俺はわからない問題に直面し、ペンを叩き付けそうになる。魔法陣なんて意味がわからない。前世でも今世でも無縁のものに俺は直面している。

 先生にも質問したが、先生達は人数が少なく一人のために時間を取るのは難しい。限られた短い時間の説明だと何を言っているかさっぱりわからなかった。


 スズに教えてもらうか。俺は涼しげな彼女の顔が浮かぶ。他の人に教えて貰うのも考えるがスズは確実に頭がいい。俺に恩を感じていて確実に頭がいいスズに頼むのが賢明か。


 あまり近づかない方が良いという考えもあれば、勉強教えて貰うだけだから大丈夫という考えの自分もいた。こんなのが人類の砦とか言われてたと思うと笑いがこみ上げてくる。


 俺はペンを机にリズムよく打ち付け考え結論を出す。



 教えてもらうか。


 俺はそう決定した。

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