第15話 彼女の問題
授業が終わり友人達と軽い挨拶をして寮に戻る。正直この学園の敷地は広すぎると思う。1500年前でもこんなに広大な敷地は教会本部か城くらいしか見たことがない。時代という物は恐ろしく偉大だなと思う。
俺は出来るだけどこにどの施設があるか覚えるため周りを見渡す。
そんな風に歩いていると目の前にスズがいることを直前で気づく。
「アッシュくん、ちょっといいですか?」
いつもの凛とした表情に声だが、緊張の色が少し入っているのに気づく。無理ですと言いそうになるが口の中で転がし殺す。
「いいですよ。僕に何か?」
無難にそう答える。敬語なのは相手が敬語を使っているので、ここでいつも通り喋ると相手の距離を間違えてしまう可能性があるからだ。
「はい。あの……この後時間ありますか?」
「ええ、ありますよ」
俺は正直に答える。できればなんで時間を聞いてきたか理由まで欲しいがしょうがない。
「あの……その……気力操作教えてくれませんか?」
そこまで動揺はしなかった。何故彼女が俺に頼んだのか大体が予想できたからだ。恐らく先生が俺に教えてもらえと言ったのか、俺が授業で褒められているところを聞いていたのだろう。
俺は考える。正直に言えば嫌だ。理由は単純だ。面倒くさいからやりたくない、ただそれだけ。
たが、断った場合何かしらの理由をつけても好印象には繋がらないだろう。最悪の場合悪印象与えてしまうかもしれない。大袈裟な考えかもしれないが敵になってしまう可能性だって無いとは言えない。
俺は結論を出す。
「僕でよければいいですよ」
笑顔でそう答えた。
俺とスズはジャージに着替え、いつも気力の授業で使う道場に来ていた。この時間だと使用している者はかなり少なく、そのせいでかなり広く感じる。
「じゃあ、まず右腕に集めてもらっていいですか?」
「はい」
スズは短く答え目を閉じる。
なるほど。全く気力動いてないな。正直俺は感覚派なので教えるのは結構難しい。前世では、「どうすればそんなに上手くなれますか?」とか聞かれても「練習だ」としか言えなかった。
スズは目を開け自信無い目で俺を見る。
「右腕でに何か変化はありましたか?暑くなったとか」
「いえ……無いです」
「じゃあ次は僕が補助をかけます。これは、僕に気力操作を教えてくれた人が僕に実際にやった方法です。もう一度やってみてください」
「わかりました」
スズはもう一度目を瞑る。その表情は集中していて、とても緊張している。
「右腕触ってもいいですか?」
これは別にセクハラとかそういうのでは無い。例の方法を行う為には気力を集める部位に触らなければならない。
スズが頷き俺は右腕腕を触り気力を送ると同時に原因に気づく。
スズが気力操作ができない原因。それは、力の入れすぎだ。
「今右腕であったかくなってると思いますが僕が気力を送っています。そこにめがけて気力を集めてください。後、腕に力を入れすぎています。力を抜きリラックスをすればできると思いますよ」
「……わかりました」
スズは息を吐きそういう。
するとスズの気力が右腕に移動していくのが見える。俺は触るのをやめ気力を送るのをやめる。
「変化はありましたか」
「……あったかいです。これは……アッシュさんの気力ですか?」
「いえ、僕は気力を送っていません。ならそれは、スズさんのですね」
「本当ですか!」
スズの気力がバラバラになりかける。喜びのあまり集中を乱したのだろう。
「あぁ、集中してください。出来る限りその感覚を体に覚えさせたら次からも上手くいきますよ」
「わかりました」
俺と彼女はそう言ってしばらく気力操作の練習をした。
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