第12話 とりあえず観察

 校長の部屋に行った次の日の朝。天気は晴れ、春の心地よい風が吹いている。

 俺は制服を身に纏い気合いを入れる。第一印象が重要だが、見た目の第一印象は良くはないと思う。だから、雰囲気と会話で印象付ける作戦だ。


 校舎に向かう時間が遅いせいか、校舎に向かう人は少ない。恐らく殆どは俺より早く向かったのだろう。


 校舎内に入り自分の教室まで向かう。流石に自分の教室は覚えていて迷わず真っ直ぐに行けた。


 アルトルクス学園のクラスは、Cクラス、Bクラス、Aクラス、Sクラスの順にランクで分けられている。人数は、Cは20、Bは20、Aは10、Sは0、となっている。今この学園でSクラスに在籍しているのは勇者パーティーだけだ。

 そして、Sクラスだけの特権が存在しそれは、授業を受けなくてよいこと、プロと変わらずダンジョンに潜りその際入手したアイテムは個人で保有してよいこと、時間が指定されている施設をいつでも使用してよいことなど、他にも沢山の特権がある。


 なら何故俺はそこにはいかなかったか。理由は簡単。めんどくさいから。俺は知っている。それだけの特権が与えられるということは、それだけの利用価値があるということ。つまり面倒事を押し付けられるということだ。断言しよう。そんな面倒くさい物を押し付けられるくらいなら特権なんていらない。


 そんな事を考えていたら教室に着いた。少し緊張するが問題ない。気合いを入れ直して扉を開く。教室に入り昨日指定された窓側の席に向かう。

 席に着き周りを観察する。流石Bクラス。そんな目立った人物はいなく、皆んな真面目そうだ。まぁ当たり前か。アルトルクス学園は世界屈指の名門校。いくら魔術や気力が上手くても筆記試験を通らなければ魔術も気力も披露できない。つまりこの学園には真面目な生徒が殆どということ。

 俺はもう少し観察する。

 教室の生徒の半分はグループや友達と集まり半分は一人で何かをしている、という感じだ。俺はこの光景に安堵する。つまり、完全なグループで固まっていないということは友達も出来やすいということ。今日は基本的には様子見だ。自分から話に言って相手のテリトリーに近づき過ぎると反発を食らうかもしれないから。


 チャイムが鳴り先生が入ってくる。俺は同時に背筋を伸ばし姿勢よく座る。


 この学園の担任の殆どはこの学園の出身で一度はプロになった者ばかりだ。教科書の事だけではなく実践の事も教える。これが校長の考えらしい。




 人生初の学園ライフが今始まる――

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