第11話 秘密
学園では夜間の外出は禁止されている。だがら俺は、初級魔法ステルスを使う。この魔法は簡単に言えば目立たなくする魔法だ。
魔法が発動したのを感じ部屋の窓から外に出る。
身軽な動きでアルト校長の部屋まで向かう。アルト校長の部屋は校内説明の時に教えてもらった記憶があったので迷わず向かう事が出来た。
屋敷に着く。屋敷全てを歩いて探すのは一苦労なので、中級魔法ディテクションポイントを使用する。ディテクションポイントは気配探知系の中級魔法で、自分を中心とした周りの生物の気配を感じ取る事が出来る。距離は使用した者の技術で変化する。ただアイテムや魔法や結界などで阻害されると空白ができたように探知できなくなる。だが上級魔法のパーフェクトポイントは阻害する物にもよるが、それらを施していたとしたて関係なく実行できる。更に範囲も精度も上昇し上位互換だ。
気配探知の結果二階にいる事が判明し向かった。
バルコニーに着き、失礼承知で窓を開けそこから侵入する。すると俺の目に入ったのは、暗い部屋の中、中央に置かれている椅子に座り優雅に紅茶を飲んでいるアルト校長だった。
「英雄様。よくぞおいでくださいました」
俺はこの一言で確信する。こいつ前世を知っている。殺すか?いや、それは早計だ。
「何故わかった?」
「私の加護。叡智の目は魂を見ることが出来ます。貴方の魂は、私が子供の頃エルフの里で見た英雄様の魂と同じなのです」
「魂か……似た魂かもしれないぞ?」
「いえ、似た魂はありますが全く同じ魂は二つと存在しないのです」
なるほど。こいつが言っていることは本当ならその加護も本当なのだろう。まぁ実際俺が英雄って当たってるし。
あと、そんな簡単に加護を人に話していいのか。俺は疑問に思う。考えられることはこいつが俺のことを信用しているから話した。これが妥当か。だが、俺の警戒は解けない。怪しい動きをした瞬間に首を飛ばす。俺は決意した。
「それで、何故俺を呼び出した?」
「それは、礼を言いたかったのです」
「礼?」
俺は疑問に思う。心当たりが一つもないのだ。前世からも今世の記憶の中にも礼を言われるようなことは、こいつにはしていない。
「約1500年前。私が住んでいたエルフ里に魔人が現れたのです。私達が崇めていた神木を切り倒し同胞を何人も殺害し困っていた中、現れたのが貴方様です」
俺は言われてもイマイチ思い出せない。本当にそれ俺か?
「英雄様はその魔人を一撃で倒し、里に平和を取り戻していただきました。この伝説はエルフの里で語り継がれています」
そういえばそんな事もあったな。
俺は警戒度を一つ下げる。
今まで椅子に座って話してたアルト校長は床に片膝をつき恭しく頭を下げる。この行為に戸惑わなかったのはおそらく、前世で頭を下げられる行為を沢山体験したからだ。そんな事を分析するくらい俺は気持ちに余裕が出来ていた。
「英雄様のお陰で我が同胞が住むエルフの里は今でも存在しております。私がエルフ代表を持ちまして感謝を告げさせて頂きます。誠に有難う御座いました」
「それなら三つお願い事を聞いてくれ」
「何なりと」
俺はここぞと言うばかりに要求し、すぐに浮かんだ要求三つを告げる。
「一つは、俺は目立ちたくない。それを知って行動してくれ。二つは、何か俺が困った時力を貸してくれ」
「勿論でございます。私が出来る事ならば、全身全霊を持ってお力添えをしたいと思います」
そこまで全力でやられるとなんか嫌だな。
「そして三つは、たまにここに遊びに来ていいか?愚痴を聞いてくれ」
俺が何故三つ目のこの願いを言ったのか正直自分でもよくわからない。ただ、予想の範疇だが恐らく前世を知る人物にあって愚痴のはけ口にしたかったのだろう。
アルト校長は一瞬表情が崩れるがすぐに綺麗に微笑む。
「勿論いいですよ。お待ちしております」
彼女はそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます