第10話 整理と困惑
入学式が終わり校内を案内されたが、全く頭に入ってこなかった。どうしてもあの校長の顔が頭から離れない。あのウィンクを思い出す度に集澡を感じる。落ち着け、この程度で動揺したらこの先の非常事態の対応も不安だぞ。俺は自分で自分を叱る。
とりあえずは放置で相手が何か行動を起こしたら動き出そう。最悪の場合は殺害も視野に入れておこう。
アルトルクス学園は寮だ。基本的には校内のみで過ごすことになり、不自由ない生活を送るための施設も校内に設けられている。
俺は自分の寮のベットにダイブし、今日の整理をする。
まず、勇者だ。ちなみに、俺の時代に存在していたのが初代勇者だ。初代の事を説明すると、歴代勇者パーティーの中で史上最強のパーティーだったが俺がダンジョンを攻略したせいで日の目を浴びなかった可哀想なパーティーというのが世間の印象だ。だがその強さは四人パーティーで俺に勝算があるかないかくらい。
見た感じ初代より弱いと思うが、それでも俺を倒す事が出来るのに一番近いパーティーだろう。
要注意。俺は心に刻む。
次に校長。確か名前はアルトだったな。見た感じエルフで精霊に愛されているという事はわかった。見た目は、殆ど何も着飾らず、金髪ロングの髪も切り揃えられているだけだった。一言で言うならば質素、そんな印象だったな。
そして、問題なのはあいつが俺の存在に気づいたかもしれないという事。可能性として考えられるのは三つだ。
一つ、俺に気づき俺に向かってした。
二つ、俺の周りの誰かにした。
三つ、ただの俺の勘違い。
俺の足りない頭ですぐに思いつくのはこれくらいだ。こちらから行動を起こすのは危険だ。そう判断する。
あとは、これからの学校生活の立ち位置だな。理想を話すと、敵を作らず広く浅い交流関係を築き、定期テストは二位か三位辺りを陣取り、実力テストではそこそこの結果を残す、これが理想。
そして、最低限達成しなければいけない事は敵を作らない事。敵がどれだけ面倒くさいかなんて、前世で死ぬほど味わったからな。
そして、やってはいけない事。これは勿論力を発揮し過ぎて注目を浴びること。力とはどんな奴が持っていても注目を浴びてしまうものだからな。これも学んだ事だ。
今日は不思議に疲れた気がする。そして、明日から学園生活が始まる。そう考えると、ここまで来たかという考えとまだ道はあるのかという考えが浮かぶ。対照的に違う二つの考えだ。
仰向けになり天井を見るとどこから入ったかわからない緑色の光を放つ球体がフヨフヨと浮いている。俺はその球体を知っていた。入学式に見たものだ。それは、アルト校長の微精霊。
「報告!報告!アルトの部屋まで行け!行け!」
喋る度に光が強くなる微精霊に枕をぶん投げたくなる衝動を抑え、精霊が言った事を消化しようとする。言っていることは簡単だ。アルト校長の部屋まで行けということだろう。
俺は少しの絶望感を味わいながら立ち、窓の外を見ながら呟く。
「死ね」
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