第8話 合格発表

 ホテルの一室。俺は試験から帰ってきた。あの後、他の受験生の初級魔法と気力操作を見ていたが印象に残る人物はいなかった。これから同級生になるかもしれない人達の情報は重要だ。情報取得を疎かにし非常事態が起きた時に自分の力だけで何でも上手くいくなんて考えてはいけない。前世で学んだことだ。

 俺は前世で使わなかった頭を、今世では最大限活用するつもりだ。

 そんな事を考えていてもどうしても頭にチラつく試験結果に俺は苛立つ。俺は、この部屋に着いてから何回目かわからない深呼吸をする。

 かなりの時間が経っている筈なのに全然合否の封筒が届けられない。


 俺はとりあえず落ち着くために気力操作をしていた。数え切れないほど行ってきた動作は洗礼されており前世では自慢の一つだったが、この力のせいでと思うと今世では憎くてたまらない。

 ドアをノックする音が聞こえ、封筒が下から入ってくる。俺は一つ深呼吸をしゆっくりと封筒の元まで歩く。

 少し足が震えるのがわかる。それでも歩みを止めず封筒を拾い上げ封を開ける。唾を飲み込み乾ききった喉を潤そうとする。

 手紙をゆっくりと広げ上からじっくり見ていく。下にいくに連れて鼓動が早くなってくるのがわかる。受験ってこんなに緊張するものなのか。

 読んでいき、ついにその文字までたどり着く。俺はその文字を読み上げた時力が抜け膝から崩れて落ちる。涙がでてきた。


「やった」


 Bクラス 合格。その文字を見て思わず呟いた。しかも、狙っていた所だ。今世に来て初めて努力し初めて報われた気がした。世界もまだ捨てたもんじゃないな。


「だらぁしゃーー!!!」


 扉の外からそんな声がハッキリと聞こえてくる。俺と同じ受験生が叫んでいるのだろう。俺の場合は力が抜けたバージョンだったが、気持ちは痛いほどわかる。

 興奮がどんどん湧き上がってくる中俺はある事を思い出す。


「父さんに連絡するか」


 ベットに放り投げていたスマホを拾い慣れた手つきで文字を打つ。こういう時どんな風に伝えればいいか困る。俺は父の顔を思い浮かべ、打っていた長文を消し電話をする。

 すぐに反応し、父の声が聞こえ何故か懐かしく感じる。俺はその声に反応し口が思わず緩む。

そして俺は褒めてもらいたい子供のように言う。



「父さん、俺――」

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