1496.質疑篇:世界観はいつ作ればよいのか
直近のご質問などを精査しながらお答えしております。
本日はご質問が一件ございました。
予定をずらして明日3月21日日曜日の連載終了となります。
日曜12時までにご質問・お問い合わせをいただければ採用されますのでぜひご質問・お問い合わせくださいませ。
今回は「世界観」創りについてです。
「世界観がたいせつ」と言いながらも、どこで「世界観」を設定するべきなのか。
「世界観」を設定しても、それを文章にして説明しないよう、あえて「世界観」を決める時点を明確にしませんでした。
お問い合わせがありましたので、切り込んでみたいと思います。
世界観はいつ作ればよいのか
今回は「世界観をいつ作ればよいのか」お問い合わせがございました。
実はこの問題。意図的に書き漏らしていたのです。
なぜあえて「書き漏らした」のか。
それについてお答え致します。
世界観は披露するものではない
まず「世界観」の大前提です。
そもそも作中で「世界観を披露する」必要はいっさいありません。
こう書くと「世界観がブレてしまう」と考える方が多い。
しかし「世界観」を文章にして書いてしまうと、読み手はまるで「設定資料集を読まされている」ような感覚に陥ってしまいます。
正しい「世界観」は書き手だけが把握していればよいのです。
たとえば小説を読んでいて「織田信長」が出てくる。
これだけで読み手は「歴史」「時代」「伝奇」ものかなと思いますよね。
他にも「羽柴秀吉」「徳川家康」が出てきたら決定的です。
たとえば「芥川龍之介」が出てくる。
他にも「直木三十五」「菊池寛」が出てきたら、こちらも「歴史」「時代」「伝奇」のいずれかだと判断します。
しかし「J.K.ローリング」「ダン・ブラウン」までもが出てきたらどうでしょうか。
同時代を生きていない人物が登場したら「歴史」「時代」に分類するのは無理があります。よくて「伝奇」か「現実世界ファンタジー」と考えられるのです。
つまりジャンルを決めるのは「世界観」ではなく「登場人物」のほうだったのです。
たとえば「異世界ファンタジー」で和風ファンタジーをやりたいのなら、日本のどこかの時代から着想を得て、そこから現代とは異なる世界に仕立てる。大正時代が15年で終わらないとしたら。またガソリンが普及せず石炭火力による蒸気機関が活躍していたら。
こういった「世界観」を設定すれば、確かに「和風ファンタジー」だとわかります。
しかしこれらすべて文章にして書かなければ「和風ファンタジー」と伝わらないものなのか。
「真宮寺さくら」「神崎すみれ」「桐島カンナ」という名前が出てくるだけなら「日本が舞台か」と思いますよね。そこに「マリア・タチバナ」「李紅蘭」「アイリス(本名はイリス・シャトーブリアン)」と名前が出てきたら「国際的な物語だな」と判断できるでしょう。
そこに「大正桜に浪漫の嵐」というキャッチコピーだけで「大正時代」とわかります。
「蒸気機関」「魔術」「霊力」といった単語が混在して「架空の大正時代」を醸し出すのです。
もちろん小説ではなくゲームなので、イラストを見るだけで「架空の大正時代」だとわかります。
小説だったとして「架空の大正時代」がどこまで「架空」かを書けばよいのでしょうか。
「蒸気機関」自体は現実の明治時代にもありましたから、大正時代でも問題ありません。
しかし「魔術」「霊力」「霊子甲冑」などのファンタジーな単語を書くだけで「現実の話ではないな」と読み手に判断してもらえます。
「世界観」を直接語ることなく、単語だけで「世界観」が築かれていくのが、本来小説でありうべき表現です。
「世界観」は書き手が把握しておくべきもの。読み手は人物や単語の端々から察して独自に構築するのが小説に求められる「世界観」となります。
世界観の構築はあらすじで
では「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」のどの段階から、書き手は「世界観」を構築すればよいのでしょうか。
「あらすじ」です。
「企画書」は「どんな主人公がどうなりたくてなにをなしどうなった」かを決めるだけ。
この段階では「いつ」「どこ」が舞台になっても通用します。
つまり物語の雛型はどんな世界観へも展開可能なものなのです。
そして「あらすじ」ですが、ここでは「主人公に起こる出来事」を三つ決めなければなりません。どんな「出来事」を起こせば物語が面白くなるか考えます。
このどんな「出来事」か考えるときに、「世界観」が築かれるのです。
たとえば宇宙が主戦場となる戦争物語を考えていたら、起こる「出来事」も宇宙規模になります。まさか「裏の畑でポチが鳴いた」なんて出来事がこの物語にふさわしいとは思えませんよね。
つまり「出来事」を考える際には、すでに「世界観」を構築していなければならないのです。
「世界観」にふさわしい「出来事」を決めれば、読み手は説明されなくても「世界観」を理解します。
たとえば「悪魔の実を食べて能力者となった」「海賊王を目指して外海へと船出した」「『ひとつなぎの大秘宝』を手に入れる」という三つの「出来事」を書いただけで、「大航海時代」のような「ファンタジー」だと判断できますよね。
間違っても「この物語は大航海時代を舞台にした異世界ファンタジーだ。」などと書いてはなりません。
「世界観」を直接書かなくても「出来事」を決めるだけで読み手に伝わるのです。
だから「世界観」の構築は「意図的に書き漏らし」ました。
本文で書く必要がないからです。
いかに「出来事」三つで読み手に「この物語はこんな世界観なんだ」と思ってもらえるか。書き手の工夫が求められます。
「箱書き」は物語が繰り広げられる「
この段階ですでに「世界観」が構築されている必要があります。
それこそ「宇宙が舞台」なのに「裏庭」シーンがふさわしいのかどうか。少し考えればわかりますよね。
「企画書」はどんな「世界観」でも成立する、普遍的な物語の芯を決めるのです。
だから「企画書」の段階から「世界観」を決める必要はありません。
その物語にどんな「出来事」を起こして主人公に影響するのか。
「あらすじ」の段階で「世界観」を決めなければ「ふさわしい出来事」も思い浮かばないのです。
うまく三つの「出来事」とキャラクターや場所の名前を決めれば、あえて「この物語は大航海時代を舞台にした異世界ファンタジーだ。」なんて書かなくても、読み手はじゅうぷんに察せられます。
いかに「世界観」の設定を書かずに「世界観」を表現できるか。
書き手の力量が問われます。
最後に
今回は「世界観はいつ作ればよいのか」にお答え致しました。
ズバリ「あらすじ」の段階で「世界観」を決めてください。
「世界観」も決まらずに「ふさわしい出来事」なんて思い浮かびません。
狭い村の話なのか、宇宙を股にかける壮大な物語なのか。
「出来事」をどこまで広げるか、どんな種類にするかで「世界観」を表現するのです。
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