1497.質疑篇:どうしても閃きに従ってしまう

 直近のご質問などを精査しながらお答えしております。


 本日はご質問がございませんでした。

 明日3月21日日曜日の連載終了となります。

 日曜12時までにご質問・お問い合わせをいただければ採用されますので、ぜひご質問・お問い合わせくださいませ。


 今回は「ひらめきに頼った創作法」をしてしまう方のお問い合わせです。

 ある程度書けるようになると、読み手の反響からひらめきを得て物語を変更してしまうのです。

 結果として、当初想定していたエンディングが使えなくなってしまいます。

 どうすればエンディングへたどり着けるのでしょうか。





どうしても閃きに従ってしまう


 ある程度「書ける」方ほど、読み手の反響や内から湧いてきた「ひらめき」を展開に採用したくなるものです。

 原体験として、そうすれば評価も高まるのを味わってきましたから。

 すると先の展開や結末を変えなければならなくなる事態も発生します。

 はたして「ひらめき」に従うべきなのか。「あらすじ」「箱書き」に従うべきなのか。

 ひとつ考えてみましょう。




ひらめきは金鉱脈か

 ある程度書ける方ほど「ひらめき」をとてもたいせつにします。

 「読み手にウケる」展開だと肌で感じているからです。

 小説投稿サイトで連載しているときほど、読み手からのリクエストが届いて「ひらめき」を生みやすくなります。

 だったらリクエストを気にしなければよいのですが、ある程度書けてしまうとつい欲張ってしまうのです。

 こういうふうに変更したら、きっと多くの評価が得られるに違いない。

 腹積もりがあると、どうしてもリクエストに応えたくなります。

 「ひらめき」がゴールドラッシュ時代の「金鉱脈」に見えてくるのです。

 そこに明らかに金鉱脈があるのなら、掘らないでどうする。

 そう考えてしまうわけです。

 しかし金鉱脈も掘りすぎれば尽きてきます。尽きない金鉱脈は存在しません。




ゴールドラッシュの末路

 アメリカのゴールドラッシュも、人々が一気に熱狂して、鉱脈が尽きた途端に廃れて見向きもされなくなりました。

 残されたのは補強工事もせず無計画に掘り進めた廃鉱だけです。いつ崩落するか、誰にもわかりません。

 小説も同じです。

 「ひらめき」に従ってウケのよい展開に変更していくと、無計画に鉱脈を掘り続けてしまいます。するとどうしても「いつ崩落するかわからない」危なっかしい金鉱が出来あがるのです。

 計画的に金鉱を掘り進めれば、補強工事をしながらなので崩落する危険も大幅に低減できます。

 ひらめきを取り入れたくなったら、できるだけ慎重に「物語へ与える影響」を精査してください。

 「いつ崩落するかわからない」小説ではなく、きちんと管理し計画的に取り入れていくのです。読み手のウケもよくなりますし、物語の結末まで波及せずに済みますよ。




ひらめきは蜃気楼かもしれない

 金鉱脈と呼べるようなひらめきを得ると、やにわにゴールドラッシュに沸き立ちます。

 展開を高く評価され、人々に注目されてレビューが書かれ、それがさらに人々を呼び込むのです。

 それほど劇的な効果が見込めるのがひらめきの特徴。

 ですが、ときとしておぼろげに見えているのに、いつまで経っても「高評価」へ到着できない場合もあります。

 これは「蜃気楼」と呼べるでしょう。

 ひらめきが湧いてきても「実体を伴っているのか」「見えはするけど実体がないのか」を慎重に見極めなければなりません。

 金鉱脈ではなく「蜃気楼」のようなひらめきもあるからです。




数をこなして眼力を持つ

 手練れの書き手なら、金鉱脈なのか蜃気楼なのかを見分ける「眼力」があります。「眼力」を持っていれば見分けがつくのです。

 どうやれば「眼力」が備わるのか。

 経験を積む以外にありません。

 実際にひらめきを得て、それを連載に反映させた実績でしか「眼力」は備わらないのです。

 数をこなせば、そのうち「このひらめきならこれくらいの反響がある」とわかるようになります。

 プロとして成功している書き手は、担当編集さんを通じて読み手からのファンレターを読む機会があるのです。そのとき当然ながら「こうしてほしい」と要望が寄せられます。

 そうすれば面白くなりそうか、予定していた結末が変わらないでいられるか。

 歴戦のプロには「眼力」があります。駆け出しのプロは持っていなくても担当編集さんが持っているものです。

 そうでなければ、大ヒットする作品なんて書けやしません。




ひらめきを試すためだけの連載も

 だからコケてもよい「ひらめきを試す」ためだけの連載をしてみるのも一興です。

 書き手本人にさえ制御不能な連載でも、きちんとオチをつけて終了させていけば、連載の畳み方も堂に入ります。

 私の執筆法はひらめきには頼りません。あくまでも構成力を第一に考え、予定調和で終わらせる「王道」の書き方です。

 だからアドリブに弱い。

 そう自覚するようになってから「ひらめきを試す」ためだけの連載に挑戦してもよいでしょう。

 前述しましたが、プロになれば読み手の要望に応えようと提案される可能性もゼロではありません。

 可能性がある以上、アドリブにも強くなる必要があります。

 挑戦したいのなら、構成力重視の書き方を身につけてからにしてください。

 最初から「ひらめき重視」にすると、収拾がつかなくなりますよ。




ひらめき一本足打法からの脱却

 書き手によっては、すでに「ひらめき頼り」の執筆が身についているでしょう。

 その場合は、私の執筆法で「構成力重視」の書き方を何本か経験してください。

 最初はどうしても「ここをこうしたい」とひらめきが湧いてくるはずです。

 それでもひらめきに従わないでください。

 あくまでも当初定めた「あらすじ」「箱書き」を出ないようにするのです。

 おそらく相当焦れると思います。「ここをこうしたい」に突き動かされそうになっている。それが実現できない状況は耐えがたいのです。

 ですが「ひらめき一本足打法」からロジック重視「構成力重視」でも書けるようになれば、バランスがとれてきます。安定して面白い作品を量産できるようになるのです。

 「ひらめき頼り」の暴れ馬を乗りこなすのも確かに面白い。

 ですが毎作そんな状況では、そのうち疲れて振り落とされてしまいます。

 「ひらめき一本足打法」では早晩大怪我は免れないでしょう。

 だからこそ「ひらめき」と「構成力」のバランスがとれるようになってください。





最後に

 今回は「どうしても閃きに従ってしまう」にお答え致しました。

 私が提案しているのは「構成力重視」の手堅い物語です。

 手堅いながらも自由度があり、いくらでもダイナミックな展開にできます。

 緊密な「プロット」に仕上げたのに、ウケのよさそうな「ひらめき」を得てしまったら。

 それに従い続けるのでは、暴れ馬から振り落とされたり奔流に飲み込まれりしてしまうだけです。

 かといってまったくひらめきを無視するのも精神的につらい。

 構成力とひらめきのバランスをとりながら連載できるようになりましょう。



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