1488.質疑篇:ひと段落が長くならないように
過去のご質問などを精査しながらお答えしているため、応募期間が多少前後しますのでご了承くださいませ。
「水曜で連載終了」と書きましたらひとつご質問を受けました。
そのため早くて土曜日の連載終了に延びました。まだまだご質問を承りますので、気兼ねなくご質問・お問い合わせをいただければ幸いです。
今回は前回に関連した「余白を空白行で作る」インターネット小説で特徴的な書き方についてです。
ひと段落が長くならないように
十万字の文章は、読み手側からするととても長く感じます。
しかし文章を工夫すると、あまり長さが気にならなくなるのです。
「段落」の見せ方を工夫してください。
内容が変わったら改行する
一般的に「改行」するとそこに「段落」が作られます。
ひとつの物事を記述し、それから離れるときに「改行」して読み手に「ここから違う物事について書いていますよ」と知らせる。そんな効果が「改行」にはあります。
内容の切れ目がはっきりしているので、読んでいてとてもラクです。
たとえ十万字の小説でも、「段落」がサクサクと切り替わると長さを感じさせません。
「段落」は「文章を内容で区分けしたもの」です。
内容が異なれば「段落」を分けます。もし内容が異なるのに「改行」しなかったら。読み手はどこが切れ目がわからなくなります。書き手が伝えたいものが正確に伝わらないのです。
だからといって同じ内容のものを頻繁に「改行」してもかえって読みづらくなります。
「段落」は「内容の区切りを示す記号」だと思いましょう。
接続詞と同じ「記号」なのです。
実は「段落」を分けると、接続詞で流れをわかりやすくしようとします。
つまり「前の段落」がある内容であったとき、それに反する内容を「次の段落」に書こうとすれば、次の段落の頭に逆接の接続詞「しかし」「だけど」「けれども」などを入れようとします。
接続詞の存在が、かえって「段落」を「内容で区切る」ものだと主張する根拠となるのです。
順接の「だから」「そして」などを付けたくなったら「改行」して「段落」を改める。
そう考えると「段落」の改め方が身につくのではないでしょうか。
段落の記号
「段落」を表す「記号」はとても単純です。
まず「段落」の最初の文字は「全角の
そして「段落」の最後は「改行」をします。「改行」するとその行のそれ以降は文字がなく白くなるのです。これでページを淡くする効果もあります。
この「行頭一字下げ」と「改行」までの文章の連なりが「段落」なのです。
注意したいのは、「Web小説」では「行頭一字下げ」をしない方がけっこういらっしゃいます。
これは「ケータイ小説」の頃から続く、一種の「お約束」です。
昔はメール機能を使って小説投稿サイトに連載していたため、メールの文字数をできるだけ少なくする必要がありました。
別の理由もあります。「携帯電話のメール機能」では「全角の空白」を入力しづらかったのです。「半角の空白ふたつ」で代用できなくもなかったのですが、上述したように文字数はできるだけ少なくしなければ「パケット代」が高くつきました。今の「ギガ容量」だと思ってください。当時はメールも「一文字何円」の時代だったのです。
そのため「行頭一字下げ」をせず、行頭から書き始めるスタイルが流行ったのです。
そうするとどこからどこまでが「段落」なのかわからなくなりますよね。
解消するために、「Web小説」もうひとつの「お約束」が生まれたのです。
「段落」が変わったら「空行」を入れる。
今でこそ小説投稿サイトに投稿されているほとんどの作品で「空行」の多い文章を見かますよね。その走りは「ケータイ小説」にあるのです。
ひと段落で六文続くようなら改行する
人間には限度があります。
「段落」が始まってからずっと「改行」を入れずに文が続いていくと、意味がとりづらくなってかなり苛立ちを覚えるのです。
その限度が六文とされています。
人間は「五体満足」「五指」のように五が把握できる最大の数です。
つまり六文もあると意味がつかめない一文が生じてしまいます。
そもそも「内容の区切り」で「段落」を改めるわけですから、ひとつの内容に六文も費やすのは徒労に等しいのです。
なかなかお目にかかれないかなと思いますが、「比喩」を多用するようになると、ひとつの「内容」を語るのに六文以上になる場合もあります。
つまり六文以上は「語りすぎ」なのです。
可能なかぎりひと「段落」は五文以下で構成してください。
「Web小説」ではさらに短く三文までで「改行」し、「段落」間に「空行」をひとつ入れます。
「紙の書籍」とはまったく異なるルールで書かれるのが「Web小説」なのです。
しかし現在「小説賞・新人賞」の多くはインターネット開催となっています。
いくら「紙の書籍」のルールに従っても、読み手が旧来型の書式を好まないのです。
とくに読み手が一次選考を兼ねる『カクヨム』では、「Web小説」流の書式「段落」の作り方をしていなければ、どんなに内容がよくても評価は下がります。
きわめて理不尽ですが、それが厳然たる事実です。
そもそも小説投稿サイトで読みやすくないのに、「紙の書籍」化しても読みやすいのかという疑問もあります。
どうせ受賞したら「紙の書籍」式に改めさせられてから出版されますが、そもそも受賞するには「Web小説」の書式で多くのネットネイティブの読み手に支持されなければなりません。
正直に言えば、「紙の書籍」の「改行」「段落」の型は受賞してから学んでも遅くはないのです。
小説投稿サイトでどれだけ目立てるか。読みやすくて内容も濃い作品に仕上げられるか。
そこだけに特化したほうが大賞は近いのではないか、と考えられます。
今流行りの「Web小説」の書式で掲載しないかぎり、どんなに面白くても連載初回のPVだけは高いのにいいねも評価もつかない事態を招くのです。
「郷に入っては郷に従え」と言います。
小説投稿サイトを主戦場にするのであれば、「Web小説」の書式を自分のものにしてください。本コラムのように「紙の書籍」の書式を採用して押し通すと、そのうち誰も読んでくれなくなりますよ。
最後に
今回は「ひと段落が長くならないように」についてお答え致しました。
「紙の書籍」式の「段落」の作り方は、出版するときにだけ関係します。
小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」では、どんなに読めば面白かろうと「紙の書籍」式の「段落」の作り方をしているだけで評価が下がるのです。
「Web」に上げる小説は「Web小説」の書式を取り入れてください。
小説投稿サイトで作品を読む方は、間違いなく「Web小説」の書式しか評価しません。
「同じ小説ではないか」とお思いかもしれませんが、現実には両者に大きな溝が横たわっています。
小説投稿サイト開催の「小説賞・新人賞」へ応募するときも、「Web小説」の書式に従ってください。
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