1489.質疑篇:オススメの兵法書は

 過去のご質問などを精査しながらお答えしているため、応募期間が多少前後しますのでご了承くださいませ。


 「水曜で連載終了」と書きましたらひとつご質問を受けました。

 そのため早くて3月15日月曜日の連載終了に延びました。まだまだご質問を承りますので、気兼ねなくご質問・お問い合わせをいただければ幸いです。


 今回は「異世界ファンタジーを書くなら兵法を知ろう」と書いてありますが、関連書籍が膨大で、どれを読めばよいのかわかりません。というご質問です。

 現在入手できる範囲内で、オススメをご紹介致します。





オススメの兵法書は


 異世界ファンタジーを書くとき、必ず「兵法」の研究をしてください。

 主人公がそのときとりうる選択は、勉強していないとあなたの発想を出ません。

 そんな小説が痛快さや面白さを出せるはずもないのです。

 ではどんな兵法書に学べばよいのでしょうか。




兵法といったら孫子

 兵法書には「世界最古にして最高」のものがあります。

 皆様も名前くらいは聞いていますよね。

 そう。古代中国・春秋時代に書かれた孫武氏『孫子』です。


 二千五百年も昔の書物なのに、現在のどの兵法書よりも「兵法」を語り尽くしています。

 あの戦争の天才ナポレオン・ボナパルトが、セントヘレナ島へ流刑になったときフランス語訳された『孫子』と出会っています。そして「これをもっと早く読んでいたら、私は島流しなどにはならなかった」とその凄さに言及しています。


 そこで気になるのは、どの『孫子』を読めば兵法が身につくのかです。

 なにしろ『孫子』の和訳本・解説書は年三、四冊ほど発刊されているため、入手できるものだけに絞っても四十冊はあります。

 そのどれが最もよいテキストなのか。


 入手しやすさと価格の安さから、二冊紹介します。


 ★岩波文庫・金谷 治著『新訂 孫子』(税抜660円)

 ★日本経済新聞出版・杉之尾 宜生著『現代語訳 孫子』(税抜900円)


 まず初心者向けの金谷版を読み、言わんとしていることをおぼろげながらにでも理解できたら、中級・上級者向けの杉之尾版を読んでください。

 余裕があったら、以下のふたつがあると理解がはかどります。


 ★誠文堂新光社・野中 根太郎著『全文完全対照版 孫子コンプリート』(税抜1,500円)

 ★プレジデント社・守屋 洋&守屋 淳著『[新装版]全訳「武経七書」1孫子・呉子』(税抜2,500円)


 とくに守屋版は「孫呉の兵法」と並び称される呉起氏『呉子』が含まれています。

 また「武経七書」とあるように全三冊で「武経七書」を網羅できるのでコレクターズ・アイテムにはピッタリです。しかし『孫子』以外は最上ではないので、『孫子』だけでも「兵法」はしっかりと身につきます。


 兵法の実例では以下の書籍が役に立つでしょう。


 ★SBクリエイティブ・木元 寛明著『戦術の本質 戦いには不変の原理・原則がある』(税抜1,000円)

 ★KADOKAWA・折木 良一著『自衛隊元最高幹部が教える 経営学では学べない戦略の本質』(税抜1,400円)


 これでどの『孫子』や解説書にあたればよいのか、おわかりいただけたでしょうか。




帝王学といえば

 次は政治の書です。


 今は入手が困難ですが、管仲氏『管子』がオススメです。『孫子』に近い年代に斉の桓公を春秋五覇の筆頭に押し上げた名宰相・管仲の内政手腕が読めます。


 また中国古典で政治に力を割いたのが秦で法律を制定し富国強兵を果たした法家の商鞅氏。なのですが、著作である『商君書』は現在販売されている和訳本がありません。


 そこで同じ法家の韓非氏『韓非子』を読むとよいでしょう。秦の始皇帝・エイ政は『韓非子』を座右の書として中華統一を成し遂げたのです。

 とくに部下と君主の権謀術数は人の真理を説いています。

 ただし『韓非子』の全訳は偽作部分が多いため、抄訳でかまいません。


 ★日本能率協会マネジメントセンター・前田信弘著『韓非子 人を動かす原理』(税抜1,600円)


 次に唐の太宗・李世民氏の国内統治術をまとめた『貞観政要』です。

 『貞観政要』は徳川家康氏が座右の書としており、徳川江戸幕府二百六十年の礎を築きました。


 ★筑摩書房・呉 兢著&守屋 洋翻訳『貞観政要』(税抜1,000円)


 『韓非子』同様「悪の書」と呼ばれるニッコロ・マキャヴェッリ氏『君主論』も読んでおきましょう。「マキャベリズム」「マキャベリスト」などの言葉は彼の著作に由来します。

 とくに中世ヨーロッパ風の世界観の場合、『君主論』的な社会秩序が不可欠です。


 ★中央公論新社・マキャベリ著・池田 廉翻訳『君主論』(税抜800円)


 政治はこれだけを読めばあらかたの権謀術数に長けるでしょう。




歴史書で国の興亡を読む

 兵法や帝王学を学んでも、それが実際にどう活かされたかを知らなければ応用のしようもありません。

 そこで古代中国の歴史書を挙げます。

 できれば『春秋左氏伝』(単に『左伝』とも)、『戦国策』も読んでいただきたいのですが、あいにく近刊の書籍がありません。

 比較的手に入りやすいのは司馬遷氏『史記』と著名な陳寿氏『三国志』です。

 国や英雄の歴史が知れればよいので、横山光輝氏のマンガでも、吉川英治氏の娯楽小説でもかまいません。


 日本でも織田信長氏が活躍していた室町末期から安土桃山時代の頃は、国家の興亡が頻繁にありましたので、国盗り物語の参考になりますね。

 戦いが統一へと収束していく流れは明治維新でも起こっていたので、幕末から明治維新までの歴史も読みましょう。

 こちらもマンガや小説でかまいません。




兵法の要点

 拙作で申し訳ないのですが、『小説家になろう』『カクヨム』に掲載している『兵法の要点』があります。

 これは上記の兵法書・政治書を含めて、どういうものが兵法の理に適っているか、政治の理に適っているかをまとめたものです。

 上記した書籍を読みながら、また読んだあとに拙作をお読みいただければ理解はさらに増すと思います。

 ぜひ『兵法の要点』で検索いただければと存じます。





最後に

 今回は「オススメの兵法書は」にお答え致しました。

 絶対外せないのが『孫子』です。これなくして兵法はありえません。

 政治の書としては乱世を生き延びる『韓非子』『君主論』、平和統治の『貞観政要』です。

 他にも歴史書を数多く読みましょう。こちらは図書館を理由すればよいと思います。

 これらを読んで、皆様も乱世の異世界ファンタジーを書いてみませんか。



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