1485.質疑篇:剣と魔法の登場しない異世界ファンタジーはありか

 過去のご質問などを精査しながらお答えしているため、応募期間が多少前後しますのでご了承くださいませ


 いよいよ質問がなくなります。現在手元には二件しか質問が残っていません。

 ですのでこのままだと最短で2021/3/10水曜日に連載終了となります。

 その前に聞きたいことがある方は、水曜日までにコメントかメッセージを送ってくださいね。


 今回は「異世界ファンタジー」を書きたいのに、なぜか「ハイファンタジー」と呼ばれてしまうについてです。

 『小説家になろう』で一大勢力を築いている「ハイファンタジー」ですが、そもそも「異世界」で「バトル」ものを書いたら「異世界ファンタジー」なのでしょうか。なにか違うような。

 そんなお話です。





剣と魔法の登場しない異世界ファンタジーはありか


 『小説家になろう』の「ハイファンタジー」ジャンル、『カクヨム』の「異世界ファンタジー」は、以前お話ししましたが「ナーロッパ」が舞台になっています。

 「剣と魔法のファンタジー」が当たり前になっているのです。

 ですが「異世界」を舞台にした「ファンタジー」はすべて「剣と魔法のファンタジー」でなければならないのでしょうか。




そもそも異世界は存在がファンタジー

 「異世界」を舞台にした作品を書くとき、どんな物語も「ファンタジー」になります。

 考えてもみてください。「異世界」は現実に存在しますか。存在しませんよね。ということは書き手の創作であり、読み手にとっては空想・幻想の中に「異世界」が存在するのです。

 つまり「異世界」を舞台にした話はすべて「ファンタジー」。これは揺るぎません。




異世界ファンタジーに剣と魔法は必須なのか

 「異世界ファンタジー」はジャンルとして当たり前。でもすべての「異世界ファンタジー」が「剣と魔法」である必要はないはずです。

 たとえば現実世界で「剣と魔法」が繰り広げられたら「ファンタジー」になります。

 マンガの車田正美氏『聖闘士星矢』は「拳」と「小宇宙コスモ」の「現実世界ファンタジー」ですよね。仮に舞台を「異世界」に移せば、単なる「剣と魔法のファンタジー」になっていたでしょう。

 では「異世界ファンタジー」はすべて「剣と魔法」である必要があるのでしょうか。

 「異世界」で恋愛ものを書けば「異世界恋愛」ジャンルになる。だから「異世界」で戦えば「異世界ファンタジー」。その認識は大間違いです。

 小説投稿サイトによっては「バトル」ジャンルがあり、「異世界」で戦っても「バトル」と設定できます。

 今の「異世界ファンタジー」のおおかたは「バトル」と区別がついていないのです。

 「異世界」で「バトル」をやったら「異世界ファンタジー」だ。

 おかしいですよね。

 「異世界」で「バトル」をやったら「異世界バトル」だ。

 日本語でもこちらが正しい。

 またマンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』は地球とされてはいるものの明確な国が存在しない異世界で、武術と気を使って戦います。これを「異世界ファンタジー」と呼ぶのかどうか。

 ほとんどの読み手は「異世界ファンタジー」とはみなしません。純然とした「バトル」ものと判断するはずです。

 マンガの尾田栄一郎氏『ONE PIECE』だと傾向はより顕著になります。

 異世界で戦えば「異世界ファンタジー」なのか。「異世界ファンタジー」と言えば「剣と魔法のファンタジー」なのか。

 違うような気がしてきましたよね。




誰が異世界ファンタジーを剣と魔法に決めたのか

 いつ誰が「異世界ファンタジー」は「剣と魔法」と決めたのか。

 栗本薫氏『グイン・サーガ』や水野良氏『ロードス島戦記』など、このジャンルの開拓者が「剣と魔法」の物語を書いたからそういう固定観念が生まれたのかもしれません。

 本来なら「異世界」で日常を送る話があってもよいはずです。

 『小説家になろう』では「スローライフ」がこれに当たります。でもたいていの「スローライフ」は「剣と魔法」からのドロップアウト組なんですよね。

 「異世界転移」「異世界転生」であっても「スローライフ」ものは「剣と魔法」の派生作品でしかありません。


 では「異世界」で「剣」も「魔法」もない物語は本当にありえないのでしょうか。

 ちょっと考えてみたのですが「異世界」で「剣と魔法」がない物語より、「ファンタジー」で「現実世界」ではない物語のほうが探しやすそうです。

 たとえばアニメの『けものフレンズ』は「異世界」とまでは言えないけれども、動物たちの擬人化と会話もできるのでじゅうぶん「ファンタジー」です。そしてこれには「剣と魔法」が出てこない。近しい例は後述します。

 「ファンタジー」で「剣」がなく「魔法」ならある「現実世界」でない世界。たとえばアニメの宮崎駿氏『魔女の宅急便』は、空を飛ぶ魔女が主人公のお話です。剣は出てきませんよね。角野栄子氏の原作絵本もジャンルは「異世界ファンタジー」です。

 「ファンタジー」で「剣」はあるけど「魔法」がない「現実世界」でない世界。宮崎アニメなら『風の谷のナウシカ』あたりが含まれますかね。

 一時代を築いた宮崎アニメやジブリアニメも、基本的には「ファンタジー」なんですよね。そこに「剣」や「魔法」がどのくらい出てくるのか。作品によって異なりますが、「異世界」作品にはたいていどちらかが出てきます。

 『天空の城ラピュタ』は「剣」と「魔法(飛空石)」が登場する「異世界ファンタジー」です。

 宮崎駿氏でも「ファンタジー」から「剣」や「魔法」を排除しえなかったのかもしれませんね。




異世界は剣と魔法から解き放たれるべき

 ここまで見てきたように、異世界といえば「剣と魔法」の「バトル」小説ばかりです。

 「バトル」がなくても魔法はある世界。

 たとえば『シンデレラ』も異世界ですが魔女が魔法を使いますよね。

 そもそも異世界を「人間の世界」にするのもおかしな話です。『3びきのこぶた』や『さるかに合戦』のように、動物たちだけが登場する異世界もあってよい。『けものフレンズ』の世界です。

 というより、本来「異世界ファンタジー」はそのような世界観が基礎ではありませんか。

 『うさぎとかめ』などを考えると『鳥獣戯画』も異世界の話かもしれませんね。

 異世界で「バトル」するだけなら「バトル」ジャンルでやってほしいところです。

 異世界ファンタジーは「現実世界」では叶わない世界が見られる幻想感があってこそ。

 単に人間が「バトル」するのではなく、動物たちが「バトル」する『さるかに合戦』は、真の意味で「異世界ファンタジー」ですね。

 童話・寓話の世界こそ「異世界ファンタジー」と呼べます。

 小説投稿サイトの「異世界ファンタジー」ジャンルに多く見られる「バトル」ものは、単なる「異世界バトル」です。

 人間が「バトル」するのなら、異世界である必然性がありません。

 人間以外が会話していさかいが起こるから「異世界ファンタジー」ではないですか。

 そろそろ「異世界ファンタジー」は「剣と魔法」に代表される「バトル」から解き放たれるべき時を迎えているのかもしれません。

 ただ、そのためには小説投稿サイトで「バトル」ジャンルが確立している必要はあります。「バトル」がなければ、結局「異世界ファンタジー」に投稿せざるをえないからです。

 私の小説も異世界が舞台ですが、魔法はなく兵法を使った剣による集団戦なので「バトル」と一概に言えないんですよね。英単語では「バトル」で合っているのですが。

 掲載は『カクヨム』オンリーを予定していますが、早めに書き始めないと。





最後に

 今回は「剣と魔法の登場しない異世界ファンタジーはありか」にお答え致しました。

 「剣と魔法」でバトルするなら本来「バトル」ジャンルです。

 いつから「異世界ファンタジー」は「剣と魔法」のバトルを象徴するジャンルなってしまったのでしょうか。

 一回この流れを切りたいのですが、大多数の書き手が「異世界ファンタジー」に「剣と魔法」を掲載しているので、なかなか難しい。

 私ひとりが頑張っても小石は流されてしまいますからね。

 「バトル」ジャンルから「剣と魔法のファンタジー」の書籍が大量に生まれれば、おそらく意識は変化してくると思います。

 私もそういう作品を書きたいですね。


 ご質問の応募は水曜日までに致します。最終回で私の病気療養の話をしてまとめたいと思います。なぜ四年近くも本コラムを執筆し続けるようになったのか。

 すべて病気療養が原因なんですよね。

 皆様にはきちんとごあいさつしてから連載を終えようと思っております。

 もし木曜日に連載が続いていたら、質問が入ったんだな、と思っていただければと存じます。



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