1481.質疑篇:考えをまとめてから書く

 過去のご質問などを精査しながらお答えしているため、応募期間が多少前後しますのでご了承くださいませ。


 今回は「小説が書きたいのに完成させられない」についてお答え致します。

 本コラムを読んで「小説を書こう」と思っても一歩踏み出せない方。いらっしゃいますよね。

 なぜ書こうとしているのに書けないのか。

 「考えがまとまっていない」からかもしれません。

 ぜひ私の執筆法を取り入れてくださいませ。





考えをまとめてから書く


 小説を書きたい。

 この根源的な欲求があなたを突き動かします。

 しかしワープロソフトを立ち上げて、いざ書こうとしても一文も書けないのです。

 あれだけ「小説を書きたい」という衝動が抑えきれなかったのに、一文も書けません。

 これは根本的になにかを間違えているのです。




考えをまとめよう

 小説を書きたいと思っているのに書けない。

 それは「書きたいものがまとまっていない」からです。

 あなたは「小説を書きたい」と思えば文章がすらすら浮かんでくるように思っているのかもしれませんね。とくに文豪と呼ばれる方々は「これを書く」と決めたら、怒涛のように一心不乱に執筆している。そんな姿を思い描いているはずです。

 ですが実際の文豪は、締切が迫るまで考えに耽っています。どうしても今から書き始めなければ締切に間に合わない。そうなって初めて筆を執った文豪も多いのです。

 そこから一心不乱に執筆している姿だけが、都合よく切り取られています。

 白鳥は優雅に泳いでいるように見えますが、見えないところで必死になって努力しているものです。

 文豪がなぜ締切に間に合うギリギリまで考えに耽っているのか。

 これから書こうと思っている物語を「可能なかぎりまとめよう」としているのです。

 考えがまとまっていない物語は、書きようがありません。

 しかし考えがまとまってさえいれば、あとはその考えを実際の文章に落とし込むだけで済みます。

 文豪はただ無為に締切まで暇を飽かしたわけではないのです。

 皆様も、小説を書こうと思ったらできるかぎり「どんな内容の物語にしようか」まずはまとめてみてください。


 実は私の提唱する執筆法は、先に「物語をまとめて」から「執筆」へと移行するように作ってあります。

 「命題」はあなたが最初から持っている「このジャンルや作風なら書ける」物語を示しています。これに関しては考える以前の問題です。これまでにあなたが触れてきた物語の中でとくに好きな作品が「命題」を形作ります。私にとっての『アーサー王伝説』ですね。だから私は「剣と魔法」が大好物なのです。


 「テーマ」は「訴えたいもの」であり、今から書く小説で読み手になにを伝えたいのかを一文で表してください。たとえば『アーサー王伝説』から「信頼と忠誠」を「テーマ」に据えるような感じで設定するのです。


 「企画書」は「テーマ」を体現するために、「どんな主人公がどうなった」のか決めます。「血気盛んな主人公が近衛騎士になった」のようなものです。これを「どんな主人公がどうなりたくてなにをなしどうなった」のかに分類します。

 「血気盛んな主人公が騎士になりたくて囚われの姫を救い出し近衛騎士に取り立てられた」

 どうですか。これだけで物語ができているではないですか。


 これにエピソードを加えて「あらすじ」に仕立てます。

 「王都の酒場で乱闘騒ぎを起こした主人公」

 「騎士採用試験を受けるが先日乱闘騒ぎを演じた相手が試験官だったので落とされた」

 「憂さ晴らしに森を探検していると、姫が囚われている場面に遭遇して悪漢を倒す」

 「姫を王都へ護衛した主人公は、姫の近衛騎士として取り立てられた」

 これで「起承転結」が揃いました。「企画書」に三つの出来事を加えて「起承転」を構成すればよいのです。「転」が終了したらその結果どうなったのか「結」は自然と導き出されます。


 ここまで見てきましたが、順を追って物語の考えがまとまっていくのがわかるでしょうか。

 今回はベタな「騎士物語」にしてありますが、展開次第でいかようにもひねりを加えられます。

 「あらすじ」までが「物語をまとめる」段階です。そして「箱書き」から先は「考えがまとまった物語を文章化していく」段階になります。




書きたいは誰でも、実際書くのはごく少数

 「考えをまとめてから書く」ようにするだけで、誰にでも小説が書けるのです。

 小説を書きたい。

 という強い思いは、どの人にも共通します。

 実際に「小説を書く」のは、その中でもほんのひと握りです。

 なぜ総数が減ってしまうのでしょうか。

 それこそ「考えがまとまらない」からです。

 文豪が締切ギリギリまで「考えをまとめ続ける」のはなぜでしょう。前述しましたね。そうしないと納得のいく長編小説が書けないからです。

 文豪ですら「考えをまとめてから書く」のですから、一般人もまず「考えをまとめ」ましょう。

 小説が書きたい。ではどんな小説が書きたいのか。あなたの心から湧き出しているのはどんな物語でしょうか。それを少しずつ具現化していきます。

 そのための「命題」「テーマ」「企画書」「あらすじ」です。

 この執筆法は、皆様の心から物語が湧き出たときに、それを具現化するガイドを務めます。安心してこの執筆法の意見を聞き入れてください。登山が未熟ならシェルパの言うことを聞き入れましょう。彼らはあなたよりも経験があります。

 私の執筆法も、小説を書き慣れていない方のシェルパです。ガイドのとおりに進めていけば、自然と物語が具現化します。

 明確な「あらすじ」を手に入れれば、あとは表現を巧みに使いこなせばよいのです。表現をどうこうするレベルにない方でも、「箱書き」で人物たちがなにを行なうシーンかを決め、「プロット」の「ト書き」ドラフトで脚本化、「散文」ドラフトでそれを主人公の語り口に改め、「視点固定」ドラフトで「主人公の一人称視点」となるよう調整します。

 ここまで文章の表現はいっさい気にしません。すべて「と言った。」「と聞いた。」「に見えた。」でかまいません。

 次の「執筆」もそのままでもよいでしょう。

 「推敲」の段階で語彙をまとめて類語や比喩などに置き換えれば、巧みな表現力を使いこなせるようになります。

 あなたが力を入れるのは「推敲」だけです。他は流れ作業に委ねましょう。





最後に

 今回は「考えをまとめてから書く」にお答え致しました。

 文豪ですら「考えをまとめてから書く」のです。

 一般人はもっと根本的なところから書き始めなければなりません。

 そのための「命題」探しであり「テーマ」設定なのです。

 これさえ決めれば「企画書」であなたが書きたかったものが自然と立ちます。

 書きたかったものが文章化されたら、それを元に原稿を作っていけばよいのです。

 これで書けない状態はなくせますよ。



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