1469.端緒篇:ヒロイン像は固定してよい
今回は「ヒロイン」についてです。
多彩な作品を書きたいとき、どうしてもヒロイン像を変えないとと思いがちです。
しかし実際にはプロでも同じヒロイン像しか書けない方もいらっしゃいます。
あらゆる属性をカバーできるプロのほうが少ないくらいです。
どうせ気づかれにくいですし、書き手の個性を表す部分でもあるので、ひとつの「ヒロイン像」で統一するのも悪くはありません。
ヒロイン像は固定してよい
長編小説を数多く書いていると、ヒロインがどれも似たような属性になってしまいます。
発想が貧困なのでしょうか。
いいえ違います。あなたの好みがそのまま反映されているだけです。
ヒロインがどの作品も似たりよったり
結論から述べます。
「ヒロインはどの作品も似たりよったりでかまわない」のです。
伏見つかさ氏と言えば『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『エロマンガ先生』に見られる「妹」属性を持つヒロインが浮かびますよね。
川原礫氏なら『ソードアート・オンライン』『アクセル・ワールド』のヒロインがともに頭脳明晰で長髪の美少女ですよね。
水野良氏も『ロードス島戦記』のディードリット、『魔法戦士リウイ』のミレル、『グランクレスト戦記』のシルーカ・メレテスに見るように、貧乳ヒロインでまわっているところがあります。
書き手は好きな女性像に偏りがある。ヒロインも書き手の「好きな女性像」が反映されているものです。
つまり書き手によって「理想とするヒロイン像」が終生一緒でもかまいません。
むしろ「ヒロイン像」を統一して「やっぱりこの作者ならこの属性だよな」と思われたほうがよいくらいです。
だからこそ、ひとつ当てた書き手の次回作に期待が集まります。たとえば貧乳ヒロインの次に爆乳ヒロインを書いたら。おそらく前作のファンは離れていくでしょう。その代わり新しいファンが付きます。
一作書くごとにファンが雪だるま式に増えていくのが理想です。
一作ごとにファンが異なるのでは、読み手を選んでしまいます。
だから「書き手の好み」を全面に出して、好みが合致する読み手を取り込んでいくのです。そうすれば一作ごとにファンが雪だるま式に増えていきます。
もう一度結論を述べます。
「ヒロインはどの作品も似たりよったりでかまわない」のです。
毎作絵師さんが異なるから案外バレない
プロでどれほど売れっ子となっても、作品ごとに表紙と挿絵を描いてくれる絵師さんは選べません。
最初の連載から直近の連載まで。ひとりの書き手にひとりの絵師さんが供給し続けるなんてありえないのです。あるとしたら、書き手が絵も描いていた、というウルトラCくらい。プロでは見た記憶はないのですが、アマチュアではけっこう多いんですよね。
だから、たとえ「ヒロイン像」が同じでも絵師さんによって表紙や挿絵の印象は異なります。当たり前です。絵を描いた人が異なるんですから。
まぁアニメーターあがりの絵師さんだと前に担当していた絵師さんの画風に近づけようと思えばできます。どんな絵柄も模倣できるのがアニメーターさんの凄いところです。
そんな絵師さんによって、同じ「ヒロイン像」でもまったく異なる外見に仕上げてくれます。だから同じ「ヒロイン像」だとは案外バレないものです。
まぁ絵師さんだけでなく、読み手にも同じだと気づかせない工夫をするべきでしょう。それがヒロインの微妙な差になって表れますから。
同じ貧乳でもハイエルフだったり盗賊だったり魔法使いだったり。そういう設定自体は異なります。
だから姿かたちは同じでも、職業や能力に違いを作るべきですね。
スター・システム
マンガ家のあだち充氏は、どの主人公も同じ顔を描いています。某バラエティー番組で担当編集さんが主人公の顔イラストだけでどの作品の主人公かを当てるクイズに挑戦していましたね。ちなみにヒロインなどの女性陣もあまり差異はありません。
これをして「スター・システム」と呼ぶ方もいます。
物語を劇として「劇団あだち充」のスターたちを描いていただけだ、というものです。
もともと手塚治虫氏から「スター・システム」が喧伝されるようになりました。まぁ手塚治虫氏の場合はマンガ創生期でもあり、キャラクターの見た目はどうでもよかった、という背景もあります。
小説でも「スター・システム」を取り入れられるので、キャラクターに困ったらあなたの定番に任せてみるのも一興です。
好みじゃなけけば十万字も書けない
そもそも書き手は「小説賞・新人賞」応募のために、長編小説を何本でも書かなければなりません。
根本的に書くのが好きでなければ、モチベーションが高まらないのです。
やる気のない執筆ほど、時間のかかる割りに成果のあがらない作業もありません。
ではなにをモチベーションにつなげればよいのか。
あなたの好きな異性をヒロインにしましょう。あなたがその人を好きなのですから、これからの展開を妄想しても、きっと脳内がお花畑になるくらい楽しめるはずです。
好きな異性は、現実に存在するあなたが気持ちを寄せる異性でもかまいません。マンガやアニメや俳優さんでもよいでしょう。
とにかくあなたがその人を好きである。その人をヒロインにすれば、妄想は果てしなく続けられます。
この方法の唯一の弱点は、あまりに自分が好きな異性をヒロインとしたので、いつまでも妄想に浸っていたくなる点でしょうか。
いつまでも妄想が続いて、小説を書こうとも思わなくなってしまいかねません。
あなたが好きな人をヒロインにする。
ピーチ姫は性懲りもなくクッパにさらわれます。マリオはピーチ姫が好きなのでしょうか。毎回ピーチ姫を助けるためにクッパに戦いを挑むのです。
マリオが何十回でも何百回でもピーチ姫を救出する物語を続けられるのは、プレイヤーがピーチ姫を好きだからでしょうか。どちらかといえば製作者がピーチ姫を好きなのだと思います。
『スーパーマリオ』はたとえ作品が異なっても、ピーチ姫が助けを求めている物語で成り立っているのです。
だから小説で毎回ヒロインが同じでもかまわない。名前が異なる、職業が異なるくらいはあるかもしれません。でも書き手の妄想としては「好きな人」や「初恋の人」をヒロインにすれば、どんなに十万字が遠く感じられても最後まで物語を完結させようと思うものです。
そうです。あなたが好きな人をヒロインにするからこそ、新作のモチベーションが高まります。あなたが魅力を感じないヒロインを据えたとして、十万字を喜んで書けるものでしょうか。
主人公を書き手のあなたのアバターにすれば、あなたが好きな人を助けるために行動する物語が書けます。好きなのだから助け出すのは当たり前。そう感じられたら長編小説でも連載小説でも、モチベーションを失わずに完結まで書こうと努力するはずです。
ここまで男性の書き手を想定してきました。
もし女性の書き手で男性主人公がヒロインを救出する物語を書きたいのなら。主人公をあなたの好きな人にして、ヒロインをあなたにすればよいのです。
書く気が湧いてきましたか。
最後に
今回は「ヒロイン像は固定してよい」について述べました。
ヒロインは、書き手の好みが直接反映されます。そもそも書き手が好きでもないヒロインの物語なんて書きたがるのでしょうか。面白くなる要素がひとつ欠けているのに、続きが読みたくなるような「惹き」「勢い」を持たせられるのでしょうか。
物語は書き手が「好きなもの」を書くから「勢い」が出せますし、次回を待ちわびる強力な「惹き」を生み出せます。
あなたが好きな人やその属性をヒロインに当てはめるのです。
ヒロイン像にあなたの好みを詰め込んでください。
魅力的なヒロインは、そうしなければ生み出せないのです。
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