1460.端緒篇:どうしてもプロの小説家になりたい

 本コラムを読んで、改めて「プロ」を目指そうと意を決した方もいらっしゃるでしょう。

 しかし小説投稿サイトで最初の掲載作から人気を博する書き手などひとりもいません。いたら「小説賞・新人賞」へ応募すれば一発で大賞各賞が獲れます。

 そのくらい、第一歩は失敗がつきものなのです。





どうしてもプロの小説家になりたい


 あなたが「なにがなんでも小説家になる」と決心しなければプロの書き手にはなれません。

「紙の書籍」化を目指すには「小説賞・新人賞を獲る」か「小説投稿サイトで目立つ」しかないのです。

 そのために費やす試行錯誤の日々は、ただ本コラムを読むだけでなく、実際に長編小説を何本も書いて「着想力」「構成力」「描写力」を高める必要があります。




処女作から評価される書き手などいやしない

 処女作から大人気を博する書き手なんてまずいません。

 それができた人は「小説家」の「天与の才」があったのでしょう。

 もしくは「かなりの読書通」で一年間に何十冊と読み込んできた方かもしれません。

 通常は小説投稿サイトに一年で長編小説を三本、四本、五本と執筆し、それが何年も続いてようやくフォロワーさんが一定の水準にまで達するのです。

 そうなるまで連載小説はしないほうがよいでしょう。誰も読んでくれない連載小説ほど虚しいものはありません。

 まずは長編小説をコツコツと投稿してフォロワーさんを増やすのです。

 フォロワーさんが増えるまで小説執筆に情熱と時間を費やせなければ「小説家」など目指すべきではありません。


 一年間に「三百枚」を三本、四本、五本と執筆していくのはかなりの努力と忍耐が必要です。でも「高速ライティング」のスキルさえ身につけば、二か月で一本くらいわけなく書けます。そのくらい「高速ライティング」は重要なのです。

 人によっては一カ月一本のハイペースで長編小説を連載できるのです。それには「着想力」を磨きましょう。面白い物語をポンポン生み出せるほどのストーリーメーカーでなければ、大ヒット作にはつながりません。

 大ヒット作はよくて全体の五パーセントくらいしかないのです。つまり長編を二十本書いて一本出るくらい。その作品がフォロワーさんをたくさん連れてくるのです。

 冒頭に書きましたが、処女作で大人気を博するのもよくて五パーセントほどの確率でしかありません。しかも実際当ててしまっても、次作が低水準だとたった二本で読み手から見限られてしまいます。


 自分を振り返ると、この「小説の書き方」コラムはもうすぐ千四百日連続投稿で一回二千五百字から五千字を書いてきました。なにせ『小説家になろう』の文字数だけでもすでに五百万字を超えましたからね。ということは、三百日三千字書くペースなら年間で七本の長編小説が執筆可能なはずですね。

「その計算はおかしい。一年は三百六十五日ある。だから一日三千字書ければ二千七百三十七枚は書けるはずだ。三百枚で換算すれば九本書けなければおかしい」という声も聞こえてきそうですね。

 でもそれは机上の空論です。執筆するだけなら達成できるでしょう。しかし現実には推敲して間違い探しをする時間も必要です。さまざまな情報に触れて知識を広く集める時間も必要です。それらの時間を無視するわけにはいきません。

 たまには遠出してイベントに参加してくるなんていうのも気分転換にうってつけですね。部屋に閉じこもったところで、効率は上がりませんよ。




小説を書くのが大好きになれば

 一年三百日で毎日三千字書く。文字にするととても簡単です。でもこれは「小説を書くのが大好き」という強い意志がなければ成しえません。

 強い意志を持ち続けなければ、何年も実りのない長編小説を書き続けるなんて到底できはしないのです。


 気になっていた新作ゲームが発売されたからそれをプレイしよう。「小説を書く」のはいつでもできるから。

 そんな心構えではプロの書き手にはけっしてなれません。

 本気でプロの書き手になりたければ、優先すべきは「小説を書き続ける」ほうです。ゲームは小説を書いて余った時間だけにしましょう。


 映画を観に行くのも同様です。さまざまな映画を観てきたほうがよいのは当たり前。でもそれは小説を書いてストックを抱えた状態になってから。映画に行って小説投稿サイトへ投稿し忘れたのでは、あまりにも読み手を軽視しすぎです。


 スポーツ小説やバトル小説を書く場合はスポーツを観戦し、格闘技のテレビ中継を観てもかまいません。とにかく自分の書いているジャンルの情報は広く集めていきましょう。


 幸い『小説家になろう』『カクヨム』などの大手小説投稿サイトは予約投稿が可能です。

 ストックさえしてあれば、いつでも投稿できるので心置きなく映画を観に行け、ゲームも楽しめますね。

 たった一日投稿し忘れただけで、書き手は読み手に大きな借りを作ってしまったと思ってください。

 挽回するには一日に二回投稿する日を作るなど、多少の無茶はしなければなりません。


 小説を職業にしたいなら、生活サイクルの中心を「小説を書く」で占めるべきです。どちらが主でどちらが副なのかは言うまでもないでしょう。




プロになりたければ主戦場に腰を据えよう

 読み手を増やしたくて複数の小説投稿サイトに同じ作品を「マルチポスト」している方も多いでしょう。

 しかし前回お話ししたとおり「複数の小説投稿サイトに同じ作品を掲載する」のは、プロの書き手になる妨げとなりかねません。

 どんなにその作品がビッグヒットしても「他の出版社レーベルが動いているかもしれない」と思われてしまいます。その憶測は小説投稿サイトを運営している出版社レーベルが等しく抱いてしまう。そのため他社を意識するあまり、どこも手を挙げられなくなるのです。

 あなたが書きたい物語が最も評価される小説投稿サイトに腰を据えましょう。どこが最も評価されるかは実際に投稿しなければわかりません。

 だから最初の作品はさまざまな小説投稿サイトに掲載してもよいと思います。

 ですが、すべての長編小説を「マルチポスト」しているうちはプロの書き手にはなれないのです。

 あなたがプロデビューしたい出版社レーベルが運営している小説投稿サイトに狙いを定めてください。

 KADOKAWAの電撃文庫、富士見ファンタジア文庫、角川文庫、MF文庫Jなどからデビューしたいのなら、KADOKAWAが共同運営している『カクヨム』に絞ればよいのです。

 ホビージャパンのHJ文庫からデビューしたければ『ノベルアップ+』を利用しましょう。

 今はどの小説投稿サイトがいずこかの出版社レーベルの共催を得ているとわかります。わからなければGoogleで検索すればすぐに判明するのです。

 だからプロデビューしたい出版社レーベルがあるのなら、そこを主軸にすればよい。

 文学としてデビューしたければ、文学作品も扱っている出版社が関与している小説投稿サイトや「小説賞・新人賞」に絞るのです。

 それだけの抜け目のなさがなければ、波乱の多いプロ生活も順調に泳ぎ続けられないでしょう。

 「どこからでもよいからプロデビューして印税生活したい」と思っているうちは大成しません。いつまで経ってもどこの出版社レーベルからもお呼びがかからないのです。

 明確に「どの出版社レーベルからプロデビューしたいか」と青写真を描きましょう。そのうえで「ではそこからプロデビューするにはどんな作品を書けばよいのか」を逆算するのです。

 その出版社レーベルで主流のジャンルや物語を書いたほうがよいのか。ジャンルは同じでも毛色の違う物語のほうがアピールできるのではないか。出版社レーベルでは発売していないジャンルや物語で一点突破を図ってみるか。

 さまざまな戦術を思い描けます。

 それも先に「プロデビューしたい出版社レーベル」を決めているからできるのです。

 「どこからでも」ではいつになっても無理です。「この出版社レーベルからプロデビューするにはどうするか」を考えてください。





最後に

 今回は「どうしてもプロの小説家になりたい」について述べました。

 「なにがなんでも小説家になる」

 その執念が「紙の書籍」化を呼び込み、「プロの書き手(小説家)」の仲間入りを果たせるのです。

 「小説賞・新人賞」を授かるのでも小説投稿サイトで目立つのでもかまいません。自分の得意と思われる方法で目指すべきです。

 たとえ受賞できなくても「紙の書籍」化のオファーが来なくても。それでも長編小説を書き続ける姿勢そのものを読み手や出版社レーベルにアピールしなければなりません。

 そのためには「小説を書くのが大好きになる」べきです。

 「何がなんでもプロの書き手(小説家)になる」という執念と対極に位置しますが、「小説を書くのが大好きになる」と長編小説を書き続けるのが苦でなくなります。

 頭の中でつねに小説内世界を思い描いて、ふと思いついたとき、創作ノートに綴っていきましょう。

 「小説を書く」のが好きになれば、勉強や仕事がどんなにつらくても、いつでも大好きな「小説を書く」で気分転換できるのです。ストレス発散のために「小説を書く」ところまでいけば一年中でも小説を書き続けられます。

 「なにがなんでもプロの書き手(小説家)になる」執念と「小説を書くのが大好きになる」思いが合わされば怖いものなどありません。

 もう誰に言われるでもなく、プロになるまで、いやプロになってからもずっと小説を書いていけますよ。



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