1458.端緒篇:タイトルとタグ・キーワードを考える

 文章も出来あがって、さぁいよいよ小説投稿サイトへ掲載だ!!

 と喜び勇んでも、読まれるかどうかは作品の内容とは関係がありません。

 少なくとも初回を読みに来るかどうかは内容とはまったく関係ないのです。

 もちろん二回目以降は初回の出来次第なので、内容勝負になります。




タイトルとタグ・キーワードを考える


 なぜこの段階で「タイトル」と「タグ」「キーワード」なのだろうか、と皆様はお思いですよね。

 「私はタイトルが決まらないと小説は書けない」とおっしゃる方も多いでしょう。

 しかし私は長編小説を一本書き終えたら「正式なタイトル」を決めるべきだと考えております。

 小説投稿サイトで長編小説を小分けにして連載を開始する。

 まさにその手前で「タイトル」と「タグ」「キーワード」を練るべきです。




小説投稿サイトの特質を知る

 まず小説投稿サイトの特質についてです。

 ほとんどの小説投稿サイトには「検索機能」が備わっています。

 というより「検索機能」がなかったのは『ピクシブ文芸』くらいなものでしょう。

 小説投稿サイトでは「読みたい作品を見つける」ために「検索機能」は欠かせません。

 だから備わっていなかった『ピクシブ文芸』はサービスを終了し、「検索機能」のある『pixiv小説』に吸収合併されます。

 そんなに重要な鍵を握る「検索機能」。ですが、その特質を正確に理解している書き手もまた少ないのです。

 とくに「書き専門」の方は、自ら他人の作品を検索しないため「検索機能」に疎い傾向があります。

 ですが読み手は「読みたい作品を見つける」ために「検索機能」をフル活用しているのです。であれば「検索機能」を制すれば、それだけ「読まれる作品」になります。

 たとえ作品を見つけた人の1%が閲覧に来るとしても、百人が見つけたのと一万人が見つけたのとでは「ひとりと百人」の違いとなるのです。

 この差はとても大きいと思いませんか。

 「検索機能」でヒットする要素が多いほど、読み手は増えていきます。

 逆に言えば、「検索機能」で見つけられない作品は、口コミ以外ではけっして読まれないのです。

 あなたが数十時間かけて書いた小説が、誰にも読まれない。

 これは誇張ではなく事実です。

 どうすれば「検索機能」を味方につけられるのか。

 その端的な例が「タイトル」と「タグ」「キーワード」なのです。




検索機能が拾うもの

 ほとんどの小説投稿サイトには「検索機能」が備わっています。

 読み手は「検索機能」でそもそもなにを「探しているのか」。それを知りましょう。


ジャンル

 まず考えるのは「タグ」「キーワード」です。

 小説投稿サイトによっては「検索タグ」「検索キーワード」と呼んでいるので、気づく方は多いでしょう。

 「検索機能」が拾ってくる第一のものこそ「タグ」「キーワード」です。

 では「タグ」「キーワード」になにを書けばよいのでしょうか。

 実は多くの書き手が忘れているものがあります。

 「ジャンル」を示す「タグ」「キーワード」です。

 『小説家になろう』では「R15」「残酷な描写あり」「ボーイズラブ」「ガールズラブ」「異世界転生」「異世界転移」が登録必須キーワードとして指定されています。

 これらのジャンルを書いたら必ず設定しなければならない「キーワード」です。

 実はこれによって「検索機能」で「ジャンル」を指定する読み手が多くいます。

 それはそうですよ。「異世界恋愛」ジャンルの小説が読みたいのに「異世界恋愛」を見つけるすべがなければ選びようがないのですから。

 『小説家になろう』なら姉妹サイト『小説を読もう!』の「検索機能」を使います。これには「ジャンル」も指定できるため、「ジャンル」を示す「タグ」「キーワード」は必要ありません。

 ですがすべての小説投稿サイトの「検索機能」で「ジャンル」が検索できるのか。疑ってかかるべきです。

 『カクヨム』も「ジャンル」を指定して検索できるので、別途「タグ」「キーワード」にする必要はありません。

 しかし『pixiv小説』は「検索機能」で「ジャンル」が指定できません。

 ですので「ジャンル」の「タグ」が不可欠です。

 もし「タグ」「キーワード」が余っていたら、必ず「ジャンル」を書いておきましょう。

 たとえば『小説家になろう』で恋愛ジャンルの異世界サブジャンル作品を投稿するなら「異世界恋愛」の「キーワード」を付けるのです。

 なお「タグ」「キーワード」は文字列を含んでいるかどうかだけをチェックしているので「恋愛異世界」の「キーワード」でも「異世界恋愛」で検索すればヒットしますのでご安心くださいませ。

 また『小説家になろう』では「ハイファンタジー」とジャンル分けされていますが、一般的な「異世界ファンタジー」を「キーワード」にセットしておくとよいでしょう。

 また複数ジャンルに跨がる作品の場合は、ジャンルも複数指定しましょう。

 たとえば「現実世界恋愛」と「推理」をミックスした作品で、ジャンルは「推理」を指定したら、少なくとも「現実世界恋愛」の「キーワード」をセットしましょう。できれば「推理」も「キーワード」にすると、読み手が「今日は現実世界の恋愛と推理が同時に楽しめる作品が読みたいな」と思ったら、いちいち「現実世界恋愛」ジャンルを設定して「推理」の「キーワード」を指定する、または「推理」ジャンルを設定して「現実世界恋愛」の「キーワード」を指定するような手間はかけません。これでは半数の読み手が見落としてしまいます。そこで「現実世界恋愛」「推理」をともに「キーワード」へ指定すれば確実に「検索」で残れます。




主人公の性別・職業・状態

 次に主人公の属性についても必ず指定しましょう。

 たとえば「男主人公」と「女主人公」のどちらなのかが「タグ」「キーワード」でセットされていたら。男性の読み手なら「やはり読むなら男主人公だよな」と思うでしょうし、女性の読み手なら「女主人公の恋愛ものが読みたい」のかもしれません。

 読み手はかなり素直な性格で、読みたい主人公の性別を決めてあるものです。

 もちろん男性でも「女主人公」ものが読みたい日もありますし、女性でも「男主人公」の「ボーイズラブ」が読みたいのかもしれません。アニメ『うたのプリンスさまっ♪』『アイドリッシュセブン』などの影響で「女主人公」の「ボーイズラブ」にもかなりの需要があります。この場合は「ボーイズラブ」の他に「女主人公」を付けて検索しているはずです。

 また神坂一氏『スレイヤーズ』のように「異世界ファンタジー」で「女主人公」ものを男性が読みたくなるかもしれません。

 だから「タグ」「キーワード」をひとつ使って「男主人公」か「女主人公」かを明示しましょう。これは読み手の行動推測から導き出せる、確度の高い検索因子です。


 また主人公の職業を絞る読み手もかなりいます。

 「アイドル歌手」なら「アイドル」と「歌手」双方の「検索タグ」「検索キーワード」でヒットするのでお得です。まぁ「歌手」で検索して「アイドル歌手」がヒットする。でも万人が「アイドル歌手」ものが読みたいわけではないでしょう。ミスマッチを誘発する可能性もありますが、検索結果に残らないよりははるかにましです。

 『新世紀エヴァンゲリオン』の影響から「中学生」が主人公の作品にも一定の需要があります。もし「女子中学生」をセットしたら、「女子」と「中学生」の双方でヒットするのでこちらも効率がよいでしょう。

 「推理」ジャンルでも主人公が「刑事」「警察官」「弁護士」「私立探偵」「高校生探偵」「名探偵」。いずれかを選べば、ピンポイントで絞り込めます。「私立探偵」「高校生探偵」「名探偵」はいずれも「探偵」の検索因子でヒットするので、「探偵」のバリエーションを指定するつもりでセットすればよいでしょう。

 また「勇者」の物語が読みたければ「勇者」もセットします。もし「勇者と魔王」の物語を書いたら「勇者と魔王」とタグを付ければ「魔王」で検索してもヒットするのでお得です。ただし仮に物語の最終目標が「魔王」だと知られたくない場合は「魔王」とは書けないので注意してください。知られてもかまわなければ「勇者と魔王」でもよいのですけれども。まぁ連載が終了してから「勇者」タグを「勇者と魔王」タグに変えるのがベストな選択でしょう。

 今流行りの「ニート」や「無職」も職業のひとつではあります。

 このように主人公の職業は、読み手が読みたいものを端的に表してくれるのです。

 だから主人公の職業も「タグ」「キーワード」で書いておきましょう。


 主人公の職業に似たもので「誰よりも強い主人公」を求める読み手が多くいらっしゃいます。

 一般的に用いられる「検索タグ」「検索キーワード」は「主人公最強」「チート」「無双」古いところでは「俺TUEEE」も同じ状況を表していました。「チート」「無双」はゲーム要素のある作品で主に用いられます。その場合は「Sランク」「レベル99」「○○スキル」「パラメーター」のようなゲーム要素のある高い階級や能力も「タグ」「キーワード」にセットされやすいですね。

 また職業に「天才」だったり「世界一」だったり冠が付く場合もあるでしょう。たとえば「天才魔術師」「世界一の名探偵」のような使い方です。


 また状況を表す「検索タグ」「検索キーワード」として「追放」「ざまぁ(ざまあ)」「成り上がり」「ハーレム」「逆ハーレム」「婚約破棄」「NTR」「スローライフ」などがあります。

 「ざまぁ」と「ざまあ」は検索したとき別ものとして扱われるので、どちらでも引っかかりたいなら「ざまぁざまあ」または「ざまぁ/ざまあ」と指定するとよいでしょう。

 また「ハーレム」を指定すると「逆ハーレム」ものもヒットします。「逆ハーレム」を指定しても純粋な「ハーレム」ものはヒットしません。




タイトルに検索タグ・キーワードを埋め込むパターン

 『小説家になろう』が火付け役の「タイトルに検索キーワードを埋め込む」パターンがあります。

 小説投稿サイトの「検索機能」は、主に「タグ」「キーワード」からヒットする作品を抽出します。しかし「タイトル」も検索因子が含まれていないかチェックされます。

 つまり「タイトル」に検索因子を含めれば、取り立てて「タグ」「キーワード」にその検索因子がなくてもヒットするのです。

 この特性を活かせば「小説家になろう」の長文「タイトル」に行き着きます。

 たとえば「勇者パーティーを追放されたSSランクの回復術士が成り上がりでざまぁする」という「タイトル」に設定すると、「キーワード」になにも設定していなくても「勇者」「パーティー」「追放」「Sランク(SSランク)」「回復」「成り上がり」「ざまぁ」の検索因子が引っかかるのです。

 これで『小説家になろう』の長文タイトルの謎が解けましたね。すべては「検索」で生き残るためなのです。

 「長文タイトル」は嫌だなと思ったら、『小説家になろう』なら「あらすじ」、『pixiv小説』なら「キャプション」と呼ばれる部分に「タグ」「キーワード」を埋め込んでいきましょう。

 実はたいていの小説投稿サイトの「検索機能」はここも検索しているのです。なお『カクヨム』の「紹介文」は検索対象外となっています。

 だから「タイトル」や「タグ」「キーワード」を長くしたくない、または付けたい「タグ」「キーワード」がありすぎるのなら、「あらすじ」「キャプション」欄を有効に利用しましょう。




作品の本質を表すタイトル

 「タイトル」は基本的に短いほうが好まれます。

 しかし小説投稿サイトは前述したように「検索で大量にヒットさせないかぎり人気が出ない」ように出来ているのです。

 だからどんどん長い「タイトル」の作品が増えていきました。

 それでも可能なかぎり短い「タイトル」をつけるのが書き手の腕の見せどころです。

 先ほど書いた「勇者パーティーを追放されたSSランクの回復術士が成り上がりでざまぁする」という「タイトル」。どんな話なのかはわかりやすいのですが、タイトルですべてを語ってしまっていますよね。

 読み手として「ネタバレ」している作品を読む理由はなんでしょうか。

 安心感からですよね。先に「どんな物語か」知っているから、ハズレを引きようがない。そういう安心感があります。

 でも名作ほど「ネタバレなタイトル」にはなっていません。「これはどんな物語になるんだろう」という疑問が「知りたい」に変わって「読まずにいられるか」となるのです。

 もし「タグ」「キーワード」にすべての要素を入れ込めなかったら「タイトル」でいくらか負担してもらう必要はあります。でもそんなにあふれるほど「タグ」「キーワード」が必要になる物語はそうありません。とくに十万字の長編小説には「勇者」「パーティー」「追放」「SSランク」「回復」「成り上がり」「ざまぁ」なんて盛り込みすぎです。

 であれば「タイトル」はむしろすっきりさせたほうが読まれるのではないか。

 『小説家になろう』式の入れ込み「タイトル」がどこまで通用するのかは、実際に投稿するまでわかりません。それで読まれるのか読まれないのか。初回を投稿したらテストしてもよいでしょう。連載三回目くらいまでに「タイトル」を確定させればいいや。くらいの心づもりで読まれる「タイトル」を見つけ出しましょう。





最後に

 今回は「タイトルとタグ・キーワードを考える」について述べました。

 数十時間かけて書いた作品を、いざ投稿したのに誰にも読まれなかった。

 それは読みたい人に見つけてもらえなかったからです。文章が悪いとか物語がつまらないとか自罰的な思考に走る方もいます。しかしそれ以前の問題なのです。

 適切な「タグ」「キーワード」そして「タイトル」であるのか、もう一度チェックしましょう。そして多くの人に読まれるまでこれらをいじくるのです。

 どんなに素晴らしい作品でも、誰にも見つけられなければ意味がありませんよ。




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