1454.端緒篇:推敲する(描写・表現を改める)
今回は「描写や表現を改める」段階です。
「推敲」ではとくに肝になります。
同じものをどう表現するのが適切かを考えながら手を入れていきましょう。
推敲する(描写・表現を改める)
描写・表現はいくらでも巧みにできます。しかしそれを「執筆」段階でひねり出そうとするから難しく感じられるのです。
あくまでも描写・表現は「推敲」の段階で巧みにしていきましょう。
「執筆」では変なこだわりを持たず、感じたままに書けばよいのです。
描写や表現を巧みにしていく
ということで、描写や表現を巧みに変換していきます。
「推敲」で文章を改めていく最中で「この一文、この一段は必要ないのではないか」と思われる部分が必ず出てきます。
しかし「読み手」はこの文章を読むのは初めて。なので「書き手」として「要らない」と思っても「読み手」としては「入れてくれないと状況がわからない」一文、一段があります。
「執筆」を「高速ライティング」で一気に書き切る理由。それは「プロット」に沿って書けば「書き手」の意識を薄れさせる効果もあるのです。
だからこそ描写や表現を巧みに変換していく過程で「必要ないのでは」と思った一文、一段が二周以降の「推敲」で「必要だった」へたどり着いたときは困ります。
描写や表現を巧みにしていくこの過程で描写や表現の修正があらかた終わるようにしてください。つまり「完成度の高い原稿にする」のです。
ここで頑張って頭をひねり、拙い文章が最大限魅力的な文章になるようにしていきます。
拙い文章を活き活きとした文章に生まれ変わらせるのです。
ベースとなる「執筆」文章はすでに「高速ライティング」で出来あがっています。だから先々の心配などせず、文章の分量も心配せず果断に変換していくのです。
そうやって生まれた文章には、一気に書き切ったときの「勢い」がまだ残っています。
そう、読み手が「ぐいぐい惹き込まれて先を読みたくなる」ような「勢い」です。
もし書き出しからあれこれ考えながら文章をひねり出していたらどうなったでしょうか。
「推敲」に入る前時点ではおそらく文章自体の完成度は高くなります。しかし「先が読みたくなる」ような「勢い」がまったく感じられないのです。
当然そうなりますよ。一文一文、頭を悩ませながらひねり出してくるのですから、文章の流れが詰まってしまうのです。この差は実に大きい。
後からでは取り返しがつきません。だから「執筆」は一気に書き切るのが重要なのです。
小説投稿サイトには数多くの小説が掲載されています。その中で「先が読みたくなる」ような「勢い」のある作品は数少ない。たいていが箸にも棒にもかかりません。その差は「勢い」の有無にあります。
書き手があやふやなことは読み手に伝わらない
書き手は「カッコいい表現」だと思って慣用句や常套句、紋切型に頼ってしまいがちです。しかしその慣用句や常套句、紋切型は本来の用法に適合していますか。またその言葉は読み手が知っていますか。そこをチェックしていきます。
ビジネス文章でとかく横文字を使いたがる人がいるのはご存知ですよね。小池百合子東京都知事はとにかく横文字を使いたがります。「ワイズスペンディング」「サスティナブル」「ダイバーシティー」など日本語で説明できるのにわざわざ横文字を使ってしまうのです。
これはテレビの経済情報番組『ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)』初代キャスターである点も関係しているのでしょう。
英語が得意な方ならわかるでしょうが、私のように英語が不得手だと、なにを言われているのかさっぱりわかりません。
しかも「アウフヘーベン」と英語ですらない言葉も前フリなく使いますので、さらに手のつけようがないのです。
このように「あなたも知っているでしょ」と自分の知識を読み手に押しつけるてはなりません。反感を買うだけですよ。賢明な書き手であれば避けましょう。
読み手は「あなたの知識をすべて知っている人ばかりではありません」。
基本的に「読み手はなにも知らない」と思ったほうがよいくらいです。
出てくるものの長さ・重さ・大きさ
とくに「異世界ファンタジー」で「中世ヨーロッパのような」世界観の場合、物の長さ・重さ・大きさを示さない作品が多いのです。
それで読み手がイメージできるとは考えないでください。
あなたの「異世界」は創ったあなたしか知らないのです。多くの作品で用いられている「異世界」を踏襲しているのだとすれば、それは「シェア・ワールド」であって、あなたの独創ではありません。そんな世界が「紙の書籍」になると考えるほうがどうかしています。
たとえば「剣と魔法のファンタジー」で「ロングソード」という単語を知っている読み手はかなり多いでしょう。
いろんなゲームで出てきますから単語自体はほとんどの方が知っていますよね。だから長さを書かないことが多いのです。
でもあなたの作品がその読み手にとって初の「剣と魔法のファンタジー」かもしれません。
そのとき安易に「ロングソード」「ブロードソード」「ショートソード」「グラディウス」「レイピア」と書いても、読み手は「長さはどのくらいなのだろう」「形はどんなだろう」と疑問に思うのです。
「ロングソード」を出したいのなら「刃渡り七十センチのロングソード」のように長さをきちんと書くべきです。
あなたのファンタジーがポンドヤード法や独自単位で書いているならそちらの長さに合わせましょう。
書き手には、どのくらい長いから「ロングソード」なのかを説明する義務があるのです。
宮本武蔵氏と戦った巌流・佐々木小次郎氏の愛刀は「備前長船長光(通称・物干し竿)」で、その長さは刃渡り三尺ほどもあったとされています。通常の刀は二尺強です。
ここでは寸尺で表記していますが、それも戦乱の日本を表現するための単位となっています。
中国式に言えば「度量衡」。
これを明確にしなければ、伝わるものも伝わりません。
最後に
今回は「推敲する(描写・表現を改める)」について述べました。
ことばを和語にするか漢語にするか英語にするか。それだけで伝わり方が大きく異なります。「長い剣」なのか「長剣」なのか「ロングソード」なのか。こんな違いだけでも読み手の思い浮かべる形状は異なります。
また物の形状や長さ・重さ・大きさを表さなければ、読み手に正しく伝わりません。
たとえばトロールが大槌を持っているとします。人間にとっての大槌なのか、トロールにとっても大槌なのかは説明しなければ読み手がわからないのです。
「描写・表現を改める」とは読み手がわかるように書く、を指します。
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