1452.端緒篇:執筆の高速ライティング

 「視点固定」ドラフトが完成したら、いよいよ「執筆」の「高速ライティング」へと移行します。

 ここからが本当の勝負です。「プロット」まではすべてこの「執筆」の「高速ライティング」をするためのお膳立てと言ってよいでしょう。

 そして「執筆」はできるかぎり飛ばしに飛ばして書くと「勢い」が生まれます。

 最初は慣れないかもしれませんが、慣れてきたらどんどん時間を短くしていきましょう。





執筆の高速ライティング


 今回は「高速ライティング」の第二弾です。

 場数を踏むことで手に入れられるスキルですので、とにかく挑戦していきましょう。

 脳も効率よく使えるようになっていいこと尽くめですよ。




プロットを可能なかぎり詳細に書いておく

 小説は「書き出し」からノンストップで結末まで書く必要なんてありません。

 先々の展開も考えず、やみくもに思い浮かんだものを「高速タイピング」するのは「高速ライティング」とは呼ばないのです。

 書き始める前に必ず「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の順で物語そのものを確定させてください。

 これらが曖昧なままで「執筆」の「高速ライティング」を始めると、どうしても書きながら物語を練る時間も必要となます。結局「執筆」時間が余計にかかってしまうのです。

 その中でもとくに「プロット」が「執筆」の「高速ライティング」の鍵を握ります。

 「プロット」を書くためには「箱書き」が必要です。

 「箱書き」で「誰々が登場する、どんな天候でどんな時間でどんな場所で起こるシーンなのか」を明確にします。

 それを元に「プロット」で「誰がどの順番でどう行動してどう発言して誰がどんなリアクションをとるのか」といったところまで細かく決めておきます。

 つまり「プロットのドラフト」ががっちりと組み上がっていれば、それを小説の形にして「高速ライティング」できるのです。




執筆の高速ライティングは場数で鍛えられる

 「執筆」の「高速ライティング」はとにかく「場数を踏む」のが秘訣です。

 あなたは毎日、ただ漫然と小説を書いていませんか。

 それでは「高速ライティング」は不可能です。

 つねにストップウォッチを使って、一回の投稿ぶんをどれだけ早く入力し終えるか、「プロット」にでも書いておくとよいでしょう。

 そして「今日は昨日よりも早く書きあげよう」という意識を持って執筆するのです。

 こうして毎日の小説執筆で時間との勝負をしている書き手は、次第に「場数を踏ん」で「高速ライティング」へと移行していきます。

 毎日時間と勝負してください。

 昨日や一週間前や一カ月前よりも速く書くのです。

 その意欲があれば「高速ライティング」のスキルは必ず上がります。

 そして「プロット」を「小説」にする段取りも見えてくるのです。

 これは言葉でどうこう言ってもまず伝わらないと思います。

 毎日時間と勝負して、よりたくさんの分量をより高速で書く努力をしていると、ある日突然ブレイクします。




右脳と左脳のパイプを太くする

 頭の中で情景をイメージする右脳と、それを言語化する左脳との連携は、日々鍛えなければ身につきません。

 日々鍛えてさえいれば右脳と左脳をつなぐパイプが必ず太くなり、「イメージを直接言語化できる」という「執筆」にとって理想的な状態となります。

 ですがその事実をほとんどの書き手は知りません。

 「執筆(PCへの入力)で頭を悩ませる時間が長いほど、よい小説になる」と勘違いしているのです。


 実際には「執筆で頭を悩ませる時間が短いほど、よい小説になり」ます。

 「頭を悩ませる」のは「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の段階だけです。

 「執筆」段階で頭を悩ませても意味などありません。

 「がっちりと組み上がったプロット」さえあれば、それを右脳でイメージにしやすくなります。

 そのイメージを左脳で言語化して、「高速タイピング」していけば、右脳と左脳をつなぐパイプは間違いなく太くなるのです。

 パイプが太ければ太いほど、右脳で思い描いた情景を左脳で瞬時に言語化できます。

 その言語化を速めれば速めるほど「高速ライティング」に近づくのです。




高速ライティングと言うけど

 つまり「高速ライティング」とは「右脳と左脳のパイプを太く」してイメージを即座に言語化する第一段。

 左脳で言語化したものをそっくりそのまま一次運動野を通してPCへ「高速タイピング」で入力していく第二段の二段階を指します。

 ちょっとイメージしにくいので、とくに意識する必要のないところを省きましょう。

 感覚的には「頭の中のイメージがダイレクトにPCへ高速で入力されている状態」です。

 この状態まで来られたら「高速ライティング」の片方は完成と言ってよいでしょう。


 小説を多作するには、たくさんの物語の雛形を創れる能力と、高速にPCへ入力していける能力の二つが必要です。

 片方だけで多作はできません。

 物語の雛形をたくさん創れたら、今の連載が終わっても空白を入れずに次の連載を開始できます。

 高速にPCへ入力していけたら、論理的に二倍の速度で入力できれば二つの連載を同時進行できるのです。

 だから雛形と入力が揃わなければ「高速ライティング」とは言えません。




誰もが文豪に

 明治末期から昭和までのかつての「文豪」は、貴重な原稿用紙に向かって書いては消し、消しては書くを繰り返して、一行ずつ小説を作りあげていました。

 しかし現在はPCやスマートフォンさえあれば原稿用紙など要らないのです。

 だからPCやスマートフォンを持っている人は誰でも今から「文豪」になれます。

 それも憧れていた「文豪」以上の書き手になれるのです。

 芥川龍之介賞(芥川賞)を授かって話題となったお笑い芸人ピースの又吉直樹氏は太宰治氏の大ファンであることを公言しています。

 そんな彼が『火花』で芥川賞を獲れたのも、PCがあったればこそです。

 あとは、どうやって物語を創るのか。その物語をどうやって文章で表現するのか。その力だけが純粋に要求されます。

「どうやって物語を創るのか」は「企画書」を立て「あらすじ」でエピソードを練り、「箱書き」で場面シーンを区切って、「プロット」で場面シーン内の出来事の読ませる順番を確定させます。

 これができていれば「物語」をどう創るのかは、もはや語るべきではないでしょう。




視点固定ドラフトから執筆の高速ライティングを

 少し前なので忘れたかもしれませんね。

 「プロット」のドラフトには三段階あります。

 「ト書き」ドラフト、「散文」ドラフト、「視点固定」ドラフトです。

 このうち「高速ライティング」がかかるのは「ト書き」ドラフトになります。

 ですが、慣れてくれば「散文」ドラフトも「視点固定」ドラフトも、「高速ライティング」できるようになります。要領さえわかれば、いつも同じ手順なので簡単ですよ。そのくらい数多く「ドラフト」の改稿を繰り返せば「高速ライティング」も身につきます。

 「ト書き」ドラフトを「散文」ドラフトに変換する手順さえ身につけば、高速変換も可能。また「散文」ドラフトを「視点固定」ドラフトにするのも、ちょっとしたコツがつかめればあっという間に終わります。

 当面は「視点固定」ドラフトを完成させ、「執筆」する際に「高速ライティング」していきましょう。

 「執筆」の「高速ライティング」では、文章を読みながら適宜「最適と思われる類語」に置き換えていきます。また読んでいてつっかえるところや流れの悪いところを見つけたら、通りがよくなるように手を入れるのです。

 こちらも最初から「高速ライティング」できないかもしれません。ですが慣れてしまえばいくらでも高速化できます。

 なにより、これから「執筆」する文章の先の先まで「視点固定」ドラフトが出来あがっているので、なんの迷いもなく表現を考えられるようになるのです。

 「執筆」の「高速ライティング」が終われば、「推敲」へ進みます。

 だから「執筆」段階で文章を完成させる必要はありません。読んでいてリズミカルか、この類語のほうが伝わりやすいかだけを考えて、「視点固定」ドラフトを清書するつもりでどんどんペースを上げていきましょう。

 なにせこのあといくらでも表現を練られる「推敲」が待っていますからね。

 漢字の重複や近くに同じ字があるなどは気にせず、書きたいように書いてみる。

 それが「勢い」を重視した「執筆」の「高速ライティング」なのです。





最後に

 今回は「執筆の高速ライティング」について述べました。

 どんなに拙い物語でも「勢い」があれば面白くなります。腕のない芸人も「勢い」さえあればウケてしまうのと同じです。誰とは言いませんが。

 「視点固定」ドラフトを元に「執筆」しますが、ここでも「高速ライティング」してください。

 「視点固定」ドラフトを読みながら、文章の通りとリズムをよくして「執筆」していきましょう。

 どうせ細かな表現や欠点は「推敲」で直してしまいますからね。

 そもそも「推敲」という故事成語も、あらかた文章を書き終えたあとに「すかたたくか」で悩んだ逸話を元にしているのです。

 悩むのは「推敲」になってから。

 「執筆」は伸び伸びと行ないましょう。



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