1451.端緒篇:高速ライティングは必須のスキル
どんなに巧い文章を書いても「勢い」がなければスラスラと読めません。
評価は「巧いけどスラスラ読めない」よりも「拙いけどスラスラ読める」ほうに軍配があがります。
そんな「勢い」を生み出すのが「高速ライティング」です。
高速ライティングは必須のスキル
どんなに文章が巧みでも「勢い」のない文章ではぐいぐい読ませる力はありません。
しかし「高速ライティング」で「とにかく速く入力」すると拙くても「勢い」のある文章に仕上がります。
「勢い」は後から付け加えられる代物ではありません。初稿をどれだけ「勢い」よく書くかでしか生み出せないのです。
「勢い」のある拙い文章はいくらでも巧みな表現に変換できますし「勢い」も残せます。
表現を気にせず一気に素早く書きつける
そもそも文章を高速で書く「高速ライティング」とはどういうものでしょうか。
まず第一段階として「書きたいセリフ」「書きたい行動」「書きたい結末」などを「表現を気にせず一気に書いて」しまうのです。
どんなに粗くても、語り落としていても、ある部分だけ(たとえば会話文だけ)が突出して書かれていてもかまいません。
あなたが「書きたい!」と着想したそのインスピレーションこそが貴重なのです。
これ以上「小説を書きたい」動機はありません。
これが第一段階の「高速ライティング」です。
そしてこの書きつけが盛り込まれるよう「企画書」「あらすじ」を創り、
もし「あらすじ」が浮かばなければ「企画書」である「どんな主人公がどうなりたくて(どういう出来事で)なにをなしどうなったのか」つまり「主人公がどうなりたい」「主人公がなにをなす」「主人公がどうなった」から決めるとよいでしょう。そうすれば「企画書」は基本的に「書きたい○○」をする話になります。
「企画書」の「どんな主人公がどうなりたくて○○をなしどうなった」で物語の筋を確認してください。面白くなりそうかは「書きつけ」と「企画書」で判断できます。
とはいえ「高速ライティング」の経験のない方や取り組んだ回数の少ない方は、「書きつけ」と「企画書」だけでは「面白そう」か判断できないでしょう。このあたりは回数をこなせば自然と感覚が身につきます。たとえ面白くならなかったとしても「高速ライティング」の練習にはなるので、始めのうちは頓着せず「書きたい○○」が小説に変わる体験を積みましょう。
高速ライティングのお膳立て
「プロットのドラフト」は、「ト書き」ドラフトを「小説の文章」に近づける工程で生み出されるものです。
「プロット」は三層のドラフトで構成されます。「ト書き」ドラフト、「散文」ドラフト、「視点固定」ドラフトは説明してありますね。
第二段階の「高速ライティング」はこのうち初回「ト書き」ドラフトを創る際に発揮されます。
「箱書き」を読んで盛り込みたいセリフや動作などを「ト書き」の形で「高速ライティング」していくのです。
「視点も言葉の重複も表現も気にせず」ただ発言者名を書いてその次にカギカッコで発言を書き、動作は次行に「と隆は言った。」のように書いていくだけです。
たとえば「僕は〜と思った。僕はそれはいけないことだとわかっている。でも僕は今それをしなければならない。」のように「僕」という単語が頻繁に出てきてもまったく問題にしません。そんなものは後から書き直せば済む話です。
「拙い文章」でけっこう。頭の中に明確なイメージがあるうちに「ト書き」ドラフトを「一気に書きあげて」しまいましょう。
表現の拙さや表記の揺れがあってもいっさい意に介さないでください。
ただし注意点があります。
この段階では推敲も考えて、規定よりもかなり多くの枚数を書いておきましょう。
原稿用紙「三百枚」つまり十二万字が上限であっても十五万字や十八万字を目標にしてどんどん書いていくのです。
規定の枚数や文字数に達しなかったら
最後まで「プロットのドラフト」を書き切ったのに規定の枚数や文字数に達しなかった。さてどうするか。
描写を増やして体裁を整えるのもひとつの手です。
それだと、どう描写を「水増し」していいのかで時間がかかります。
いかな文豪といえど「水増し」ほど時間をとられるものはないでしょう。
そのくらい「水増し」はたいへんな作業なのです。
達しなかったのなら「箱書き」を追加して「エピソード」や
でもあなたには「高速で書き切る」スキル「高速ライティング」があります。整合性をとるために関連する「エピソード」や
もし「高速で書き切る」スキル「高速ライティング」がなかったら、文豪と同様に描写の「水増し」で
でもあなたは文豪ではありません。彼らほど描写の「水増し」が巧みではないのです。
それなら描写の「水増し」なんかせず、「エピソード」や
増やした「エピソード」や
足りないならまた「箱書き」を増やします。足りましたか。まだ足りない。ならもうひとシーン……。このままではエンドレス・ストーリー。
本来なら文字数があふれるくらいの「箱書き」を書いておくべきなのです。この点は「箱書き」と「高速ライティング」を繰り返して「箱書き」ひとつで何千字または何万字書けるのかを把握していけば自然と解決します。つまり「数をこなす」のです。
その意味でも「高速で書き切る」スキル「高速ライティング」を活かした多作には意味があります。
(注)箱書きひとつで何千字書けるかは、「文書ファイルの総文字数÷箱書きの数」で目安がわかります。総文字数の中には空白や改行マークを含まず、「純粋に文字だけ」を数えてください。「小説賞・新人賞」でも文字数は「空白と改行マークを含まず」に計算します。
規定の枚数や文字数を大きく超えられたら
規定の枚数や文字数を大きく超えられたら、「執筆」へ移行して描写を巧みに変換していきます。
皆様の中には「この段階であふれたエピソードや
先ほども申しましたが、足りなくなって描写を「水増し」する作業ほど手間の割に実りの少ない作業はありません。
先にエピソードや
当然行き当たりばったりな「水増し」作業に明け暮れますから面白くもなんともありません。ただの苦行です。
だから断言します。「先に削ってはダメ」です。
勢いを重視する
小説投稿サイトに掲載されている小説が必ずしも「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経ているわけではありません。
ですが本コラムではこれらを経るように書いてあります。まぁ最初から「あらすじ」が書けるのなら「企画書」は要らないかもしれませんが。でも主人公の本質を知るには「企画書」でスパッと書かれてあると確認が楽になります。
これらは実際の「執筆」作業に入ったとき「表現を気にせず、文章を高速で書ける」ようにするためです。
道筋がわかっていれば先々の展開は丸わかりなので、描写も先を見据えたものになります。
「伏線」だって「あらすじ」遅くとも「プロット」段階で仕掛けてあれば、張り忘れないのです。
「思わせぶりな描写」を意図的に仕込むのだってたやすい。
昭和の文豪は貴重な紙を有効に利用するためあれこれ悩んでいました。
しかしコンピュータが普及した現代を生きる我々は、ワープロ機能であるMicrosoft『Word』、JUST SYSTEM『一太郎』、Apple『Pages』やテキストエディタなどでいくらでも推敲できる利器を手に入れたのです。これを最大限に活かしましょう。
いくらでもやり直せて、いくらでも書き換えられます。最初はあえて拙い文章にして「高速ライティング」で「一気に書き切り」、その後から巧みな表現に変換していけるのです。
そうやって書いた文章には粗削りですが「勢い」があります。「先が読みたくなる」ような「勢い」です。
結果として同じ作品を書く場合でも、最初から巧みな表現に囚われていると「うまい」文章にはなるでしょうが「勢い」は生まれません。
後から「勢い」を加えるのはまず不可能です。
どんなに拙くてもかまわないので先に「表現を気にせず、文章を高速で書く」つまり「高速ライティング」だけに集中すれば、確実に「下手」ではありますが「勢い」のある文章となります。
「執筆」で下手な文章は後からいくらでも「推敲」で巧みな表現に変換できるのです。
変換しても「勢い」は残ります。
つまり最終的に「うまくて勢いのある文章」に仕上がるのです。
最後に
最後になって注意しておきますが、この工程を経てもなお分量が規定を大きく超えているはずです。「推敲」で巧みな表現に変換すれば、結果としてかなりの分量を削減できるはずですが、それでも相当余ります。
二回先に「推敲」して分量を減らしていく手順を書きますので、しばらくお待ちくださいませ。
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