1449.端緒篇:プロットを超える

 今回は「プロット」がどうも今ひとつに見えて、変更したいと思っている方向けです。

 物語をプロセスに沿って構築していると、本来なら「プロット」を変更したいなんて思いません。

 でも迷いがある方は本コラム推奨の方法でも「変えたい」と考えだします。

 今回はそんな迷いを叶える方法についてです。

 今回で『小説家になろう』での連載が合計「五百万字」を突破致しました。『カクヨム』は「五百十五万字」を突破です。『小説家になろう』ではまえがきに書いていたものを『カクヨム』では本文の前に挿入しているからですね。

 本コラムも総まとめに入っていますので、さすがに六百万字はいかないでしょう。でもね、たぶん、きっと。





プロットを超える


 今回は「プロットを超える」についてです。

 この「小説の書き方」コラムでは、「プロット」の「視点固定」ドラフトに従って「執筆」していきます。

 ですが、あるとき「こうしたほうが面白くなるんじゃないか」と思いついたりひらめいたりする方もおられるでしょう。

 私自身はこのような状態に陥りませんでした。

 とくに現在の書き方になった頃からはいっさいないのです。

 「命題」「テーマ」「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」と経るごとに物語を練って少しずつ詳しくなっていくため、プロット段階で変更する余地はありません。

 しかし「プロット」が気に入らないときは「箱書き」まで戻って修正できるのも、この創作手法の利点です。

 もしエピソードの結果を変える可能性があるときは、高速で筋道を計算し直さなければなりません。




本コラム推奨の書き方の場合

 本「小説の書き方」コラム推奨の「命題」「テーマ」「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経る書き方をしているとします。それでも「視点固定」ドラフトや「執筆」の「高速ライティング」をしている段階で「こうしたほうが面白くなるんじゃないかな」と思ってしまったら。

 ない話ではありません。

 その場合「箱書き」まで戻って、どんなシーンを追加したいのか変更したいのかを書き出します。

 すでに「執筆」が進んでいるため、「箱書き」から「プロット」の「視点固定」ドラフトを決めるまでの時間がほとんどありません。

 毎日連載なら「執筆」する時間のほか、ルート変更に伴う「箱書き」「プロット」の確定を最低でも翌日書くぶんだけでも決めておく必要があります。

 毎日連載のためにかなり危うい綱渡りを強いられるのです。

 この緊張感が忘れられずに、必要もないのに以後の作品でもルート変更をしてしまう書き手の方もいらっしゃいます。


 もしエピソードそのものを変更しなければならなくなったら、「あらすじ」まで戻る必要があります。こうなると毎日投稿を続けられなくなるのです。

 その場合は毎日投稿にこだわらなくてもよいでしょう。

 納得のいくまで「あらすじ」を練り直し、「箱書き」「プロット」の「視点固定」ドラフトまでを決めてから再度「執筆」の「高速ライティング」と投稿を繰り返していきます。

 とにかく何作か本コラムの推奨する「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の順に決めていって、書きあげてみてください。

 そうすればイレギュラーな「こうしたほうが面白くなるんじゃないかな」とは思わなくなります。そのくらい緊密な「プロット」が作り出せるのです。

 それでも「せっかく思いついたのに」と考えたら、ネタ帳や「箱」に書いておきましょう。

 次回作でそれを書けばいいのです。なにも今書いている作品で無理やり書き加える必要はありません。




プロットを壊して超える

 それでも「プロット」を超える展開がしたい場合。

 まずこれだけははっきりと申しておきます。

 「絶対に後悔しないでください」


 あなたはすでに完璧な「プロット」を持っているのに、それを壊して超えていこうとしているのです。

 その場の「衝動」だけで完璧な「プロット」を壊すのだと改めて自覚しましょう。

 そういう意志を固めてから、完璧な「プロット」を壊していきます。

 まずこれまで想定していた「佳境クライマックス」と「結末エンディング」が使えなくなるかもしれません。というより、使えるように戻ってくる展開を考えるのは至難です。

 だからこれまでの「佳境クライマックス」と「結末エンディング」は使えないものと思ってください。

 思い入れのある「佳境クライマックス」と「結末エンディング」をどうしても使いたいのなら、「プロット」は安易に変更するべきではありません。


 「プロット」を超えるには、豊富な経験が必要です。

 物語の筋を変えてしまうため、どんな展開になるのか初心者にはわからなくなります。

 書き慣れている書き手なら、どんな展開になりそうか予測できるのです。

 予測できたら、それに合わせて「あらすじ」「箱書き」「プロット」を修正していきます。

 当初想定していた「佳境クライマックス」「結末エンディング」はほとんど使えないのですが、次作に持ち越せる場合もあるので「箱書き」は保存しておきましょう。

 変更する場所が物語の前半にある場合、大量の書き換えが必要になります。

 「佳境クライマックス」を変更すると物語のキモが置き換わるのです。

 バトル小説なら腹部への前蹴りで倒していたものを、後頭部への上段回し蹴りで倒すよう改めたとします。この程度なら本筋から離れることはまずありません。

 しかし当初はこちらが勝つ予定だったのに、負けさせるに変更した場合は「結末エンディング」の大幅な改定が必要です。勝者で終わるはずが敗者で終わります。「結末エンディング」が確実に変わるのです。

 「ハッピーエンド」で終わるはずが「バッドエンド」になります。

 それまでの展開で「負けるはずがない」と思わせていたのに「負けて」しまう。

 衝撃的な展開ですが、「なぜ負けたのか」の説明がなければ読み手が納得しません。

 もしそれまでの展開で「勝ち負け五分五分」という状況で「佳境クライマックス」が変わるのであれば、読み手は「負けることもあるよな」と納得できます。

 だからこそ「負けるはずがない」のに負けた場合、「なぜ負けたのか」の説明は尽くさなければならないのです。





最後に

 今回は「プロットを超える」について述べました。

 本コラム推奨の執筆法ならわざわざ「プロットを超える」必要なんてありません。

 それでも魔が差して「変更したい」と思ったら、「あらすじ」「箱書き」「プロット」を何度も読み返して「実現可能か」を検討してください。

 わずかな変更であれば「箱書き」「プロット」レベルで対応可能ですが、物語の筋を変えてしまうのであれば「あらすじ」まで遡る必要があります。

 できそうだと判断したら、「あらすじ」まで遡って変更し、直ちに新たな「箱書き」「プロット」を書いてください。

 毎日連載を続けつつ、変更した先の展開を毎日決定していくのはギリギリの作業になります。その切迫感がクセになって、毎回「プロットを超える」ようとする書き手もおられるのです。

 そんな中毒症状に陥ることなく、物語がもっとよくなるにはどうすればいいのか。

 それだけを追求しましょう。



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