1417.構文篇:小説賞・新人賞で最適な主要キャラクター数
長編の「小説賞・新人賞」で主要人物が十人も二十人もいたら、ひとりひとりを丁寧に書けませんよね。
そうなってしまうと大賞なんて獲れやしません。
十万字の長編小説をきっちりと成立させるには最適な人数があります。
小説賞・新人賞で最適な主要キャラクター数
「小説賞・新人賞」に応募する作品では、可能なかぎり主要キャラクターを絞るべきです。
できれば三人にまで絞りましょう。妥協できて四人です。
それ以外はモブで問題ありません。
連載で毎回新キャラクターを出さない
連載小説を書いていて、毎回新キャラクターを出す書き手もいらっしゃいます。
しかし本当に新キャラクターが必要なのでしょうか。
連載小説だと基本的に一回で四千字前後です。その文字数で新キャラクターを出し続けたら、人物説明だけで四分の一から半分くらいは文字数が削られてしまいます。これでは物語の展開はほとんど書けないのです。
結果として、連載はしているんだけど本筋の物語はいっさい進みません。ただキャラクターばかりが増えていくのです。収拾がつきませんよね。
そのキャラクター全員が物語の本筋に絡んでくるようなら、とてつもない構想力の持ち主です。しかしほとんどの書き手にはそんなとてつもない構想力なんてありはしません。
支離滅裂な物語にしかならないのです。
では物語の本筋の展開を進めるにはどうすればよいのでしょうか。
簡単な話です。
「物語の本筋に影響を与えるキャラクター以外は特別扱いしない」ようにします。
長編小説ならざっくり「主人公」と「対になる存在」と「三人目」だけを立てて、残りはすべてモブでよいのです。
連載小説でも、可能なかぎり特別扱いするキャラクターを減らしてください。毎回出てくるキャラクターは物語の本筋を進めるのに不可欠な人物でしょうか。おそらく違いますよね。そんな人物のエピソードを読まされても、読み手はすぐに忘れてしまうのです。もしのちのち重要なキャラクターだと判明したら、改めてその回を読み返せば済みます。
しかし重要なキャラクターが凡百と同じ扱いではすぐに忘れられてしまいますし、誰が重要なのかわからないまま読まざるをえなくなるのです。読み手はストレスが溜まります。
正直に言えば「時間の無駄」「記憶の無駄」以外のなにものでもありません。
ですから毎回新キャラクターを出すような構成は避けてください。
書き手には誰が重要で、誰がただのモブかの区別はついています。しかし読み手には区別できないのです。
気の利いた書き手なら、重要なキャラクターはとても丁寧に書いて印象に残るようにします。それこそ「キャラクターを立てる」のです。
モブの「キャラクターを立てる」と、肝心の重要なキャラクターが埋もれてしまいます。このあたりの差配が難しいのです。
極力新キャラクターを減らす努力をしましょう。同じ人物を何度でも使えば済む話ですからね。そのほうが「トラブル・メーカー」の役まわりを任せられます。
十万字ならメインは三名
長編小説の「小説賞・新人賞」は十万字前後で完結する必要があります。
十万字でメインを張れるのはたったの三名です。
主人公、「対になる存在」、そして三人目。
この三名だけで十万字はまわります。
こう書くと不思議がられるかもしれませんね。
だって十万字、原稿用紙三百枚もあるのに「たった三名」なのですから。
次のように考えてください。
「1)主人公と三人目登場」「2)対になる存在登場で主人公と三人目の村が襲われる」「3)主人公が敗北して三人目が連れ去られる」「4)敗残の主人公が猛特訓する」「5)主人公が対になる存在との対決で相手を倒す」「6)三人目を救出して物語が終わる」
この六章で構成します。すると一章あたり一万六千余字書けばよいのです。
一章を「起承転結」の四部で構成すると、一回の投稿文字数は四千余字となり、毎回「起承転結」を進められるので実はとても書きやすい。
もし「メインを張るのが四名」になるとこうすんなりとはいきません。
「1)主人公と三人目登場」「2)対になる存在の軍が主人公と三人目の村を襲う」「3)主人公と三人目は敵指揮官であるライバルと戦って敗北し三人目が連れ去られる」「4)敗残の主人公が猛特訓する」「5)主人公がライバルとの対決で倒し、味方に引き入れて三人目を救出する」「6)主人公たち三名が力を合わせて対になる存在と戦ってかろうじて倒す」「7)解放された世界を平定して物語が終わる」
最短で七章の構成です。三人目は捕らえられ救出される役まわり、ライバルは主人公の好敵手であり寝返る役まわりを任せています。
一章あたり一万四千余字、一章あたり「起承転結」四部構成なら一回三千五百余字となります。長編小説では他にキャラクターを登場させる余地がありません。本当に四人しか登場させられないのです。名前があるだけのキャラクターを登場させると、文字どおり「名前だけ」になりかねません。
しかもこれが最短構成です。もし「対になる存在」陣営に三人目とライバルをまわせば七章ではとても足りません。しかも四人ぶんの描写を行なえば書ける文字数はさらに減ります。
だから長編小説の「小説賞・新人賞」では「三名がメインを張る」作品を応募しましょう。なんとか「四名」までなら工夫して出せなくはないのですが、キャラクター描写はそのぶん手薄になります。それなら無理のない「三名」が圧倒的に有利です。
三角関係はラブコメものや恋愛ものの定番ですから、皆様もどんな物語かは想像できると思います。もし四角関係となれば、物語はぐちゃぐちゃのドロドロになりかねません。結果として十万字に収まらないのです。
「どんな物語になるか」は「メインを張る主要キャラクターは何名にするか」で大半が決まってしまいます。最も構成しやすく、最も物語が破綻しないのが「三名がメインを張る」です。
書き手が誰であっても、連載一回「四千字」が最も書きやすい分量だと思います。
動作や会話を中心に組み立て、設定が説明くさくなるのを抑え、見たものを比喩でたとえていく。これを自然にミックスすると、だいたい四千字になります。
三千五百字くらいだと少々物足りない。四千五百字くらいだと若干多すぎる印象を受けます。
四千字ほどの分量で書かれていると、十分くらいで読めるので読み手としてもとても快適です。
書き手が書きやすく、読み手もスラスラ読める。
四千字はまさに「魔法の分量」なのです。
まぁ、分量が均一だとそれはそれで不恰好になるので、第一章は手短に、クライマックスの第五章は文字数を増やして盛り上がりを演出するのもよいでしょう。
最後に
今回は「小説賞・新人賞で最適な主要キャラクター数」について述べました。
ズバリ「三名でメインを張る」です。
ひとりでは成立せず、ふたりではすぐに終わってしまい、四人ではギリギリですが、五人では確実に多すぎて展開が足早になってしまいます。
初心者ほど「三名」を軸にしてください。普通に書いて連載一回四千字に及ばなければ、心象描写や情景描写を増やしてバランスをとります。初心者は心象描写や情景描写が足りていないので、そこを補強していく目安となるのです。
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