1415.構文篇:道具でキャラクターを立てる
主人公の「キャラクターを立てる」には「対になる存在」との対比がいちばん手っ取り早い。とはいえどうしても存在感が薄くなるときもあります。
そんなときは唯一無二の「道具」を用いてイメージ付けするのがよいでしょう。
道具でキャラクターを立てる
キャラクターは人物との対比だけでも立ちますが、「道具」を加えればさらに引き立ちます。
『アーサー王伝説』では主人公アーサー王が湖の乙女から聖剣エクスカリバーを授かるのです。だからアーサー王は神秘的なキャラクターとして立ちます。また「聖杯」を巡るクエストによって、円卓の騎士はそれぞれのキャラクターが立っていくのです。
主人公を象徴する唯一無二の道具
主人公はさまざまな「道具」を操る場合もあります。しかし真に主人公のキャラクターを立てたければ、その中でも唯一無二の「道具」で主人公を「象徴」するべきです。
アーサー王にとっての「聖剣エクスカリバー」、アムロ・レイにとっての「ガンダム」、孫悟空にとっての「ドラゴンボール」、広野健太にとっての「ドリムノート」、夜神月にとっての「デスノート」、天才ハッカー・高木藤丸にとっての「パソコン」、平野ノラ氏にとっての「ショルダーフォン」……なんて今でも憶えている人は少なそうですね。
キャラクターが立っている人物には「象徴」する「道具」がひとつあるはずです。
そのキャラクターをイメージする。そのとき一緒に思い出される「道具」こそがそのキャラクターを「象徴」しています。
主人公を主人公たらしめるのが「唯一無二の道具」の存在です。それを自由自在に操って最大の効果をあげます。
アムロ・レイは第一話でマニュアルを読みながら「ガンダム」を操り、以後歴戦の勇士を次々と撃破していくのです。そして最終話で「ガンダム」の大破と引き換えに連邦軍を勝利へと導きました。まさに「ガンダム」が象徴するのは、ニュータイプとして成長したアムロ・レイ本人だったのです。
主人公にとって「道具」が唯一の「象徴」かもしれません。
田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムは「戦艦ブリュンヒルト」を唯一無二の「象徴」にしていました。そこに「金のペンダント」が加わりますが、これはラインハルトのではなく親友のジークフリード・キルヒアイスの「象徴」ですね。ラインハルト自身は生涯「ブリュンヒルト」を「象徴」としていました。それが常勝の天才を「象徴」するにふさわしかったからです。最終的にユリアンたちの奇襲を受けて損傷しますが、それまでは傷ひとつつけられていません。
主人公以外も含めれば「道具」だけでなく他のキャラクターが浮かぶ人物もいます。
ランスロットにとっての「グィネヴィア王妃」、シャア・アズナブルにとっての「ララァ・スン」、マ・クベにとっての「キシリア・ザビ」、ルルーシュ・ランペルージにとっての「
キャラクターを立てる「道具」や「人物」はひとりにつきひとつまたはひとりに絞りましょう。数が増えるほど「象徴」としての力が弱まります。
こうなると藤子・F・不二雄氏『ドラえもん』のドラえもんや、『キテレツ大百科』のキテレツこと木手栄一なんかは「象徴」する「道具」が絞れないと思いますよね。ドラえもんはさまざまな「道具」を取り出す「四次元ポケット」が、木手栄一は先祖のキテレツ斎が記した『奇天烈大百科』がそれぞれを「象徴」する「道具」です。そこから毎回ひみつ道具や発明品が登場して物語が進んでいきます。
「道具」を生み出す「道具」とは、藤子・F・不二雄氏の発想力には脱帽です。
マスコット
キャラクターにこれと言った「道具」がない場合、「マスコット」が設定されているものです。
アニメのサテライト『マクロス
「マスコット」としてはアニメの富野由悠季氏『聖戦士ダンバイン』主人公ショウ・ザマにはミ・フェラリオの「チャム・ファウ」が、同じく富野由悠季氏『重戦機エルガイム』主人公ダバ・マイロードには有翼人ミラリーの生き残り「リリス・ファウ」が付き従います。
近しいところだと鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』インデックスの「マスコット」である三毛猫スフィンクス、長月達平氏『Re:ゼロから始める異世界生活』エミリアの「マスコット」である大精霊パックでしょうか。小説でも「マスコット」は存在するのです。
野球に詳しい方は、東京ヤクルトスワローズの「永遠の憎まれっ子」つば九郎を思い浮かべる方もいるでしょうね。球団マスコットの域を超えた活躍を見せています。
そういう意味では船橋市の非公認ゆるきゃらであるふなっしーも「マスコット」ですね。
「マスコット」の存在が主人のキャラクターを立てます。重要な人物なんだけどどうしても「キャラクターが立たない」場合に「マスコット」がとてもよく機能します。
道具やマスコットで象徴してキャラクターを立てる
主要な人物は「道具」か「マスコット」で「象徴」づけて「キャラクターを立てた」ほうがよいでしょう。
刑事を「象徴」する警察手帳や、アイドルのマネージャーを「象徴」するスケジュール帳、殺し屋を「象徴」する銃火器や刃物は鉄板ですね。
他にもバンドものなら担当する楽器がそのキャラクターの「象徴」となります。マンガのかきふらい氏『けいおん!』も楽器が登場人物の「象徴」となっていましたよね。だから「キャラクターが立っ」ていたのです。
他にもマンガの手塚治虫氏『鉄腕アトム』のお茶の水博士や、マンガの石ノ森章太郎氏『サイボーグ009』のギルモア博士は「大きな鼻」がキャラクターを立てる「象徴」となっていました。鼻を大きく書いただけでも立派に「象徴」となるのです。
『サイボーグ009』ではサイボーグ戦士それぞれにも「象徴」となる改造部位があります。002ことジェット・リンクは両脚にロケットを内蔵してマッハ5で飛行したり加速装置を持っていたりと機動性に特化したサイボーグですし、004ことアルベルト・ハインリヒは全身にミサイルやマシンガンなどを搭載した破壊力に特化したサイボーグです。そしてブラックゴーストが作った、ある意味で「集大成」で「完成形」なのが主人公の009こと島村ジョー。その事実がジョーの心に大いなる闇を生み出しています。
最後に
今回は「道具でキャラクターを立てる」について述べました。
「道具」や「マスコット」が定番です。しかし『サイボーグ009』のように身体的特徴が「象徴」となってキャラクターを立てている作品もあります。
要は「この人物はこの「象徴」があるから他の人物とは明確に異なっている」とわかれば、その「象徴」が「キャラクターを立てる」のです。
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