1413.構文篇:キャラクターの誕生5(夢願望・好き嫌い・謎秘密)

 今回でキャラクター設定の終わりです。

 これらはキャラクターの本能的な部分を司っています

 どうなりたいや好悪やベールに包まれて窺い知れない部分ですね。

 明日で毎日連載1350日目になるのかな。かなりの長旅ですね。この間小説が書けていないので、正直かなりしんどいです(苦笑)。

 新年は本連載を終えて、小説を書いていこうと思っています。小説のタネを発送するのが好きなので、小説も毎日連載したいですね。それこそ年に長編小説十二冊くらいは書きたい。1350日ということは3年8か月で500万字近く書いているので、書けない分量ではありませんので。問題はこちらもネタ切れになったらですね。それでも本コラムの連載がヒントになるかもしれません。

 では1349日目のコラムを始めます。





キャラクターの誕生5(夢願望・好き嫌い・謎秘密)


 今回はキャラクターに隠された性質についてです。

「夢・願望」はそうなりたいと思うもの、「好き・嫌い」は過去の出来事から思うもの、「謎・秘密」は読み手に隠されているものとなります。

 これらを設定しておくと、表現にもバリエーションが生まれるのです。

 年金生活をしたいとか、犬好きの猫嫌いとか、実は伝説の勇者の子孫だとか。

 いずれも内面に隠された性質ですよね。そういうものを設定していきます。




夢・願望

「穏やかな老後を送りたい」とか「億万長者になりたい」とか「起業して独立したい」とか。「海賊王に、俺はなる!」と言って早に十数年、という作品もありますね。いつなるのかだけが気になります。作品自体には飽きましたが。

 キャラクターには「そういう状況になりたい」という「夢・願望」があります。

 とくに主人公には読み手層の多くが抱く「夢・願望」を持たせると感情移入してもらいやすくなるのです。

 そもそも小説などの物語という娯楽は、読み手の「夢・願望」を叶えるために存在します。だから主人公が読み手の「夢・願望」を叶えれば、読み手は大満足するのです。

「最強の存在になりたい」読み手が多いから「主人公最強」「チート」「無双」の物語は流行ります。思春期の中二病なら「青春ラブコメ」を求めるのです。だから渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が多くの支持を集めました。普通の思春期なら「ラブ・ストーリー」を好むのですが、中二病だとそのものズバリは欲しくないのです。「ラブ・コメディー」の形に隠して楽しく読め、結果結ばれる物語がよくウケます。

 小説投稿サイトの利用者もたいていは中二病ですから「ラブ・ストーリー」よりも「ラブ・コメディー」のほうが好まれるのです。

 また「穏やかな老後を送りたい」キャラクターは「派手な成功は求めない」傾向にあります。「億万長者になりたい」キャラクターは節約志向が強く浪費を厭うのです。「起業して独立したい」キャラクターは独立を果たすまでけっして目立ちません。

「夢・願望」があればその達成に向けて「けっしてやらない」ものも出てきます。

 これだけ有利な点があったとしても、キャラクターごとに何個も「夢・願望」を設定してまわるのは難しいですよね。

 そんなときは神様に叶えてもらいたい「夢・願望」を設定しましょう。「お金」もあれば「かっこいい男性」もあれば「不老不死」もあれば「ギャルのパンティー」かもしれません。「死んだ人間を生き返らせたい」のかも。すべてマンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』の神龍にキャラクターが叶えてもらいたい「夢・願望」でしたよね。そんなものでもよいのです。




好き・嫌い

 キャラクターにはさまざまな「好き・嫌い」つまり「好きなもの」「嫌いなもの」があります。

 アニメの設定資料集を見てもキャラクターの「好きなもの」「嫌いなもの」の欄が必ずあるくらいです。

 よくある設定は「食べ物」の「好き・嫌い」です。また「人物」に対する「好き嫌い」もあります。占いが好きで朝のテレビで星座占いを観なければ気が済まないキャラクターもいるでしょう。虫が嫌いでゴキブリが顔を見せただけで卒倒するほどかもしれません。さまざまな「好き・嫌い」が考えられます。

「好き・嫌い」にもレベルがあるのです。「恋しい・恨む」「愛する・憎む」と対応します。

 世の中には愛犬家・愛猫家あいびょうかがたくさんいるのです。ですが中にはペット・アレルギーがあって死ぬほど嫌っている方もいらっしゃいます。

 また「人間嫌い」が高じて人類滅亡に血道を上げるマッド・サイエンティストもいるでしょう。特撮の『仮面ライダー』の秘密結社ショッカーのようなものですね。

 しかしただ単に「好き・嫌い」を考えないでください。「好き」になったのには理由がなくても、「嫌い」になったのには必ず理由があります。

 誰かを「好き」になっても、どこが「好き」になったのかは本人にもよくわかりません。「恋」なんて芽生えた側の「錯覚」にすぎないと言う人もいます。だから「百年の恋も冷める」ような出来事があれば「恋」は虚しく散るだけです。

 猫嫌いなら幼い頃猫に引っかかれたり噛まれたりしたのかもしれません。フラれた相手が猫好きだったのかもしれません。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ですね。

 駄目を押しますが、「好き」に理由や理屈はありません。しかし「嫌い」には必ず理由があるのです。

 それを丁寧に書けるかどうかでキャラクターの魅力が決まります。




謎・秘密

 キャラクターには「謎」「秘密」が不可欠です。

 人間は「謎」があったら解き明かしたい、先を知りたいという欲求に突き動かされます。「秘密」として隠されていたら表に出したくなりますし、「秘密」にした理由を知りたくなるのです。

 だからキャラクターに「謎」や「秘密」があると、それだけで強力な求心力を得られます。

 しかしいつまで経っても秘密のままではなりません。

 もしキャラクターに設定された「謎」「秘密」が解き明かされないまま物語を終えたら、読み手はひじょうに大きなストレスを抱えてしまいます。モヤモヤが募って憤慨する方すらいらっしゃるのです。

 だから設定した「謎」「秘密」は必ず作品内で解き明かしてください。そうすればストレスがきちんと発散されて「読み心地」「読後感」もよくなります。

 そう考えると、キャラクターに必要以上の「謎」「秘密」は要らないとわかるでしょう。すべてのキャラクターに十個の「謎」「秘密」を設定してしまったら、すべてを解決させるのに単行本が何巻必要になるかわかったものではありません。

「小説賞・新人賞」に応募する長編小説なら、それぞれのキャラクターにひとつの「謎」
「秘密」を設定しましょう。そしてすべての「謎」「秘密」を解きながら結末へと向かうのです。物語も「誰の謎・秘密から順番に解き明かしながら進めていこう」と考えていけば、強い惹きを発揮できます。もちろん最後は主人公の「謎」「秘密」を解き明かして終えるべきです。





最後に

 今回は「キャラクターの誕生5(夢願望・好き嫌い・謎秘密)」について述べました。

 いずれもキャラクターの行動原理に結びつく「重要な」設定です。

 なにを叶えたいのか。なにが好きで嫌いなのか。読み手に隠しているものはなにか。

 それらを解き明かしながら物語を進めていきます。

「小説賞・新人賞」で「キャラクターが立っていない」と言われたら、ぜひ「夢・願望」「好き・嫌い」「謎・秘密」を設定してください。とくに「謎・秘密」はエピソードごとに解き明かされていけば「キャラクターが立つ」ようになりますよ。



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