1402.構文篇:毎日の執筆ルーチンを組む

 小説を書きたければ、執筆時間を捻出しなければなりません。

 しかし漫然と「どんな物語を書こうか」と考える時間ではないのです。それは勉強や仕事の合間にでも考えればよい。執筆時間は「すでになにを書くか決まっている」状態で、本文を書いていく時間のことです。

 多くの方は宿題や持ち帰り仕事を終えて寝るまでの隙間を利用して執筆しています。

 しかしどうしてもその時間には書けない場合もありますよね。





毎日の執筆ルーチンを組む


 執筆に最適なタイミングは人によってそれぞれです。

 学生生徒であれば「学業第一」で、勉強が終わってから憂いなく執筆するのがよいですね。

 仕事をしている方は解雇されないよう、それなりに就業して成果を出しましょう。いつ小説が大ヒットしてもよいように。まぁ冗談ですが、仕事で出世できる人は新入社員の十分の一、大企業なら百分の一、千分の一以下と宝くじに当たるほどの確率になってしまいます。それほど先行き不安なのであれば、小説に将来を託してもよいですね。




寝る前までのゴールデンタイム

 小説を執筆するなら、妄想が働く時間がよいですね。

 具体的には夕食後、宿題や持ち帰った仕事などを片づけてから寝るまでの時間は、脳が適度に疲労しているので妄想が働きやすい。まさに執筆のゴールデンタイムです。

 ひと仕事終えてお風呂に浸かっているときに「今日の展開」をあれこれ妄想していると、すぐにでも執筆したくなります。

 私は現在病気療養中なので、お風呂は家族を邪魔しないよう昼食後に風呂掃除してからそのまま入ります。お湯に浸かりながら「今日はなにを書こうかな」と妄想しているのです。凡百な発想しかできないときはつまらない話になってしまいます。一昨日、昨日、今日あたりは凡百な発想ですね。ビシッと面白い話はなかなか生まれません。

 毎日連載を続けてこれまで1400話以上になりますが、今でも当たり外れは大きい。そういったものも含めて15時から16時までに書き始めて、17時から18時までに執筆を終えています。構想はお風呂で練っているので、Macを立ち上げてからすぐに執筆できるのです。早ければ一時間もあれば書きあげられるので、時間があるときにストックを溜めるようにしています。

 小説も、書ける日にストックを溜めておけば、書けない日があっても毎日連載を途切れさせません。

 夜お風呂に入ってから、就寝するまでの間が執筆のゴールデンタイムです。

 この時間帯にどれだけ作品世界に没頭できるか。追求してみてください。

 できれば誰からも干渉されない時間にするべきです。現実世界に戻されるたびに腰を折られ、興が削がれてしまいます。

 小説の質は、いかに没頭できるかにかかっているのです。ちょいちょい割り込みが入ると文章のリズムが悪くなります。深く没頭しているとテンポのよい文章に仕上がるのです。文章に執筆が順調かどうかが表れてしまいます。

 どうしてもリズムを崩される日は、執筆ではなく推敲に時間を使ってください。今日の執筆ぶんは書けるときに溜めたストックを費やせばよいのです。

 寝る前に集中して執筆しているのに家族や友人などから頻繁に割り込みが入るようなら、執筆時間を変更しましょう。いくらゴールデンタイムでも頻繁に割り込まれるとリズムが崩れます。リズムの悪い小説は、読んでいても居心地がよくありません。読み手もなにか落ちつかない思いをするのです。

 代わりの時間として有望なのは「早朝」です。




早起きは三文の徳

 小説を書くゴールデンタイムは就寝前です。

 しかしどうしても割り込みが頻繁になるようなら、いっそ早寝早起きして早朝できれば未明に書いてください。

「早起きは三文の徳」と言います。

 まだ家族が寝ている時間に起きて、誰にも邪魔されず執筆するのです。目が完全に醒めるまで頭は空転してしまうでしょうが、頻繁に割り込まれるよりも遥かにまし。

 その代わり、寝る直前まで頭を物語世界に没頭させて、これからの展開がスムーズに流れるように構築していってください。これだけで、朝起きてからの執筆がスムーズにいきます。

 もし寝つく頃に斬新なアイデアが思いついたら。寝床から手が届くところにメモ帳を置いておき、それに書きつけてください。PCを立ち上げる時間で忘れてしまいかねませんからね。スマートフォンやタブレットPCでもメモできないことはないのですが、フリック入力に慣れていないと時間ばかりかかってその間に忘れてしまいます。もしスマートフォンやタブレットPCにメモしたければ、お絵描きアプリで手書きしておくとよいでしょう。でもそのためだけにお絵描きアプリを使うのは非効率なので、やはり紙のメモ帳を使うのが最適解です。

 早朝や未明に執筆するとし、寝つくまで妄想を膨らませていると「よい点」があります。物語に即した「夢を見る」のです。

「夢」は「情報を整理する」ために見るものとされています。学業を優先するなら、勉強で学んだ知識を整理して脳に定着させるべきです。しかし仕事に関しては憶える必要のある内容は少ないはず。であれば、将来プロの書き手になれるよう、小説の妄想を頭いっぱいに詰め込みながら寝るのです。すると頭が小説の物語世界に入り込みますから、その物語世界の「夢を見」ます。この「夢」は侮れません。「夢」なのに「物語の整合性がつい」てしまいます。

 なぜこんなことが起こるのか。人間が「社会性」の生き物だからです。

 人間は「社会」とかかわり、人々の反発を買わないように自らを律して生きています。つねに「社会」を意識した生活なのです。

「社会性」を持っているから、小説の物語世界という仮想の「社会」においてもそこから外れないような生き方をしてしまいます。

 つまり小説の物語世界で生きている主人公の気持ちが、その「社会」でどう受け止められ、どういう反応が起こるのか。「夢」が現実世界の常識に照らして「整合性」をとろうとするのです。

 だから物語世界の「夢を見る」くらい妄想を高めなければなりません。そのうち「夢」が楽しくて仕方がなくなるはず。なにせあれだけ頭を悩ませていた「物語の整合性」が「夢」ひとつで綺麗に解決してしまうのですから。




夢見る少女じゃいられない

 悩んでいた展開が「夢」によって一点突破される経験をすると、そのうち「夢」に頼る執筆スタイルとなってしまいがちです。

「夢」頼みになってしまうと、生産効率は甚だしく落ちます。

 なにせエピソードやシーンを構成するために寝てばかりいると、ひと寝にひとつのエピソードやシーンしか書けないからです。一日に何度でも寝られるのび太くんのような人はなかなかいません。寝るべき時間に寝られなくなったら本末転倒。「夢」を活かした執筆スタイルが維持できなくなります。

 そこで「理詰め」で解決するものはしっかりと技術や知識を活かして書くようにしてください。どうしても他人の目を意識してバランスをとらなければならないシーンのみ「夢」のご神託を受けましょう。


「夢」は万能薬ですが、なんでも薬頼みではそのうち効かなくなってくるのです。

 頭痛がヒドいからと強い消炎鎮痛剤『ロキソニン』を飲みまくっていると、さらに強烈な頭痛が襲ってきても効かなくなります。消炎鎮痛剤に耐性ができてしまうからです。

 だから頭痛持ちの人ほど、消炎鎮痛剤を飲むタイミングは遅くあるべき。少し痛いからと気楽に飲んではなりません。

「夢」は、どうしても解決できないシーンが出てきたときのために温存するべきです。しかしあまりに温存しすぎても物語世界の「夢」を見なくなるので、適度に物語世界の「夢」を見るように調整してみてください。

「荒唐無稽」な物語を書くとき、どうしても「物語の整合性」がなおざりにされます。意識して整合性をとるのは難しいので、そういうときには「夢」が最強の武器になるのです。

 最強の武器といえど、つねに刀を抜き身で持っているのでは駄目です。いつもは鞘へ納めて腰にき、いざというとき一瞬で抜刀してください。





最後に

 今回は「毎日の執筆ルーチンを組む」について述べました。

 執筆は夜に行なうのが効率的です。しかし環境によっては夜が難しいときもあります。そういうときは早朝できれば未明に書きましょう。執筆しながら朝日を迎えるのも乙なものですよ。

 しかし寝ぼけた頭では言葉が浮かんでこない。そんなときは「夢」で物語を整理するのもひとつの方法です。とはいえ「夢」は劇薬なので、あまり頼りすぎないようにしましょう。「理詰め」で構築できるところは論理で構築するべきです。



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