1401.構文篇:執筆環境を整える
以前「執筆環境」について書いているのですが、コラムも千四百を超えているので、再び喚起したいと思います。
今どき紙の原稿用紙に手書きした作品を、「紙の雜誌」の「小説賞・新人賞」に出す方はまさかいないとは思います。ですが、そういう勘違いをなくすためにも、啓発したほうがよさそうなので、あえて書いています。
私はiMacで書いていますが、できればWindowsを扱えたほうがいいですね。ゲーミングPCでなくてもそこそこのスペックでじゅうぶん。それこそ台湾のASUSあたりの安いノートPCでもかまいません。
その代わりモノクロでよいのでレーザープリンターを購入しましょう。
執筆環境を整える
小説を書くのに最低限の道具が必要です。
しかし原稿用紙である必要はないのです。執筆だけならシャープペンシルとPPC用紙でもかまいません。コンピュータすら必要としない「アナログ人間」でも小説は書けるのです。漢字に詳しい必要はありますが、コンピュータの扱いが苦手な人は紙に書いてもよい。
でもコンピュータとくにPCが扱えないと「小説賞・新人賞」へ応募できません。
厳密に言うと、応募はできても手書きの原稿は一瞥もされずにゴミ箱行きです。
つまりどれだけ時間をかけて手書きしようが、PCで書いてプリンターで打ち出した拙い作品よりも下とみなされます。
現在求められる執筆環境について述べてみます。
プロ志望ならPCを使いこなせ
どんなに面白い作品を書いても、応募の時点で切られることがあります。
「紙の雑誌」で開催されている「小説賞・新人賞」に応募するときも、
現在、手書きの原稿を受け付けている「小説賞・新人賞」は見ません。
きっとどこかに手書きの原稿を受け付けている奇特な出版社もあるのでしょう。しかし目にしないほど「印刷された原稿」が「不文律」となっています。
手書きの原稿を禁じている大きな理由は「読めない」からです。どんなに達筆な人でも、というより達筆な人の文字ほど「読めません」。これは打ち込みをしていたときの経験でもあります。
今どき手書きにこだわっても「小説賞・新人賞」では読まれることなくゴミ箱行きです。
「紙の雑誌」で開催されている「小説賞・新人賞」であっても、手書き原稿は認められていません。
紙の原稿が求められても、今はプリンターで印刷した原稿を送付するのが当たり前です。
打ち出すのも大きめの「明朝体フォント」で見やすく、スラスラ読める。これが当たり前なのです。
A4のPPC用紙に横書きでびっしり印刷して送ってくる方もいらっしゃるそうですが、これは見にくく、読みづらいので論外。
小説投稿サイトの隆盛で横書きの表示に慣れていると勘違いしがちですが、小説は本来「縦書き」です。このほうが小説は格段に読みやすい。
執筆に用いているソフトやアプリの都合上、縦書き印刷ができないものもあるでしょう。その場合は「執筆ソフト」と「印刷ソフト」を分けてください。「印刷ソフト」は可能であればJUST SYSTEM『一太郎』が、縦何文字×横何行で文字組みを指定できるのでよいですね。出費が痛いときはPCにバンドルされているMicrosoft『Word』でもかまいません。ただ、こちらは縦何文字×横何行がほとんど勘でしか指定できないので、よほど精通していないと厳しいと思います。
文字サイズは縦何文字×横何行に収まれば、その最大の大きさにすると読みやすいのでオススメです。可能なら最低でも16pt以上にしましょう。
見落としがちなのが「行間」です。できれば行間は広くとってください。字間はある程度詰めてもなんとかなります。しかし行間は広くないと選考さんが書き込めなくなるのです。ましてプロ志望であれば、担当編集さんや校正さんの指示が書き込みやすいよう、広めの行間をとるクセをつけましょう。字間もできれば書き込みしやすい間隔をとってください。そのうえで最大の文字サイズに設定するのです。まぁプロになれば出版社レーベルの担当編集さんから文書ファイルの設定を指定される(厳密には「原稿のテンプレート」ファイルを渡される)ので、プロになるまでは「小説投稿サイト」へのアップロードにだけ注意していればよいでしょう。ただ、念のため「印刷ソフト」には習熟するようにしてください。
「印刷ソフト」では「ノンブル(原稿用紙のページ数)」の振り方は必ずマスターしてください。もしわからなければ、印刷した用紙に買ってきた「ノンブル」スタンプを一枚一枚貼り付けなければならなくなります。「ノンブル」はできれば「現在のページ/総ページ数」で表記してください。よく「現在のページ」だけを印刷する人がいますが、もし選考さんが原稿を落としてぶちまけたら、すべて回収して並び替えるのに「ページ数」しか印字していなければ「あと何枚あったっけ?」となって原稿の逸失を招きかねません。「総ページ数」も振ってあるからすべてを集められるのです。
Eメールは社会人の常識
万が一「小説賞・新人賞」を獲ったら、出版社とのやりとりは基本PCのEメールで行ないます。つまりEメールが扱えないと仕事になりません。
またいつでもEメールが扱えるからと、スマートフォンや携帯電話でやりとりするのにも限界があります。文書ファイルを添付ファイルに指定しづらいからです。また基本的にスマートフォンや携帯電話に保存された文書ファイルはプリンターで印刷できません。できてもかなりの知識が求められます。それならまだ簡単なPCのEメールを用意しましょう。
PCを推奨するのには時代の進化も関係しています。今はクラウドサーバーを介して担当編集さんと文書ファイルを共有しているようです。セキュリティーの問題もありますからね。間違って他社に作品データが流出したらとんでもない騒ぎになります。その点クラウドサーバーを介していればEメールに記載されていたクラウドサーバーのURLをWebブラウザで開いて、アップロードのリンクをクリックして文書ファイルを指定すれば一発で共有できるのです。また出版社レーベルによっては、専用のアップロードツールが配布されるかもしれません。この場合は専用アップロードツールを起動して、共有したい文書ファイルのアイコンをドラッグ&ドロップすれば、それだけで共有できます。
こういったところも含めてPCに慣れていないと、いざプロになろうというときに右往左往してしまうでしょう。
PCが使えると情報面でも有利になります。インターネットで文献やネットニュースに当たれるからです。記憶の怪しい言葉や知識をインターネットで検索すれば、正しい(と思われる)ものが見つかります。
以上の点から、PCが扱えないと現代の「小説賞・新人賞」は通らないと断言できます。
小学校教育でプログラミングを習う時代となりました。
これからはきっとあなた以上にPCを扱える後進が増えてくるでしょう。彼ら彼女らが「小説賞・新人賞」に応募してきたら、PCを使いこなせない人には受賞の可能性すらなくなりかねません。
今からでも遅くないので、PCとプリンターを買って、PCで執筆するようにしてください。そして執筆は横書きでもかまいませんが、印刷は必ず縦書きで行ないましょう。
レーザープリンターかコンビニのコピー機
紙の原稿を「紙の雑誌」の「小説賞・新人賞」へ応募するとき、忘れがちなのが「防水対策」です。
もしもの雨を想定して、原稿をビニールに包んでから封筒やレターパックに入れてください。これは気遣いできる方は誰でもやります。
問題は紙の原稿をもとに選考しているときに起こるのです。選考さんは紙の原稿を読んでいるとき、水分を摂りながら選考します。つまり手や机は水気がいっぱいなのです。
多くの選考さんはレーザー複合機で原稿をコピーしてから作業に当たります。
ですが、ごく一部の選考さんは、応募原稿にそのまま書き込みをしてしまうのです。
つまり印刷した原稿が水でにじんだら、そこで選考は強制終了となります。
印刷には紙にカーボントナーを焼きつける「レーザープリンター」がオススメです。もしインクジェットプリンターしか持っていなければ、印刷した後にコンビニへ行って全ページをコピーしましょう。まぁその手間とお金があれば、モノクロでもよいので「レーザープリンター」を購入したほうが結果的には割安です。
PC初心者にはレーザープリンターの設定に四苦八苦するでしょう。その経験がPCスキルを高めるのです。なにごともトライ&エラーで憶えていきましょう。
ちなみにPCに慣れてきたら、文書閲覧ファイル形式の「.PDF」で担当編集さんと共有することになります。これはAdobe『Acrobat』が必要になりますし、使いこなすのはなかなか難しいので、プロになってから担当編集さんに習うとよいでしょう。
最後に
今回は「執筆環境を整える」について述べました。
まずPCを持っているのが最低条件です。次にインターネット回線を引くこと。そして無線LANでWi−Fi設備を導入するのです。インターネット回線とWi−Fi環境を手に入れると、スマートフォンでもインターネット回線がデータ通信容量を気にせず使い放題になるので、経費節減にもつながります。
そしてモノクロでよいので、Wi−Fiにつなげられる「レーザープリンター」を揃えるのです。
まだ予算が余っているなら、ワープロソフトの『一太郎』を買いましょう。やはり縦何文字×横何行の「縦書き」表示と印刷ができると苦労しません。『Word』でも試行錯誤すればできなくはないのですが、かなりのスキルが要求されるので、そのくらいなら『一太郎』に丸投げしてもよいでしょう。ゲーミングPCほどのスペックは要りませんから、Microsoft『Office』もプリインストールされていないような安いノートPCと『一太郎』の組み合わせのほうが執筆にも向いていますよ。
新型コロナウイルス感染症によって外出自粛となって使えるお金もそれなりに増えているでしょう。これを機に執筆環境を整えて、数段レベルの高い書き手を目指してください。
プログラミングの知識を持った競合は、いつ現れるともかぎりませんからね。
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