1396.構文篇:感想文:読書感想文の書き方
今回は「感想文」についてです。
あれだけ苦手だった「読書感想文」。その謎が今明らかに!
というほどのものではありませんが、読書感想文の書き方なぞを書いてみました。
感想文:読書感想文の書き方
体験して感じたものを書くのが感想文です。
読書して、感じたものを書くのが「読書感想文」。お題目はひじょうに明確です。
皆様が悩むであろう「読書感想文」の書き方にアタックしてみたいと思います。
なぜ読書感想文は難しいのか
あなたは学校で「読書感想文」を書かされましたよね。しかも好き好んで選んだ作品ではなかったはずです。
そんな読みたくもない小説を読んで「読書感想文」がスラスラと書けましたか。適当に書いていませんでしたか。
誰もが経験しますが、制限文字数を埋めることだけに腐心しましたよね。
今回のネタバラシは早々に行ないます。
「読書感想文」が難しいのは「テンプレート」が存在しないからです。
意見文や報告文、説明文には「テンプレート」「基本の型」が存在します。
しかし「読書感想文」には「テンプレート」つまり「基本の型」がない。
ここで「あぁ、なるほど!」と思う方は国語の成績がよかったはずです。
「読書感想文」は本来どう書いてもかまいません。課題の小説を読んで感じたものをそのまま文字にするのが「読書感想文」なのですから。
つまり「どの部分でどう感じたのか」を書き出していくのが「読書感想文」なのです。
感性が等しい人はまずいません。だから「どの順番で書くのか」や「どの部分でどう感じたのか」が違っていて当たり前です。
もちろん国語の先生が教える手間を惜しんで(面倒で)教えなかった可能性はあります。
国語教師になったつもりで「読書感想文」の書き方を子どもたちに教えてみる「
感じ方の異なる子どもたちにひとりずつ適した書き方を指導していくのがどれほど手間のかかるものか。
そこで学生や大人の皆様に「読書感想文」の書き方をお教えしようというわが不遜さ。
読書感想文は文頭で結論を書く
「読書感想文」の話なのに、まるで意見文・説明文のような書き方ですが、実はこれがとてもたいせつです。
「読書感想文」はあなたが小説を読んでなにを感じたのかを書いた文章に違いありません。問題は「あなたが感じたものを他人へ正確に伝えられるか」にあります。
課題の小説を頭から感じた順に書き連ねるだけが「読書感想文」ではないのです。
まず文頭で「その小説の全体的な印象」を書きましょう。
「胸が締めつけられた」とか「思わず涙がこぼれてきた」とか「感心しきりだった」とか。
そうしてから各論へ進めば、なぜその積み重ねで「全体的な印象」を覚えるに至ったかが明確になります。
「読書感想文」と言いながら、求められるのは説得力です。けっして感情をそのまま書けばよいわけではありません。
「読書感想文」を読んでいる人に、「これから感想を述べる小説はどのような作品だったのか」を伝えてから、ひとつずつ振り返っていきましょう。
つまり「
「演繹法」で始めて「帰納法」で終える。
「読書感想文」は中身はともかく、頭とお尻がとても機能的でなければなりません。
そういう意味では「読書感想文」は講評をしているようなものなんですよね。
どんな物語だったのか。これを真っ先に書くから「読書感想文」の価値があります。
「読書感想文」という名前にとらわれて「感想」だけを書こうとするから、満足のいく「読書感想文」が書けないのです。
頭から感想を述べていってはならない
では胴体の「感想」を書いていきます。
ここで冒頭から順々に「感想」を述べていき、課題の分量を満たしたところで終わる方がひじょうに多い。それは大きな誤りです。頭だけ目立ってバランスを欠いてしまいます。
適切な胴体の分量を見極めるためにも、文頭で結論を書いて「胴体に使えるのは原稿用紙何枚なのか」の
書ける分量の目処がついたら、小説の中でとくに取り上げたいところを三点挙げてください。「三点」だけでかまいません。
文章だけでなく、論を進めるのに最も効果的なのは「三例法」つまり「例を三つ挙げる方法」を用いることです。
この「三点」をすべて小説の序盤で使い切ってしまうから、点数の低い「読書感想文」しか書けません。
ここまで断言してよいのでしょうか。いいんです!(川平慈英氏ふうに)
「読書感想文」は一文やワンシーンになにを感じたのかが重要なのではありません。
物語全体を通した感想と、それを導き出すのに必要な「三点」を見極めるのがたいせつなのです。
いくら素晴らしい小説であっても、全体に影響する「三点」を挙げさせると「読書感想文」の書き手の数だけバリエーションが生まれます。多くの方は同じ「三点」を挙げると思いがちです。しかし人によって感性は異なります。人の数だけ「三点」が異なっても不思議ではなく、また必ず同じ「三点」を挙げられなければ減点されるはずもないのです。
要は「説得力」の問題です。
どんな「三例」から「結論」が導き出されたのか。その筋書きに「説得力」があるか。それだけが問題なのです。
単純な「勇者と魔王」の物語でも、必ずしも「勇者の行動は正しい」という結論に至るとはかぎりません。「魔王のあの行動には理解できる点もある」という結論に至る「読書感想文」の書き手がいて当たり前です。
ちなみになぜ「読書感想文」の課題に中編小説が多いかわかりますか。
分量が少ないので「三例」を探しやすいからです。
長編小説は「どこが印象に残ったかな」と振り返って読み直すのに時間がかかります。しかし中編小説ならさして時間はかかりません。一度読んで得た「結論」を手がかりに、二度読んで「結論」を導き出した「三点」はどこにあったのか探し出すのです。
結論を導き出した三点を引用して例示する
「三点」と書きましたが、「結論」を導き出したポイントはいくらでもピックアップしてかまいません。その中の「三点」だけをとくに取り上げて例示していくのが「三例法」です。
さらりと書いていますが「結論ありき」なので、論旨はすでに決まっています。
あとはどこを取り上げるのが適切か見極めるだけです。
本文を書きながら探すのではありません。最初に読んだときにノートや原稿用紙の裏などにでも「結論」へ導いたポイントをメモしておきましょう。
あとは「結論」を強めてくれる「三点」の取捨選択に腐心すればよいのです。
どの「三点」を例示するかが「読書感想文」の質を左右します。
よどみなく「結論」を導き出せる「三点」を例示するのが「三例法」のコツです。
「三点」が決まったら、その中で「背骨」となる文または文章を選んで「引用」しましょう。小説から原文を借りてくるのです。
どの文または文章が「結論」を導き出す決め手となったのか。本文を読んでいない人にも伝えたいなら「引用」は不可欠です。「引用」しない「読書感想文」は、根拠を示さない説得のようなもの。誰も相手にしてくれません。
うまい「読書感想文」は原文から「引用」してくる文または文章が適切なのです。
「三例法」なら「結論」に導いた過程を「一例」ずつ書いていきます。
原稿用紙十枚の「読書感想文」なら、文頭の「感想のまとめ」と文末の「結論」で一枚使い、残り九枚を三分割して「一例」につき三枚書けばよいのです。しかも原文の「引用」もできます。
あなたが書かなければならない文字数はそれほど多くはないのです。
原稿用紙十枚の「読書感想文」でも、これなら楽に書けそうですよね。
感じる、思う、考えるから脱出する
課題の小説を冒頭から一文ずつ取り上げて「○○だと感じました。」「△△だと思いました。」「□□だと考えました。」という主観的な文だけを書くのが「読書感想文」ではないのです。
そんな文章は「小学生の読書感想文」レベルでしかありません。しかも点数がそんなに高くない子と同じ評価しかとれません。
「感じました。」「思いました。」「考えました。」文の羅列している「読書感想文」がいかに拙いかは、正しい「読書感想文」の書き方を見れば一目瞭然ですよね。
「読書感想文」を書いてこいと言われます。しかし求められているのは「感想」ではなく、「感想のまとめ」とそれに至る「引用」を交えた「三例法」です。そして最後に「三例法」で広げた「結論」へ再度収束させて終えるから、論旨がはっきりします。
ここまで書ける人がなかなかいないため、「読書感想文」は皆が苦手なのです。
正直に言って、あなたの「感想」が求められているわけではありません。
課題の小説を読んで「なにを訴えたい文章か」見つけた過程が知りたいのです。
先に述べたように、受け止め方は人それぞれですから、「感想のまとめ」も人それぞれ。導き出した「結論」が人によって違ってもよく、むしろ違うべきなのです。
現代文の授業で「ここで作者が言いたいのは」と習いますが、そもそも作者が言いたいことなんて受け手次第なんですよね。
ある人は「交戦権を否定して反戦を訴えている」と言いますし、またある人は「武力で解決しておいて反戦を訴えている」と言います。
それが小説の「唯一」の楽しみ方だからです。
どう受け取ってもかまわない。そもそも書き手がそう受け取れるような書き方をしているのですから。
どうしても訴えたいことをひとつに絞っているのなら、それなりの書き方をしているはずです。そういう作品は答えが均一になりやすく、現代文の教科書でも取り上げやすい。しかし底が浅いとも言えます。「教科書レベル」を超えないからです。
最後に
今回は「感想文:読書感想文の書き方」について述べました。
「読書感想文」という名ですが、感想を聞きたいわけではないのです。
そういう感想に行き着いた過程を知るために「読書感想文」は書かされます。
言い換えれば「読書感想文」とは「講評」なのです。
読んでいない人に「この小説はこんなに面白かったんだ」と伝える。
それが「読書感想文」本来のあり方です。
けっして「感じました。」「思いました。」「考えました。」だけで原稿用紙を埋め尽くさないでくださいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます