1395.構文篇:報告文:5W1Hにも綻びが
「報告文」は主に「新聞記事」「ネットニュース記事」で見られます。
しかしそんな「報告文」では鉄板だった「5W1H」が近年綻んできているのです。
「新聞記事」ならまだしも「ネットニュース記事」を書いているのが、それほどの文章上手ではなくなってきたのが原因でしょう。
報告文:5W1Hにも綻びが
「報告文」として私たちは日頃から「新聞記事」「ネットニュース記事」を読んでいます。
これらに共通するのは、以前書いた「5W1H」が完備されている点です。
「5W1H」を振り返り、いかに現在の文章では蔑ろにされているか考えていきましょう。
なお「5W1H」の詳しくは、本コラム「170.再考篇:5W1H」に書かれています。
例文
東京都は9日15時、新たに315名が新型コロナに感染したと発表した。200人を超えたのは11日連続。
When(いつ)・Where(どこで)
事態は「いつ」「どこで」起こったのでしょうか。
これがわからない文章が意外と多いのです。小説ではとくに。
「新聞記事」「ネットニュース記事」ではたいてい始めのほうに書かれています。
例文では「いつ」はわかります。ただ「何年何月」かがわからない。「どこ時間の」も欲しいですね。ですが「日本時間令和2年12月9日15時」まで書いてしまうと時間の説明に文字数をかけすぎでしょう。「新聞記事」「ネットニュース記事」は掲載される時に「どこ時間」「何年何月」が決まっていますから、同じ基準時・同じ年・同じ月であれば、あえて「何年何月」か書く必要がありません。
また「どこで」が抜けているのです。
「えっ? 東京都って書いてあるじゃん」と思いますよね。よく見てください。「東京都」は主体であって場所ではありません。
主体「東京都は」であって、場所「東京都で」「東京にて」ではない。さらに言えば「東京都」は主体そのものではなく「主体の比喩」です。
「東京都庁新型コロナ対策班の○○広報官」が「東京都」という大きなものに置き換えられています。そうであったとしても、広報官が報道記者にこの情報を伝えた場所はあなたにはわかりますか。
私はわかりません。普通に考えれば「東京都庁内の会見場」だとは思いますよね。それなら発表している動画も撮れるはずです。そんな動画はいっさい流れず、数字だけがニュース速報でテレビの上部に表示されています。よくて「都庁記者クラブ」で速報を受け取っただけでしょう。ひょっとするとそれすらなく、東京都庁の「Webページ」で毎日15時に掲載されるのを、記者たちは待っているだけなのかもしれません。
「新聞記事」「ネットニュース記事」ではよくても、「小説」で単に「9日15時」で始めてしまっては「何年何月」かわからなくなります。
そもそも「そこ」は「現実世界の現在の日本」なのでしょうか。それすら疑わしい。
もしライトノベルを買ってきたのだとしたら、その多くは「異世界ファンタジー」ですよね。そう思って買ってきて読み始めたときに「9日15時」だけでは、「いつ」「どこで」なのかわかりません。
小説の場合、少しずつ「いつ」「どこで」を明かしていき、シーンが終わる前にすべて明かすべきです。できればシーン前半にはわかったほうがよいでしょう。シーンの終わり際に「令和二年十二月のことだった。」と書かれたら。シーンをもう一度読まなければならなくなります。
であっても、物語開始直後に「イオリア暦三年十二月九日十五時、ソレスタル王国の首都プトレマイオスで、セツナは トレミー大通りを歩いていた。」なんて書いてあったら、間違いなく「設定中毒」です。せっかく設定したので、書かなきゃ損だとばかりに。
「いつ」「どこで」は不可欠な情報ですが、それはデータで示されるべきではないのです。
たとえば「イオリア暦」ってどこかで使われていましたっけ。使われていないので「異世界」とか、「ソレスタル王国」なんてないから「異世界」、「トレミー大通り」ってどこよとなります。
異世界ファンタジーだからといって、必ず「暦」を書く必要もないのです。
「クナシリの月」「エトロフの月」「ハボマイの月」「シコタンの月」なんて書いてもかまいません。ただし「数字でない月が何月に当たるのか」読み手にはわからないので、とても不親切な書き方ではあります。
だからといって「順に一月、二月、三月、四月を指す。」なんて間の抜けた文を挟んではなりません。
Who(誰と誰が)
例文では「東京都は9日15時、東京都で新たに315名が新型コロナに感染したと発表した。」とありますよね。
この文章におけるWhoは誰でしょうか。訳に「誰と誰が」と書いてあるので「315名が」がWhoです。と言いたいところですが違います。
When・Whereで述べましたが、主体である「東京都」がWhoです。なぜならこの文の述部は「発表した」であり、これと対応しているのは「東京都は」しかありません。「315名が」は「感染した」にかかりますのでこの例文における主部ではないのです。
これも前述しましたのでさらりと。Whoが「東京都」であっても、抽象的な固有名詞が発表しているわけではないのです。「東京都庁新型コロナ対策班の○○広報官」のような長い文章を短くする「比喩」を用いています。
あるものを大きなものにたとえる場合、今回の「東京都が発表した。」のケースですが、所属している組織を前面に出して「個人の存在を消す比喩」が用いられているのです。
小さなものにたとえる場合、「黒い瞳が口を開いた。」なんて書いたら「目玉親父」を思い出してしまいますよね。
What(なにを)
例文のWhatは「書かれいてない」ですね。
本来なら「感染状況を発表した。」または「詳細を発表した」で「感染状況を」「詳細を」があるはずですが、「新聞記事」「ネットニュース記事」ではよく省かれる要素になっています。
毎日同じような文章を書いているので「もういいかげんわかるだろう」という手抜きですね。
あえて省いて「発表をした」の形を「発表した」にしたという解釈もありえます。
Why(なぜ・どうして)
例文のWhyも「書かれていない」のです。
「なぜ」発表したのか。報道機関がうるさいから。なんて「新聞記事」「ネットニュース記事」自身は書けませんよね。
How(どのように)
これも「東京都庁のWebページで発表」なのか「記者室内の電光掲示板で発表」なのか「報道機関へのメーリングリストで発表」なのかわかりません。
毎日報道に接しますが、東京都がどのような形で発表して、マスコミがどのように情報を入手しているのかはわからないのです。
こちらははっきりと「東京都庁のWebページで」ときちんと書くべきでしょう。毎日同じ報道をしているから省いたのでしょうか。それだとただの手抜きですね。
毎日「新聞記事」「ネットニュース記事」を読むような暇人は今どきいません。すでに新型コロナウイルス感染症に罹患している人は時間が有り余っているでしょう。しかし罹患した人はこれからどれだけ感染が広がろうと知ったことではありません。自分がカウントされているかくらいは気になるでしょうけど。
このあたりも報道機関は横着をせずに記載してほしい部分です。
報告文なのに5W1Hを満たしていない
例文の「新聞記事」「ネットニュース記事」は「5W1H」を満たしていませんでしたよね。最近の「記事」は「5W1H」を完備していないものが多くなりました。
毎日報道していれば「単調でつまらない」と思って手を抜いてしまうのでしょう。
おそらく「プログ」全盛時代の名残です。
毎日書いているから、これで伝わるよね」という共通認識を持っているような錯覚に陥ります。
まるで本コラムのようですね。
「一三〇〇日超連続投稿」なんてしていると、絶対にどこかでかぶります。かぶっても書いている本人は気づかないのです。
しかし小説でこれはいけません。小説だからこそ、きちんと「5W1H」を示さなければ読み手に正確なイメージが伝わらないのです。
とくにライトノベルは書き手のイメージだけが先行してしまいがち。実際に文章として書かれていない要素が多すぎるのです。
書き手にはありあまる想像力があります。しかしそれを読み手へ伝えきれていないのです。
そこで書き手が読み手と「認識」を共有するガイドラインが「5W1H」というわけ。
「記事」が削ぎ落とした、顧みられない「5W1H」が小説で復権するのです。
今一度「170.再考篇:5W1H」へ立ち返り、文章の基礎を固めてくださいませ。
最後に
今回は「報告文:5W1Hにも綻びが」について述べました。
もはや「新聞記事」「ネットニュース記事」では「5W1H」を守らない文章が当たり前となりました。
しかし「5W1H」が完備されていれば、読み手と情報を共有できる、「共通認識」を持てる。
創作文である小説では、読み手と「共通認識」を持つために「5W1H」がガイドラインとして便利なのです。
もちろん一文で完備しろというわけではありません。
シーンの序盤に揃っていればよい、くらいのルーズさで結構です。
「なにが伝わっていないか」を知る目安として「5W1H」は今でも有効に機能しています。
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