1394.構文篇:意見文:小論文・梗概の書き方

 今回は「意見文」についてです。

 聞き慣れない言葉だと思います。要は「小論文」「論文」のような「書き手の主張を書いた文章」です。

 小説には関係ない、とは思わないでください。

「小説賞・新人賞」を左右する「梗概」で必要になります。





意見文:小論文・梗概の書き方


 ある問題についての意見を書くのが「意見文」です。

 本コラムは、その大半で私が小説を書くときに「こうしたほうがよかった」ケーススタディーを集めたもの。それに賛成である箇所があれば参考にしていただきたいだけです。

 ひとつの問題を取り上げ、その「私なりの意見」を述べています。

 意見文に必要なのは「根拠」です。「AがBだから、Aは正しい」「AがCでないから、Aは間違い」と「根拠」を立てて主張する必要があります。




小論文・論文は意見文

「小論文」「論文」を書く目的はなんでしょうか。

 あなたの「意見」を述べるためですよね。あなたの判断を書く文章。だから「小論文」「論文」は意見文なのです。

 もし「意見」を書かず「根拠」だけで文章に仕立てたら。

 それは「小論文」「論文」ではなく、「報告文」「ルポルタージュ」の類いになります。

 新聞記事は記者の「意見」を交えず、客観的な視点からのみ書かれるべきものです。もちろん新聞にも「コラム」や「社説」など筆者の「意見」を書く欄はあります。


 最近ではお笑い芸人アンジャッシュの渡部建氏の不倫や多目的トイレ使用問題を報じた「文春砲」が記憶に新しいですね。『週刊文春』は記者の実名併記で文責を負わせています。そして対象の醜聞を大々的に取り上げてスクープ。そうして『週刊文春』の売り上げを増やすのです。時代が違えば、脅しのネタとして対象にまとわりついて寄生し、金品を巻き上げる「ヤクザ者」と大差なし。

 海外では高職者のプライベートの不倫など、報道しても謝罪までは要求しません。スクープした記者の名前が売れるだけで、対象の人生を絶つような謝罪に追い込むマネはしないのです。

 一度あればもう一度ある。二度あることは三度ある。

 それを狙うのが記者の役割です。

 アメリカの大物俳優や大物映画監督などが醜聞を轟かせても、彼ら彼女らはけっして謝りません。

 自由恋愛の国・フランスやイタリアなんて醜聞はむしろ望むところです。綺麗な女性を見たら声かけしないほうが問題とさえ思われています。

 そもそも渡部建氏の行為は謝罪に値するのでしょうか。彼はなにか法律を犯しましたか。法を犯したから謝罪する。これは世界中で見られます。

 しかし彼は不倫をしただけです。フランスやイタリアでは話題にすらなりません。ごく日常だからです。

 また多目的トイレを不埒なことに使ったのは倫理モラル的には問題ですが、倫理モラルは法律ではありません。倫理的な問題は法律では解決しないのです。倫理的な謝罪会見を「吊し上げの場」としたマスコミが悪いとさえ私は思います。

 マスコミは、新型コロナウイルス感染症の蔓延で自由な活動を制限されていたため、今回の醜聞が極上のネタに見えたのでしょうね。それで公開処刑などという私刑リンチに打って出た。そう考えると、今回の渡部建氏の謝罪会見で本当に悪いのはマスコミのほうです。

 だから国民から「マスゴミ」などと揶揄され、信用を失墜させているのがわからない。


 ここまで書いてきたのは私の「意見」です。「意見」だからこそ絶対の価値観があるわけではありません。

「意見」には「正しい」か「間違い」かを選ぶ権利が読み手にあります。

 しかし「新聞記事」のような「報告文」では「事実」のみを書いているので、「正しい」か「間違い」かを選ぶ権利が読み手にないのです。

 一種の「既得権益」となっている以上、一部の人を追い込むような報道が国民から「マスゴミ」扱いされるのも当然なのかもしれませんね。




意見文は主観的

 では「意見文」とはどのようなものでしょうか。

「最近凶悪犯罪が多い。」は「意見文」です。

「多い」と書いてありますが、その程度が示されていません。また「凶悪犯罪」はどの罪を指しているのかが不明です。だから主観から見た「意見」だと言えます。

「事実」を説明しようとすれば、「最近」は「今年は五年前と比べて」と書けば思惑が入らないですよね。「凶悪犯罪」も「殺人・死体遺棄・強盗・傷害の凶悪犯罪」と書けば範囲が限定されます。「多い」も思惑込みです。たとえば「三十パーセント増えている」なら数字が固定されます。

 以上をまとめた「今年は五年前と比べて殺人・死体遺棄・強盗・傷害の凶悪犯罪が三十パーセント増えている。」はカッチリとした「事実」を説明している文です。どこにも「意見」が入っていません。

「小論文」はこのような「事実」を書き連ねて「結論」を導き出すものと一般には理解されています。

「意見」などどこにもない。と思いがちですが、そもそも「小論文」や「論文」は、先に書き手の「意見」を述べて、その裏付けとなる「事実」をつらつらと書いたものです。

 だから「意見文」は、まず書き手の「意見」を述べてから論を進めなければなりません。




序論・本論・結論ではなく

 文章の三部構成として「序論・本論・結論」があります。「小論文」も起承転結のようなひねりを入れずに「序論・本論・結論」で書くべきだとされているのです。

 しかし「小論文」の書き方を説いた書籍には「まず結論を出せ」と書かれていますよね。

「まず結論を出せ」、実は「先に意見を書け」が正しいのです。

 書き手の「意見」を先に書きます。そして「意見」の裏づけをしながら「結論」へ運ぶのです。

 つまり実は「小論文の書き方」は三部構成ではない。「意見・序論・本論・結論」の四部構成なのです。

「最近凶悪事件が多い。」とまず「意見」を述べます。

 そこから「令和二年の犯罪白書によると、〜」と話を進め、「なぜ最近凶悪事件が多いのだろうか」と事実を集めて補強し、だから「今年は五年前と比べて殺人・死体遺棄・強盗・傷害の凶悪犯罪が三十パーセント増えている。」と綺麗に「結論」まで持ってこれます。

「意見」を「事実」に直せば「結論」になるのです。

 つまり「意見」を述べて、それがいかにして「事実」なのかを書いたものが「小論文」「論文」になります。

 科学の「論文」も数学の「論文」もまったく同様です。




まず意見で取捨選択しやすくなる

 先に「意見」を書けば、読み手の時間的リソースは奪いません。

「最近凶悪事件が多い。」と書いてあれば、社会問題を取り上げていますから、科学や文学を専攻する人は読まなくてよい文章だとすぐにわかりますよね。

 また社会問題を取り上げた「小論文」「論文」であっても「凶悪事件」について知りたくない人は読み飛ばせるのです。

「意見」があるから、そこで読み飛ばすか判断できます。

 もし冒頭に「意見」が書かれていなかったら。

 読み手は飛ばしようもないのです。

 小説投稿サイトの「小説賞・新人賞」へ応募する作品においても「梗概こうがい」を必ずつけるように求められています。

「梗概」とはいわゆる「あらすじ」のことです。

 普通「あらすじ」は「これは異世界を舞台にした勇者と魔王の物語です。」とは書きません。しかし「梗概」には真っ先に「これは異世界を舞台にした勇者と魔王の物語です。」のような「意見」を書く必要があります。

 これがなければ選考さんは把握するのに一読する必要があり、そのうえでチェックすると二度読まなければならなくなるのです。選考さんにやさしくありませんよね。だからそういう「梗概」を書いた作品は、それだけの理由で落とされるのです。

「意見文」は「小論文」「論文」の形をしていますが、「小説賞・新人賞」への応募作の「梗概」もまた「意見文」でなければならない。

 プロの書き手は「小説が書ける」だけでは務まりません。「PRがうまい」が最低条件です。そもそも「PRがうまけ」れば、多くの読み手を獲得できますから閲覧数もブックマーク数も多くなって当たり前。とくに『カクヨム』のように「読み手による一次選考」の形をとる「小説賞・新人賞」であれば「PRがうまい」と、かなり得をします。

「衆目を集める」作品は、そもそも「キャッチコピー」すら名文です。

「キャッチコピー」で「こんな物語ですよ」とアピールできなければ興味を惹けませんからね。興味を持つ読み手が多ければ、そのうちの何割が実際に読んだとしてもそれなりの人数を確保できます。興味の湧かない作品は誰にも読まれません。

「PRがうまい」、「キャッチコピー」でアピールできる。

 いずれも必要なのは「意見文」です。

 小説を「論理ロジック」ではなく「主張」でアピールできるかどうか。

 もちろんアピール下手な「プロの書き手」もいらっしゃいます。そういう場合は担当編集さんがアピール上手なのです。

 しかし「アマチュアの書き手」にはそんな有能な人は付いていません。自分でアピールできなければ、どんな名作も沈んでしまいます。

「キャッチコピー」が付けられる小説投稿サイト「カクヨム」なら、「キャッチコピー」を真っ先に凝りましょう。もし付けられなければその次である「タイトル」「あらすじ」を工夫してください。

「小説賞・新人賞」へ応募するときに「梗概」を求められます。その際、真っ先に「どんな物語か」を書かなければなりません。選考さんにやさしい文章だけが正当に読まれます。とくに読み手が「一次選考」を担っている『カクヨム』の「小説賞・新人賞」では、「キャッチコピー」「タイトル」「あらすじ」に凝らなければなりません。

「小説賞・新人賞」によっては「あらすじ」欄に「梗概」を書くように指定してあるものもあります。その場合は「あらすじ」で「ネタバレ」したくなくても、必ず「ネタバレ」させてください。

「梗概」は選考をしやすくするために書くのです。「ネタバレ」しただけで面白くなくなるような物語では、選考さんすらうならせられません。





最後に

 今回は「意見文:小論文・梗概の書き方」について述べました。

「小論文」「論文」は冒頭で盛大に「ネタバレ」を行ないます。それでも正当に評価されるのです。

「小説」の「梗概」も同じ「意見文」。盛大に「ネタバレ」してから「面白いかつまらないか」判定してもらいましょう。

「梗概」は「物語の縮図」なのです。ここで「ネタバレ」できない作品なんて、しょせんつまらないと自ら主張しているようなもの。

 怖がらず、盛大に「ネタバレ」した「梗概」を書いてください。



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