1388.構文篇:表記:読み手層で漢字かなを使い分ける
今回は「対象年齢による漢字とひらがなの書き分け」についてです。
基本的に読み手が読める漢字を用いましょう。
ただし「中二病」は読めないものを読もうとしてしまう習性を持っています。
表記:読み手層で漢字かなを使い分ける
書き手は自分の小説にどんな漢字を書いてもかまわない、それだけの権限があります。
しかし読み手は、自分が読めない漢字のある作品は読みさして書棚に戻すのです。
いくら書き手が書きたいように書いたとしても、それが読み手にすべて受け入れられるわけではありません。
絵本は小学校低学年までに習う漢字に総ルビを振る
絵本は主に未就学児や小学校低学年までが読み手です。
そんな子どもたちに「この字わかんない」「この言葉の意味わかんない」と思われたら、そこで飽きられてしまいます。
だから想定する読み手がちょっと背伸びすれば読める漢字や、意味のわかる言葉で書かないとそもそも読まれないのです。
絵本に「矍鑠たる老人」と書いてあったら、あなたはどうしますか。
おそらく大人だって読めませんし、意味がわからないはずです。それでも読もうと努力するでしょうか。
しませんよね。
これと同じことが絵本でも起こるのです。
「
だから想定する読み手がちょっと背伸びすれば読める漢字で、意味のわかる言葉で書く必要があるのです。
ちなみに先ほどの「矍鑠たる老人」は「
こんな漢字、読めるほうがどうかしています。保育園児や幼稚園児、小学校低学年が読めるはずも意味がわかろうはずもありません。
用字の基本は「想定する読み手が読めて、意味のわかる言葉で書く」です。
読めもしない、またはルビを振ってあっても意味のわからない言葉なんて、誰が辞書を引いてまで読もうとしますか。手間がかかるだけ時間の無駄です。
どうしても使いたいのなら、本文中に意味を埋め込んでください。
それでも、使えるのは小学校低学年までに習う漢字と言葉だけです。小学校高学年が習うような難しい漢字や言葉は使わないでください。
絵本を読みながら辞書を引く子どもはどこにもいないのです。
ただし、辞書に当たってでも「意味を知りたい」と思わせるくらい読み手を吸引する作品であれば、小学校高学年に習う漢字や言葉だったとしても、子どもは自ら辞書を引きます。
子どもは探求心が旺盛なのです。面白く読み進めてきて、ちょっと難しい言葉に出会ったら、面白さの追求で辞書を引きます。それは苦ではないのです。
これは一種の賭け。作品に相当自信を持っていないとできない芸当です。
つまり「ちょっと読めない漢字で意味のわからない言葉」を書いてよいのは、売れっ子作家だけ。みんなが「面白い」と絶賛するような作品なら、子どもは辞書を引いてでも読み終えようとします。
児童文学は小学校で習う漢字にルビを振る
小学生全般を対象とした児童文学では、基本的に使える漢字は小学六年までで習う漢字だけです。用いる言葉も小学校で習う範囲に絞りましょう。
それも高学年で習う漢字には「ルビを振る」ようにしてください。
児童文学においては、小学校で習わない言葉と漢字は使わない。
逆に「小学校で習う漢字は極力漢字で書く」ようにしましょう。
でも「抽象的な名詞」と「補助動詞」は基本ひらがな表記です。
「この処誰かにツケられて居るような……」
「処」が「抽象的な名詞」で、「居る」で「補助動詞」です。
このふたつが漢字だと、ちょっと読みにくくなります。
あと忘れがちなのが「当て字」です。「当て字」は基本的にひらがなで書きましょう。埋もれてしまう場合はカタカナでもかまいません。カタカナは表音文字なので用法がひらがなとは少し異なります。また「我武者羅」と書いて「がむしゃら」と読ませる類いは児童文学では禁止です。
習うとしても「無茶を言うな」は「当て字」なので「むちゃを言うな」か「ムチャを言うな」と書きましょう。「茶が無い」わけではありませんからね。「そんな無茶苦茶な」の「苦茶」も「当て字」ですから「むちゃくちゃ」「ムチャクチャ」と書くべきです。
似た言葉に「無理」がありますが、こちらは「
これって「当て字」かもと思ったら、一度辞書を引いてみましょう。
ライトノベルは高校生までに習う漢字で
ライトノベルは基本的に中高生が主要な読み手層なので、高校生までに習う漢字を用いてください。
中学一年生が高校で習う漢字を読めるのか。という問題もあります。
しかしいわゆる「中二病」になると、読めそうで読めないくらいが妙に刺さるのです。
「
「
「
意外に思うかもしれませんが「乞」「匂」「爪」「牙」「丼」「叱」も高校生で習う漢字なのですが、「中二病」なら難なく読めます。
いちおう「ルビ」で保険をかけておくとよいかもしれませんね。
大学に入ってから習う「
ライトノベルでは「いかに中二病に引っかかるか」を基準にして漢字や言葉を選択してください。それこそ魔法の「呪文」には大学漢字を用いると引っかかりやすいのでオススメです。
文学小説ではルビを振らない
文学小説には基本的に「ルビ」を振らないでください。
一般の新聞にはルビなんて振っていませんよね。文学小説は新聞連載が多いため、ルビを振りたくても振れないのです。だからルビが必要となる漢字や言葉は使わないのが習わしになっています。
なので文学小説は「常用漢字」だけを用いている作品が多い。新聞での用字用例を考えても、「常用漢字」か否かがひとつの基準です。
文学小説を書くときに「これは常用漢字じゃないから言い換えないと」と思えるかどうか。それが文学小説を書けるかどうかの分水嶺です。
しかし上記したような「獅子」や「逼迫」あたりはルビを振らずともそのまま書いてかまいません。変えようがない漢字や言葉もありますからね。
他に言い換えられるのなら言い換え、言い換えられないときは避けることなく堂々と使いましよう。その代わり読めなくても「意味」がわかるように補足はしておくべきです。
たとえば大学で習う「吠える」ですが、他にも常用漢字外で「咆える」「吼える」「吽る」と書いて「ほえる」と読む言葉があります。それぞれで意味合いが微妙に異なるのです。その違いがわからないのなら「吠える」一本でもかまいません。そもそも他はなかなか見かけませんので。
最後に
今回は「表記:読み手層で漢字かなを使い分ける」について述べました。
対象年齢が下がれば下がるほど漢字が減っていきます。
だからと言って対象年齢が上がるほど漢字が増えるわけではありません。「常用漢字」がひとつの壁となるのです。
ですがライトノベルは「いかに中二病に刺さるか」がキモであるため、比較的難しい漢字がなんの造作もなく書かれている場合が多い。しかし読めなければ意味がないので「ルビ」は振ってくださいね。
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