1379.物語篇:物語123.異世界転移

 今回は「異世界転移」です。

 主に「異世界ファンタジー」を取り扱っていますが、「異世界SF」でもよいと思います。

 いよいよ「物語篇」も明日で終わりです。私の中で100以上の物語があったことに驚きました。まぁいくらかかぶっているものもありますが。

 問題はテンプレートをいかに掛け算できるか。

「異世界転移」に「勇者と魔王」をかけ合わせると王道になりますからね。意外な組み合わせも考えてみると頭の体操になってよいですね。





物語123.異世界転移


 なにかの出来事によって現実世界人が異世界へ飛ばされる物語です。

 ではどんな出来事が考えられるでしょうか。

 偶然の事故で飛ばされてしまうパターン。

 異世界側から召喚されるパターン。

 実は異世界人だったパターン。

 異世界へやってくるときに特殊な能力を授かるパターン。

 こういった出来事があると、異世界での活躍の仕方が変わってきます。




異世界転移の有利さ

 異世界は現実世界とは当然異なるため、どんな世界なのかを読み手に説明しなければなりません。

 しかし単なる「異世界ファンタジー」では、主人公が異世界人なので見る情報、聞く情報はすべて主人公にとって「当たり前」なのです。だから主人公にとって今さら説明しなくてもわかりきっているので書けないものが多くなります。書くとかえって不自然です。だから「異世界ファンタジー」は難易度が高い。

 その点「異世界転移ファンタジー」は、現実世界人が異世界へやってくるのです。すべてが初めて見聞きするものなので、現実世界の情報とリンクさせながら逐一説明していけます。読み手もその異世界は初めて見るので、主人公とまったく同じ状況となり、説明を読まされても抵抗なく読み進められるのです。

 この「異世界をどれだけ自然に説明できるのか」。主人公にもすべて初めて体験するものなので、五感をフル活用した描写ができます。

 これが「異世界転移ファンタジー」最大の利点です。

「異世界転移ファンタジー」とは、現実世界人の常識を持った主人公による「異世界ファンタジー」なのです。




現実世界の技術や知識で無双する

「異世界転移ファンタジー」では、現実世界人が主人公なので「現実世界」の技術や知識を異世界に持ち込めます。

「剣と魔法のファンタジー」世界に「火薬」の知識を持ち込んで銃火器を生み出すとか、「灌漑」の知識を持ち込んで穀物の収穫量を飛躍的に高めるとか。

 現実世界のどんな技術や知識を持ち込むと面白い物語になるのか。

 これが「異世界転移ファンタジー」の面白さを左右します。

「剣術」「拳法」「柔道」などの戦闘術を持ち込めば、無双だって可能です。

 しかし「異世界ファンタジー」に「柔道」を持ち込んだだけで無双できるかどうかはかなり怪しい。

「柔道」は相手を制する技術であって倒す技術ではないからです。

 もし「中国拳法」や「空手」などの打撃系であれば、最初から無双できます。

 持ち込む技術の違いで無双できるかどうかがある程度決まってしまうのです。

 それでも「柔道」で無双したいのなら、「異世界転移」したときになにかを授からなければなりません。神様からかもしれませんし天使からかもしれません。また「異世界転移」を経験して技術になにがしかの「力」が付与されるなんてのもありえます。

「異世界転移ファンタジー」のよいところは、現実世界のどんな技術や知識を持ち込んでも「無双」させられる点です。もちろん前述したように「無双」には向かない技術や知識もあります。それでもなにがしかの理由付けをすれば、投げ技・絞め技さえも「一撃必殺」にできるのです。




もし同じ技術や知識を活かした先発がいたら

 小説投稿サイト『小説家になろう』には、現実世界のさまざまな技術や知識で主人公が活躍する「異世界転移」ものが揃っています。

 だからどうしても誰かが書いた作品と同じような小説を書いてしまいがちです。

 そこでまず「異世界転移 柔道」のような検索を行なって、同じ技術や知識を利用している作品がないかどうか確認してください。

 ヒットしたらそれらを読んで、それらとは異なる作品を目指しましょう。まったく同じような作品であれば、あなたがあえて書かなくても読み手はすでに検索ヒットした作品を堪能している可能性があります。すると「この作品は○○さんのあの作品のパクリ」と認定されかねません。

 後発はつねに先発とかぶらない物語を書かなければならないのです。

 ですが、どうしても同じような物語を書きたい場合もあります。そうであれば、小説投稿サイト自体を変えてください。

『小説家になろう』には類例があっても、『エブリスタ』にはなかった。『カクヨム』にはなかった。それなら投稿先を『エブリスタ』や『カクヨム』にすればよいのです。なにも『小説家になろう』にこだわる必要はありません。

 しかし多くの書き手が同じことを考えていますから、たいてい『エブリスタ』や『カクヨム』などでも類例は存在するんですよね。

 そういう場合は、投稿数がきわめて少ない『pixiv小説』か、今後新規に開設される小説投稿サイトへ投稿するのも一手です。

 まずは書きたいように書いて保管しておき、新しい「小説投稿サイト」が開設されたら「いの一番」に投稿してしまえばよいでしょう。

 これなら類例がない状態で投稿できるため、先発の優位さを活かせます。

『小説家になろう』は歴史があるぶん、どうしても「異世界転移」で同じ技術や知識を活かす物語がすでに投稿されているものです。「先行者利益」がある以上、後発は同じ技術や知識を活かす物語で正しい評価は得られません。だから小説投稿サイトを変えるのです。自らが「先行者利益」を得られる状況を確認して、一気に投稿してください。




書き手自身が機転の利くタイプならなおよし

「異世界転移」は読み手が最も主人公に感情移入できる物語です。

 没入感において右に出るジャンルはありません。

 とくに多くの読み手が持っている技術や知識を使って「無双」する場合、「自分もこんな世界に行きたいなぁ」と思ってくれます。

「異世界転移」には読み手の願望を叶えてくれる「夢日記」の側面があるのです。

 平凡で退屈な日常を過ごしている読み手に、つかの間の「夢の実現」が提供できる。

 それが「異世界転移」最大の強みです。

 だから「異世界転移」ものは基本的に主人公がピンチに陥りません。

 ピンチを現実世界の技術や知識で華麗に解決するから、「異世界転移」は人気があるのです。

 そのため主人公は機転が利くタイプが多いのも「異世界転移」ものの特徴になります。

 追い込まれるより早く解決してしまう。だから読んでいて爽快感を抱けるのです。

「異世界転移」は書き手自身が「機転の利く」タイプだと書きやすい。書き手以上に機転の利く主人公は絶対に書けません。

 勉強でも学校で習った「基礎」だけしか身につけていないよりも、それをどう現実に活かしていくか「応用」がとてもたいせつです。

 もし「応用」が苦手で「機転が利かない」方は「異世界転移」はあきらめたほうがよいでしょう。そういう方は純粋な「異世界ファンタジー」を書いたほうが格段にウケるはずですよ。





最後に

 今回は「異世界転移」について述べました。

「異世界転移」は異世界に現実世界の技術や知識を持ち込める点で有利です。

 それに現実世界人の主人公からは「異世界」は初めて見るところので物語世界を説明しやすい利点もあります。

 しかし書き手に「機転」が求められるので、「応用」が苦手な方にはオススメできない物語です。

 どんな物語であっても技術や知識は求められますが、「異世界転移」ではそれを「応用」するだけの「機転」がなければ書けません。機転が利かなくても書けはするでしょう。でも面白くならないのです。

 書き手は本人だけでは「機転が利く」タイプかどうかはわかりづらいと思います。

 そんな方には「ボールペンひとつでどんなことができるか」を考えていただきたい。

 これで何通りの「応用」が生まれるかで「機転が利く」タイプかどうかがわかります。

「異世界転移」では読み手よりも「機転の利く」主人公でなければならないのです。



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