1370.物語篇:物語114.自分探しと居場所探し
今回は「自分探し」と「居場所探し」についてです。
本当の自分とはどんな人物なのか。実力はどの程度のものなのか。
環境を変えたらもっと自分の才能を引き出せるはずだ。
そう考える方が多いと思います。
物語114.自分探しと居場所探し
本当の自分はこんなものじゃない。
そう思う物語には二種類あります。
自分は本当はこんな人物なんだ。と、もっと自分を引き出せる場所があるはずだ。
これを「自分探し」と「居場所探し」と呼ぶのですが、根本では「本当の自分を発揮したい」願望がそういったものを求めるのです。
真の実力を発揮するために
「自分には誰にも知られていない力がある」「自分でも気づいていない力がある」
中二病にとてもよく刺さる概念です。
「自分は世界一の存在なんだ」「誰にも負けないだけの才能があるんだ」
己の存在は唯一無二。これは事実です。
しかし己の才能は唯一無二。これは自惚れです。
真の実力がどこまであるかは、実践して初めてわかります。
たとえばサッカーのドリブルには絶対の自信がある。その自信は揺らぎません。
ですが世界で通用するかは実践するまでわからない。でも自分の実力は過大評価しがちです。
だから本人も気づかない未知なる力、真の実力が必ずあるはずだ。という考えに囚われてしまうのです。
もしあなたに「真の実力」があるのなら、その「才能の片鱗」は今まで何度だって見られたはず。それなのにそんなものは気配すらなかった。それでは本人の思っているような「真の実力」なんていっさいありません。
なんてことないところで「才能の片鱗」が見えるから、指導者も才能を買うのです。
プロ野球のドラフト会議を見るとよくわかります。
その時点では未知数な才能を十二球団がいっせいに青田買いするのです。
判断基準は「大学日本一」かもしれませんし「甲子園優勝の立役者」かもしれません。
そういった実績を持つ選手はドラフト一位指名されやすく、たいていはくじ引きによって交渉権を得る球団が決まります。
では「ハズレ一位」はどのようにして決めるのでしょうか。めぼしい実績のある選手はたいてい一位指名で出尽くします。だから球団は才能があると信じて決めるしかないのです。
そのときの基準がまさに「才能の片鱗」を見た選手であること。
確かにその年のドラフト会議の主役は「一位指名」の選手です。でも活躍するかどうかは「ハズレ一位」の選手も等しく見ておきましょう。意外と「ハズレ一位」やドラフト下位の選手のほうがプロでは活躍するものです。それは「一位指名」の選手は、日本一になったその瞬間がピークである可能性もあるから。つまり「才能」のすべてを使い尽くしてしまったおそれがあります。しかし「ハズレ一位」やドラフト下位の選手は「才能の片鱗」だけを買われるわけですから、まさに玉石混淆。「一位指名」で高い契約金と年俸をもらいながら、一軍で一勝もできずに消えていく投手も数多くいます。
「才能の片鱗」を見た「ハズレ一位」は、呼び名こそ「ハズレ一位」ですが実力のある人物である場合が多いのです。
「才能の片鱗」が本物か偽物かは磨けばすぐにわかります。
「一位指名」はネームバリューに左右されやすく、本物か偽物かよりも「集客力があるか」が基準になりやすいのです。だから実力よりも客寄せパンダをとったほうが喜ぶ球団もあります。北海道日本ハムファイターズの「ハンカチ王子」がよい例です。
集客力を求める北海道日本ハムファイターズであっても「才能の片鱗」に賭けたい年もあります。今ではメジャーリーグでも活躍するダルビッシュ有投手や大谷翔平投手はその最たるものでしょう。他にも中田翔選手も今では不動の四番です。とくに「名伯楽」と名高い栗山英樹監督は「才能の片鱗」を見極めるのがとてもうまい。まぁ「ハンカチ王子」の処遇はどうにかしたほうがよいのですが。
このように「真の実力」があるのなら、誰かが「才能の片鱗」を見つけています。
「才能の片鱗」も見せないのに「真の実力」がある可能性はまずないのです。
環境を変えれば才能が活かせるのに
中二病に刺さる概念のひとつに「今の環境では実力が百%発揮できない」があります。
自分には実力があるのに、今の環境のせいでじゅうぶんに発揮できない。
だから環境さえ変えればもっとすごい実力が発揮できるのに。
言うのは簡単です。しかし実際に環境が変われば実力を発揮できるものでしょうか。
サッカーでスペインのリーガ・エスパニョーラの名門FCバルセロナ。その下部組織カンテラ出身の久保建英選手はFCバルセロナに入ると思われましたが、年齢の事情によりまず日本のFC東京に入団します。そこで活躍を見せた久保建英選手は当初FCバルセロナに戻ると誰もが思っていました。しかし同じくスペインの名門レアル・マドリードに入団し、現在マジョルカにレンタル移籍しています。
まことしやかに囁かれるところでは、オオゾラツバサを二度もとられてたまるかとレアル・マドリード幹部が考えたとされている。マンガの高橋陽一氏『キャプテン翼』の主人公・大空翼はFCバルセロナに入団しています。だから才能のある久保建英選手までFCバルセロナにとられてたまるか、というわけです。
そうまでして獲った久保建英選手はレアル・マドリードの下部組織に入団後すぐにマジョルカへレンタル移籍しています。これはいきなりトップのレアル・マドリードへ環境を変えてもついてこられないだろうという監督・コーチ陣の判断です。しかしJリーグよりも実力が求められるスペインリーグですから、まさに「今の環境(JリーグのFC東京)では実力が百%発揮できない」ための移籍とレンタル移籍になります。
環境を変え、実力が明らかになるにつれ、一部リーグのレアル・マドリードへ昇格するのです。それができて初めて「今の環境では実力が百%発揮できない」と言う資格が生まれます。
そうなのです。「今の環境」にいながら「実力が発揮できない」は間違いなのです。
こちらから自発的に環境を変え、新しい環境で実力を発揮してこそ、「あのときの環境では実力が百%発揮できなかった」と言えます。
自ら環境を変えるでもなく、今の環境のままで「今の環境が駄目なんだ」と言っても「負け惜しみ」でしかないのです。
本当に「今の環境が駄目なんだ」と思っているのなら、今すぐ環境を変えましょう。変えた結果実力が発揮できたら「あのときの環境では実力が百%発揮できなかった」と言えます。もし同じレベルの仕事しかできないのであれば、それは「環境」のせいではなく「あなたが考えていたよりも実力が及んでいない」のです。
そこまで考えたうえで、それでも「実力を発揮できない」と考えているのなら、潔く環境を変えてみましょう。もし変えたのに成果が出なければ、それがあなたの「実力」です。素直に受け入れて、修練のスタート地点としましょう。修練もせずに実力が発揮できるほど、世の中は甘くはないのです。
最後に
今回は「物語114.自分探しと居場所探し」について述べました。
「自分の適性」を探すのと、「自分の才能を活かす環境」を探すのと。社会で生きているかぎり、このふたつはつねに探し続けるべきです。
あなたの適性が本当にその仕事をするのに向いているのか。あなたの実力は本当に今の環境で発揮できているのか。それがわからないのは不幸です。
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