1363.物語篇:物語107.三角関係

 物語の中でも面白さを出す鉄板の展開があります。

 それが今回のお題「三角関係」。

 あなたが好きなあの作品も、ひょっとしたら「三角関係」を内包しているかもしれません。

 ちょっと調べてみてくださいね。





物語107.三角関係


 前回スタジオぬえ『超時空要塞マクロス』を紹介した際、物語に「三角関係」が入っていたので人気を博した、と書きました。

 そもそも恋愛物語は一対一の純愛ものにはほとんどなりません。たいていが男性ひとりに女性ふたり、もしくは女性ひとりに男性ふたりで構成されています。この人間関係を相関図に表したとき「三角形」になることから「三角関係」と呼ばれるようになったのです。




恋愛ものの王道

 恋愛ものは基本的に「三角関係」が主軸です。

 どちらの異性を選択するか。その悩ましい感情の移ろいが、多くの読み手を魅了します。

 最近大人気のうちに連載が終了し、テレビアニメも放送を終えた渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は「三角関係」を軸に据えた「正統派の三角関係」物語でした。「青春ラブコメ」としては「まちがっている。」としても、物語の軸である「三角関係」はブレていません。だから主人公・比企谷八幡が、ヒロインの雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣のどちらを選ぶのかでハラハラ・ドキドキしながら展開を見守っていましたよね。

「三角関係」は基本的に仲よしグループに発展しやすい。そうなるとさらに「三角関係」がもつれる原因ともなります。

 私が最初に触れた「三角関係」の物語は、マンガのまつもと泉氏『きまぐれオレンジ☆ロード』でした。それまで『週刊少年ジャンプ』は王道のバトルマンガとスポーツマンガを目当てに読んでいましたが、『きまぐれオレンジ☆ロード』の登場により恋愛ものにも興味を持つようになったのです。しかも世は「超能力」ブームの真っ只中。主人公も「超能力者」で時代ともマッチしていました。そんな『きまぐれオレンジ☆ロード』は主人公・春日恭介がとある町に引っ越してきた当日から物語が始まります。新しく住むことになるマンションへ向かう石段を数えながら登っていくと、赤い麦わら帽子が飛んでくる。恭介はちょっとした超能力を使ってそれをキャッチします。そこで持ち主の鮎川まどかと出会うのです。そのときのまどかはとても素直でトゲのない人物でした。しかし恭介が学校に初登校したとき、まどかが不良であると知ります。そして体育館でまどかのことを考えながら、バスケットボールを遠方から超能力を使ってバスケットリングに放り込むのです。その場面を後輩の檜山ひかるに偶然見られてしまい、ひかるから猛アタックを受けるようになります。しかもひかるはまどかの妹のような存在であるとわかり、邪険にするわけにもいかなくなるのです。まどかを選びたい恭介ですが、ひかるを無下にもできません。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』よりもはるか前の作品ですが、SF「青春ラブコメ」の王道と言ってよいでしょう。




バトルものでも三角関係は必要

 バトルものの物語にも「三角関係」は必要です。

 もちろん純粋にバトル描写を読ませたいのであれば、一対一の純愛物語にしたほうが意識が分散しなくてよくなります。

 もし物語そのものの魅力を高めたければ、バトルものでも「三角関係」を持ち込むべきです。

 賀東招二氏『フルメタル・パニック!』では主人公・相良宗介が同級生の千鳥かなめの警護を秘密裡に行なう物語になっています。まぁ途中でバレるのですが。秘密組織ミスリルの作戦部西太平洋艦隊総司令官で、強襲揚陸潜水艦「トゥアハー・デ・ダナン」の艦長でもあるテレサ・テスタロッサも宗介のことを気にかけています。バトル小説でも書くのが難しく存在自体が珍しいロボットバトルものでもあり(前例は笹本祐一氏『ARIEL』以外に思いつきませんが、『機動戦士ガンダム』の元ネタとなったロバート・A・ハインライン氏『宇宙の戦士』が初出かもしれません)、物語の魅力を増すために意図的に「三角関係」を持ち込んだようです。その意図がうまくハマって『フルメタル・パニック!』はアニメ化を繰り返す名作ロボットバトルものとなりました。

 振り返れば富野由悠季氏『機動戦士ガンダム』もよくよく考えれば主人公アムロ・レイと宿敵シャア・アズナブルが「ニュータイプ」の少女ララァ・スンを巡るロボットバトルものと言えなくもありません。ですがララァの登場は物語の終盤なんですよね。それまで「三角関係」はなかったのです。

 その点『ガンダム』を超えるアニメとして企画製作されたスタジオぬえ『超時空要塞マクロス』は最初から「三角関係」を意識させる物語になっていました。「可変メカ」は男子にウケる要素ですが、「三角関係」は女性にもウケました。これにより、今までロボットバトルものでは珍しく女性ファンがついたのです。ロボットバトルものとしては東京ムービー新社『六神合体ゴッドマーズ』が多くの女性ファンを獲得しています。こちらは「三角関係」ではなく、主人公・明神タケル(マーズ)と双子の兄マーグとの関係が女性にウケたのです。同人誌やファンアートで『ゴッドマーズ』は一大勢力となったのです。それに比べると『マクロス』はそこまで熱狂的な女性ファンが作られていません。それでもアニメは当初二クール・二十六話の予定が一クール伸びて全三十六話になったのです。視聴率でもプラモデルなどの商業面でも大ヒットしました。そのため「超時空」シリーズが『超時空世紀オーガス』『超時空騎団サザンクロス』と三作続いて放送されたのです。ですが、新作ごとに視聴率は下がり続けて『サザンクロス』で打ち切りとなります。『オーガス』もそうなのですが「三角関係」のない物語では、他が同じ作品でも評価が低まってしまうのです。

 だからバトルものでも「三角関係」があれば女性にも訴求できる作品となります。

 ましてや恋愛ものなのに「三角関係」にならないなんてありえません。

 それほど「三角関係」が当たり前の創作界隈になっています。これからはどんな方向に進むかわかりません。一対一の「純愛」路線か、「四角関係」「五角関係」とどんどん人が増えるのか。

 ただ、人間が最も魅力を感じる数字が「3」なんですよね。だから「三角関係」に落ち着きそうな気もします。





最後に

 今回は「三角関係」について述べました。

「恋愛」ものの鉄板は「純愛」か「三角関係」です。バブル期には「不倫」ものが流行りましたから、この先どんな流行りになるかはわかりません。

 ですが新型コロナウイルス感染症の流行により、日本人の間では「絆」が見直されています。となれば「三角関係」の形をしていても、基本的には「本命」がいて結果結ばれる物語が受け入れられそうです。

 まさに『きまぐれオレンジ☆ロード』の恭介とまどかの関係です。どんなに三角関係が進んでも、「本命」は絶対に譲れない。

 今の方には「本妻」と呼んだほうがわかりやすいかな。



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