1347.物語篇:物語91.なぜ魔法は科学と相性が悪いのか

 今回は「魔法」について取り上げます。

 ライトノベルといえば「剣と魔法のファンタジー」という方も多いでしょう。

 ですがただ「魔法」を出すだけでは読まれる作品にはならないのです。





物語91.なぜ魔法は科学と相性が悪いのか


 一般的に科学と魔法は並び立ちません。しかし同時に書いてもかまわないのです。

 たとえばアニメ映画の宮崎駿氏『魔女の宅急便』を思い出してください。科学の先端である飛行船とほうきで飛ぶ魔女が共存する世界観でしたよね。

 このようにうまくバランスをとれれば名作に仕上がるものです。




科学と魔法は水と油

 科学にとって魔法は「論理破綻」しています。なんのエネルギー源も動力もなく、術式と呪文だけで現象が起こってしまうからです。

 逆に魔法にとって科学は「面倒くさい」ものです。材料を集めて、組み立てて、エネルギー源と動力を取りつけてようやく動作します。魔法では一瞬でできても、科学は理詰めで物理的に構築しなければ動かないのです。

 そこで「今の科学で魔法を生み出せないか」考えてみます。

 一見意味のないものに思えても、もし科学で魔法の原理を解明できたら、人類は大きな飛躍を遂げられます。それこそ「革命」です。

 自然に満ちた膨大なエネルギーを、電気に転換すれば電力不足には陥りません。どこでも火や水や風を起こせたら、生活が一変します。エアコンを使わず快適な室温に維持できるでしょうし、炎天下でも汗ひとつかかない快適な環境で野球ができます。

 一部、太陽光発電や洋上風力発電、水力発電、地熱発電といったものは現実にあるのです。しかしこれら再生可能エネルギーはいまだ不確実で、気象天候に大きく左右されています。

 それになんらかのエレメントの力を利用したものではなく、物理的に説明がつくものだけがエネルギー源。これでは「魔法」としては不じゅうぶんです。

 できれば万物に宿る「エーテル」や「マナ」を突き止め、それをエネルギー源にする動力を開発したいですね。そうすれば緑あふれる豊かな自然を再度取り戻す機会ともなるでしょう。地球温暖化を阻止するためにも、人類が突き止めなければならない課題なのかもしれません。




魔法に必要なもの

 魔法には物語映えするために必要なものがあります。

 たいていの魔法は「呪文」を必要とするのです。それも仰々しいほどの。「呪文」なしに魔法が発動してしまうと、なにが困るのでしょうか。

「中二病を刺激しない」のです。

 ライトノベルの主要な読み手層である中高生は、カッコいいまじないの言葉が読みたいのです。そして口に出したいのです。傍から見て痛い時期はカッコいい呪いの言葉がひじょうに心に刺さります。だから読み手を魅了してやまないのです。

 だから、いくら強い魔法使いでも「呪文」なしで魔法を発動させてはなりません。

 強ければ強いほど、カッコいい「呪文」は絶大な威力を発揮します。

 本来なら、強い魔法使いほど「呪文」なしで魔法を発動できるものです。それが強さの現れになります。

 新規アニメが放送開始した堀井雄二氏&三条陸氏&稲田浩司氏『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』でも、魔王ハドラーは強大な魔法をノンタイムで発動させられるくらいです。まぁそもそもこのマンガは「呪文」ではなく「魔法名」を唱えるだけで発動できるので、呪いの言葉で読み手を魅了できません。

 で秋田禎信秋田禎信はなぜ『ダイの大冒険』では呪いの言葉なしに多くの読み手を魅了したのでしょうか。そして新規アニメの放送が決まったのでしょうか。

 絵で、動画で、カッコいいエフェクトを伴って魔法が発動します。まさに映像として派手な効果の魔法が多いから「見ているだけでカッコいい」のです。

 しかし小説には映像は伴いません。だから小説では「中二病を刺激する」カッコいい「呪文」が欠かせないのです。そこでしかアピールできませんからね。

 最近新規アニメ化された作品として秋田禎信氏『魔術師オーフェン はぐれ旅』ではカッコいい「呪文」が唱えられていましたよね。あれも元は小説だったからです。

 実は日本の「剣と魔法のファンタジー」の祖のひとつである水野良氏『ロードス島戦記』にはカッコいい「呪文」は登場しません。しかしアニメ化された際は、ハイエルフのディードリットが精霊を呼び出すときにもカッコいい「呪文」を唱えましたし、魔術師のスレインもファイアーボールの魔法を使うときにカッコいい「呪文」を使っています。

 どうせ映像化される際に呪いの言葉が付けられるのなら、原作でもカッコいい「呪文」を書いたほうがウケがよくなるのです。

 しかもカッコいい呪文は文章が長くなります。それだけ文字数を使えるため、字数稼ぎにももってこいなのです。

 さぁ「剣と魔法のファンタジー」で「呪文」が必要な理由が見えてきましたね。

 需要と供給が見事にマッチしているのです。

「太陽に照らされし大いなる炎の精霊よ、大気の内よりわが剣に宿りてわが敵を焼き尽くさん。エンチャント・フレイム!」

 う〜ん。私には「中二病に刺さる」ような呪文は書けませんね。

 皆様もたくさんの「呪文」を開発してみてください。これが意外と苦労するのです。

 まず「魔法の仕組みがわかる」ように書かなければなりません。そして「中二病に刺さる」こと。そして適度に文字数を稼ぐこと。

 この三つが揃っているからこそ、カッコいい「呪文」が完成します。

 不断の努力で日々新しい「呪文」を最低でもひとつ作ってみましょう。数をこなさなければ「中二病に刺さる」呪いの言葉は書けません。

 皆様もぜひカッコいい「呪文」に挑戦してみてください。千本ノックのように、数をこなせば必ず身につくはずです。私は魔法のない「異世界ファンタジー」を目指しているので、カッコいい「呪文」のトレーニングをしてきませんでした。

 しかし「プロ」を目指すなら、カッコいい「呪文」のひとつやふたつ書けないなんて言っていられません。であればアマチュアの今のうちに千本ノックを始めるべきです。





最後に

 今回は「物語91.なぜ魔法は科学と相性が悪いのか」について述べました。

「魔法」は物理の理屈で説明がつく科学とは相性が悪いのです。

 そして「魔法」には「中二病に刺さる」呪いの言葉「呪文」が必須といえます。

「呪文」のカッコいい作品は、それだけで高く評価されるのです。

 誰もがつぶやいてしまいたくなるような「呪文」は大きな売りになります。

 カッコいい「呪文」が書けるように特訓しましょう。



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