1346.物語篇:物語90.科学と革命
科学をもとにした「SF」小説では、どれだけ独自色のある世界観が作れるかが受賞の鍵を握っています。
誰もが思いつく世界観では評価されないのです。
ではどうやって独自色のある世界観を作ればよいのでしょうか。
その秘訣が「革命」つまり「産業革命」です。
物語90.科学と革命
未来の|科学(サイエンス)は、今の世界では魔法のように映るものです。
三十年前に、誰がiPS細胞の登場を予期できたでしょうか。
もし概念だけでも存在したのなら、クローン人間や影武者のような使い方さえ思いついたかもしれません。
科学が発展した未来
現実の世界は「科学」が作り出しています。
構造計算をしなければビルディングも建てられず、原油を精製しなければポリエステルも作れず、ダムや河川拡幅による治水がなければ食べ物も安定供給できません。
すべて「科学」によって成り立っています。
となれば、現実世界は順当に進めば「科学」の発展した未来が待っているのです。
最先端の「科学」はコンピュータを始めとする「サイバー」分野なので、このままいけば「コンピュータ」の発展した未来が到来するでしょう。
しかし本当にそのまま進めばの話です。
たとえば「活版印刷」が発明されて、それまで書き写したりかわら版を刷ったりしていたものが、活字を組み合わせるだけで大量印刷できるようになりました。これで一般人も気軽に書物を読めるようになったのです。
しかし「活版印刷」は活字による制約がありました。それを解消したのがAppleのコンピュータ「Macintosh」です。文字を|書体(フォント)ととらえ、タイプライターのように「美しい文字」が印刷できる、夢のようなパソコンでした。「Macintosh」が普及すると、後発のMicrosoft「Windows」でもフォントが導入され、ワードプロセッサー(ワープロ)専用機がパソコンにすべて置き換わるほどの「革命」が起こりました。
しかもフォントを設定した「Macintosh」や「Windows」のワープロソフトの文書データがあれば、それとまったく同じものを何万部も何百万部も刷れるようになったのです。
今ではインターネットによる「電子書籍」がシェアを伸ばし、すでに「紙」に印刷する必要さえありません。
有史以来、言葉を残すにはパピルス・木・竹・パルプなどを用いた「紙」が使われてきました。「電子書籍」はこれらの「紙」媒体をまったく必要としない画期的な「発明」なのです。
革命に見る予見性の限界
「活版印刷」の発明された頃、「紙」を必要としない印刷手段が発想できたでしょうか。
ここに「科学」の予見性の限界があるのです。
今の延長上にしか進化を予見できません。逸脱するような「革命」が起こると、それまでの当たり前が真っ向から否定されます。
移動手段ひとつとってもそれは同じです。
最初は徒歩。次にひとりで馬に乗り、やがて複数名が乗れる馬車が生まれます。
長らく馬車の時代でしたが、ここで「革命」が起きます。イギリスで興った「産業革命」のひとつ「蒸気機関」です。
石炭による「蒸気機関」を用いて鉄道が整備され、数百名が一斉に移動できるようになりました。それが進化して原油から採れるディーゼル燃料を利用した「ディーゼル機関車」となります。
「ディーゼル機関」を小型化して乗用自動車が生まれ、そこからガソリンを用いたガソリン車、経由を使った軽自動車へと進むのです。ここでまたしても「革命」が起こります。
「電気」を補助動力源とする「ハイブリッド車」そして「電気自動車」へと進化していくのです。
「革命」にはもうひと筋あって、「水素」を燃料とする「水素エンジン」が考案され「燃料電池車」として実用化しています。こちらは燃焼させても「水」しか発生しません。
「電気自動車」は「電気」をエネルギーとするため、「電気」を発生させる発電所が不可欠です。そして現在のところ日本では火力発電所で半分以上を賄っているため、「発電」には二酸化炭素の発生が避けられませんでした。しかし「燃料電池車」はいっさい二酸化炭素を排出しません。つまり「水素エンジン」は「蒸気機関」以来の二酸化炭素排出を、ゼロにできるすぐれた「革命」なのです。
このように「革命」が起こると、未来の予見は不可能になります。
「水素エンジン」の可能性は途方もありません。地球の大気圏を突破すると宇宙には太陽から大量の水素とヘリウムが「太陽風」として飛んできます。つまり動力源が無限なのです。あとは酸素の供給さえあれば無限に宇宙空間を飛んでいられます。
「水素エンジン」はそれほど可能性の大きな「革命」なのです。
私たちが存命中に「宇宙旅行」が可能になっているかもしれません。
これから先、どんな「革命」が起こるかなんて誰にもわからないのです。
もしこれから起こる「革命」がわかる方がいらっしゃったら、ぜひ「革命」を製品化してください。ノーベル賞ものの偉業を達成できますよ。
私にはそんな「革命」を予見できないので、現代の科学を下敷きにして推し広める未来しかわかりません。
概念としては「量子コンピュータ」が日本で提唱され、近年ヨーロッパで試験機の開発に着手したと伝え聞いています。もし「量子コンピュータ」が実現すれば、現在のコンピュータは陳腐なものになるのです。
わかりやすく言えば、SONY「PlayStation5」と同じサイズの端末で最新最速のスーパーコンピュータ『富嶽』と同程度の処理ができるようになります。
どれだけとんでもないかわかりますよね。これが「革命」なのです。
小説における革命
未来を舞台とした小説はだいたい
「科学的虚構」つまり「今の科学が発展するとこんな世界になっているはず」が世界観を生むのです。
つまり「SF」ものを書くには書き手自身が「革命」を起こして今とは理屈の異なる世界を作り上げなければなりません。
たとえば現在携帯電話の高速大容量通信網『5G』が話題です。
私が携帯電話の最速を考えたら、電波を光回線と同様に整備します。つまり電波のオンオフを光回線と同じ速度にして解釈するのです。こうすると現行の光回線たとえばNTTの「フレッツ光」なら最速10Gbの速度ですが、これをゆうに超えます。2時間の映画もコンマ数秒でダウンロードできるほどの速度です。
となればほとんどの端末でこの「電波光秒変換」技術を用いれば『5G』すらしょぼい技術になります。おそらく福島第一原子力発電所でメルトダウンを起こした原子炉から核燃料棒を取り出す繊細な作業も現場のようなリアリティーで行なえるはずです。ここまでくれば福島の復興も加速度がつくのではないでしょうか。
私のSFはたいていこの「電波光秒変換」技術を基礎に置いています。これに「量子コンピュータ」を接続すると、世界中の監視カメラを統御できるほどの性能を秘めたマザーコンピューターが誕生するのです。
どうでしょうか。こんな「革命」が起きた未来なら、いろんなことができそうですよね。
「水素エンジン」をロケットに採用すれば、太陽系内での移動はとても容易になります。
皆様はどんな「革命」を考えますか。
この問いにひとつでも答えが出せたなら、あなたには「SF」ものを書くだけの科学的空想ができるのです。ぜひ「SF」ものを一本書いてみましょう。
最後に
今回は「物語90.科学と革命」について述べました。
科学技術はつねに「革命」によって飛躍的な進歩を遂げました。
「SF」ものはあなたの頭で現在の文明に「革命」を起こすところから始まります。
あなたもぜひ「革命」をひねり出してみましょう。頭を使えば、結果として誰かと同じ世界観になっても説得力が違います。なにせ土台とする「革命」はあなたが想起したものなのですから。
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