1322.物語篇:物語66.対立と融和

 今回は「対立と融和」です。

「対立」で始まって、あることがきっかけで根本が解決して「融和」するのです。

「融和」はわかりにくいかもしれませんね。「平和」と考えていただいても結構です。





物語66.対立と融和


 主人公と「対になる存在」とは当初「対立」関係にあります。

 そして主人公が相手を倒すなり屈服させるなりすれば「勇者と魔王」のテンプレートで終わるのです。

 しかし中には「対になる存在」を認め、平和共存「融和」で終わるパターンもあります。




対立の根本を考える

 どんな「対立」でも、その根本には原因があります。

 原因を考えず、現状攻め込まれているから反撃する。それが当たり前。そんな世界が「剣と魔法のファンタジー」の特徴です。

 暴力を受けるから暴力でやり返す。

 現代日本人であれば、これがどれほど無意味なのか理解できるでしょう。

 賢い人は気づいています。なぜ彼らは「暴力」に訴えるのか。その原因を解決しないかぎり「暴力」はやまないのです。

 アルコール依存症、ギャンブル依存症も同様。酒やギャンブルに溺れるのにはなにがしかの理由があるはずです。それを解決しないかぎり依存症は克服できません。

 家族や友達や仲間を頼れないから酒やギャンブルに逃避する。自分の思いどおりにならないから「暴力」をふるう。

 ある意味で「わがまま」なのです。我を通そうとするから他人との軋轢を生みます。

 現代日本人は、摩擦を生まないために「わがまま」を控えているのです。

 なんでも自分の思いどおりになれば、さぞ当人は気持ちがよいでしょう。しかし他人の気持ちを考えていません。相手の「わがまま」に振りまわされて自分のやりたいことができない。かなり鬱憤がたまる状況になります。

 この場合「対立」するのは「対になる存在」の「わがまま」が原因です。

 主人公はもう堪忍袋の緒が切れたから「対立」を選びました。

 こうなってしまうと、誰かが「対になる存在」に「わがまま」が原因で怒っているようだから控えなさい、とたしなめて態度を改めるまで「対立」は続きます。

 しかしこれまで「わがまま」を通してきた「対になる存在」は納得しません。

 ここで考えなければならないのは、「対になる存在」は、なぜ「わがまま」を通そうとしているのか、という根本です。

 両親が高齢で産まれたひとりっ子で甘やかされて育ったため。

 そうであれば、子だくさんな家庭に連れていって、いかに多産の家庭がたいへんかを体験させないかぎり態度を改めようとはしません。

 現代日本がいかに豊かで恵まれているのかを知るには、アフリカや東南アジア、中南米などの途上国へ旅行すれば手っ取り早い。

 社会体制自体が異なりますから、いかに日本は豊かで恵まれた国なのか実感できます。

 恵まれていない国や人がなぜためらいもなく罪を犯すのか。そうしなければ生きていけないからです。

 古代中国春秋時代の斉で、管仲という政治の天才が次のように語っています。

倉廩そうりん満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」

 つまり「米倉こめぐらが満たされてこそ道徳やマナーに気がまわり、衣服や食料が足りてこそ栄誉と恥辱の違いがわかる」ということです。

 日本人が日本国内を旅行するかのように他国に渡るのは危険でしかありません。

 その国の経済力を理解し、治安の良し悪しを把握するのです。

 たとえば北欧三国。スウェーデン、ノルウェー、デンマークは経済力があるため治安は日本並みに高いとされています。

 逆に中東各国はオイルマネーで恩恵を受ける王族や政府だけが潤い、平民は貧しい暮らしを強いられているのです。これで治安を求めてもムダでしょう。




対立を乗り越えて融和する

「対立」の原因がわかれば、それを取り除けば「融和」への道が開けてきます。

 今なら大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の関係がわかりやすいかもしれませんね。

 現在、韓国は進歩派(革新政権)の文在寅大統領で、北朝鮮に「融和」を呼びかけています。

 しかし北朝鮮の金正恩党委員長はいっこうに応じません。

 なぜでしょうか。

 簡単な話です。「融和」に応じたところで、金正恩党委員長の地位が約束されているわけではありません。国力では大きく劣っている北朝鮮は韓国資本によって蹂躙されてしまいます。金正恩党委員長の北朝鮮国内における統治が崩壊してしまうからです。

 だから北朝鮮は絶対に「融和」には応じられません。

 なぜ北朝鮮は「対立」の道を歩むのか。それは指導者である金一族による世襲統治を正当化するためです。韓国と戦争をしているから、金一族による世襲統治は正当化されます。もし「対立」をやめたら金一族による世襲統治は意味がなくなるのです。

 この「対立」の根本は北朝鮮の「金一族による世襲統治」にあります。これを取り除かないかぎり、韓国と北朝鮮は永遠に「融和」できません。

 そんな簡単なこともわからない文在寅大統領は「融和」を唱えれば北朝鮮が同調してくれるなどという幻想を見ているのです。

 北朝鮮は「金一族による世襲統治」を保証されないかぎり「融和」には応じません。それができるとすれば、「韓国を北朝鮮化」する以外ありえないのです。

 韓国の保守派がそのことに気づいているのかいないのか。保守派は「韓国の民主主義による民族統一」を掲げていますから、「対立」の根本をまったく無視していますよね。

 もし本気で朝鮮半島を統一したければ、金一族を皆殺しにするか、金氏朝鮮を実現させるかです。前者は「対立」の根本を除去する方法、後者は「対立」の根本を許容する方法。

 仮に「往来の自由化」から経済活動の共有を進めていくとどうなるか。先述していますが、北朝鮮はあっさりと韓国資本に飲み込まれます。韓国はこうやって経済侵略を企図しているのです。北朝鮮もそれはわかっているので「金氏朝鮮」以外の統一を拒否し続けています。

 これでも朝鮮半島を統一したいのなら、金一族を皆殺しする以外にありません。

 そうされないために北朝鮮はアメリカと対立して弾道ミサイルや核兵器の開発を続けているのです。

「対立」をなくすために根本を理解する。そして根本を解決することで「融和」への道が開けます。

 拙著『秋暁の霧、地を治む』はまさに「対立と融和」の物語です。

 前身である中編小説『暁の神話』は『ピクシブ文芸』と『小説家になろう』に掲載してありますので、どういう物語が「対立と融和」なのかは理解できると思います。

『カクヨム』では長編小説版の『秋暁の霧、地を治む』を載せたいので、あえて投稿していません。適当な小説賞に合わせて連載を開始したいと思っています。





最後に

 今回は「対立と融和」について述べました。

「対立」しているのにはなにか根本的な理由があります。

 それが解決されないかぎり「対立」は終わりません。

 いくら「融和」を訴えても、「対立」の根本が解決しないかぎり叶わないものです。

 いかにして「対立」の根本を解消できるかどうか。

 それが「対立と融和」の物語のキモです。



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