1323.物語篇:物語67.伝授と発明
マンガやアニメにありがちなのが「必殺技」です。
絵や動きで表現できるため、とても映えます。
しかし小説で「必殺技」を出してもたいして面白くなりません。
これはスポーツと同じで、文字では映えないのです。
まことに私事ですが、奥歯の根っこを割ってしまったようなので、明日歯医者に行ってきます。おそらく抜歯となるので、明日は投稿できないかもしれません。いちおう今回を投稿し終わったら、明日ぶんを予約投稿する予定でいます。
毎日連載が途切れてしまったらご容赦くださいませ。
物語67.伝授と発明
一子相伝の秘儀秘術であったり、免許皆伝の奥義であったり。さまざまなものが上位者から「伝授」されます。
それと対極にあるのが、自ら秘儀秘術や奥義を編み出す「発明」です。こちらは開祖になります。
どちらにしても「世界一」だったり「世界最強」だったりになって、道を極めようとする弟子や後進に技を伝えていくのです。
主人公最強は本当に好まれるのか
主人公には、他人にはない特技や必殺技が必要です。それがあるから他人と差が生じて「主人公最強」にもなれます。
しかしなにも「世界最強」の存在が主人公である必要はありません。パーティー・メンバーに「世界最強」がいるだけで、じゅうぶん痛快な作品に仕上がります。
それなのに「主人公最強」にこだわるのは「小説投稿サイトで人気があるから」という安易な妥協ではありませんか。
本当に面白い物語であれば、パーティー・メンバーの誰が最強であってもじゅうぶん楽しめる作品が書けるのです。
職人のように、各分野のエキスパートとして勇者メンバーに加わる展開が一般的だと思います。
それならばパーティー・メンバーはそれぞれの分野で「世界最強」のはず。
「世界最強」には、あらゆる技に精通する万能型と、ある技だけを極めた特化型があります。小説の「世界最強」は基本的に「特化型」です。一芸を極めたクセモノどもが集まってパーティーを組むから、なにが起こるかわからない。ワクワク・ハラハラ・ドキドキを読み手に感じさせたいのなら「万能型」では都合が悪い。なにせなんでも解決するだけの技能がありますからね。だから動き出したらすぐに解決してしまう。それではまったく面白くないのです。
たとえば剣士では魔法にかかわった問題が発生しても手に負えません。剣士が窮地に陥ったところにメンバーの魔術師が現れてあっさりと返り討ちにしたり解決したりするのです。
「剣と魔法のファンタジー」で最も魅力があるのは、「主人公最強」ではなく「パーティーとして最強」だと思います。技能のいびつなメンバーが組み合わさって「最強」を発揮すればよいのです。
そもそも「主人公最強」ではワクワクはしても、ハラハラ・ドキドキしてきません。なにせ「主人公最強」だから、どんな相手にも勝ってしまうからです。「パーティー最強」なら得意でないメンバーが危機に陥ってハラハラ・ドキドキさせ、専門職が現れて一発逆転するワクワク感が出せます。
世界観にもよりますが「異世界ファンタジー」なら四人から六人でパーティーを組むものです。騎士・戦士・盗賊・精霊使い・神官・魔術師ですね。四人の場合は騎士と精霊使いを省いて魔術師か神官にも戦士としての能力を付与するものが考えられます。私は「異世界ファンタジー」といえど盗賊ギルドが政府公認で存在するのは不自然だと思うので盗賊は省きますね。手先の器用さを求めるなら知識の多い魔術師に任せてもよいし、賢者に入れ替えてもよいと思います。
実際短編連作の『伝説』シリーズは賢者に宝箱を開けさせたり隠し扉を発見させたりしています。
特技・必殺技の伝授
最強の戦士なら、なにか必殺技が欲しいですよね。誰よりも速い突きを放てる戦士は「最強」の存在になりやすい。圧倒的なパワーでねじ伏せてもよいですし、二刀流など剣術の流派で「最強」を演出してもよいでしょう。
幕末に土佐を脱藩した坂本龍馬氏は「幕末最強」北辰一刀流の免許皆伝とされていますが、それは長刀の話で、剣術の免許皆伝ではないのです。それでも「最強」の片鱗はあるわけですから、不意を突かれないかぎり、そう簡単には負けません。寺田屋事件や近江屋事件のように不意を突かれなければ。そう、坂本龍馬氏は油断していたのです。
頭が新政府構想にまわってしまい、自身に迫る危機に気づけなかった。まぁ本人が自分を重要人物とは思っていなかったようなのですが。もし重要人物を自認していたら、おそらく薩長の仲は取り持てなかったでしょう。
明治維新にかかわる新選組の各隊長たちも名うての剣術の免許皆伝で、実戦の機会が多かったことから、当時「最強」の名をほしいままにしていました。倒幕派の維新志士たちも佐幕派の「新選組」には用心を欠かしません。
免許皆伝を得るには、その剣術道場に弟子入するしかないのです。そこで血のにじむような努力を重ね、才能が見込まれれば特別な修行を受けて流派の剣術を少しずつ教え込まれます。すべての剣術を教え込まれたら「免許皆伝」として流派が名乗れるのです。そしてさらに選ばれた者だけが奥義を伝授されて流派の跡継ぎとなります。
このあたりはマンガの和月伸宏氏『るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜』で主人公・緋村剣心が、流派・飛天御剣流の奥義を会得するために師匠の比古清十郎のもとへ行ったあたりが参考になるのではないでしょうか。剣心は飛天御剣流を名乗ってはいますが「免許皆伝」ではなかったのです。
このように特技や必殺技を持っている主人公やメンバーは強い。一撃必殺の示現流も、最強の一撃を有しているから「強い」のです。
発明・開祖
戦国時代最強の剣士であり「剣聖」と名高い宮本武蔵氏は「二刀流」を編み出し、流派・二天一流を開いています。まさに開祖です。その極意を記した『五輪書』は剣術の名著とされており、現在でも語り継がれています。
このように、独力で「最強」の技能を編み出して発明し開祖となった人物は、まさに「最強」の二つ名にふさわしい存在です。
日本刀は拳銃の弾を真っ二つにできるほどの強度を誇ります。よくマンガのモンキー・パンチ氏『ルパン三世』で石川五エ門が銃弾を斬鉄剣で切り捨てていますが、マシンガンはわからないのですが、一発の銃弾なら実際に切り捨てられるのです。
マンガの青山剛昌氏『名探偵コナン』では四百戦無敗の空手家・京極真が至近距離のライフル銃を避けています。このときの京極真の「避け方」を学習して、劇場版ではヒロインの毛利蘭もやはり至近距離のライフル銃を避けています。まぁ創作ですから、なんでもありです。コナンの世界観では京極真が「ライフル銃を避ける」技能の「開祖」と言えます。
技能や必殺技の発明・開祖は、誰よりも強い存在です。それこそ「世界最強」を地で行きます。誰も真似ができない技である以上、圧倒的な優位性を持っているのです。
体操で考えれば、床のシライIIや鉄棒のブレットシュナイダーのように、世界大会で新技を成功させると名前が付けられます。そしてその技は当面本人しか再現できないため、最強の存在となりうるのです。
新技の開発・発明・開祖となれば、その分野では圧倒的な実力を示せます。
剣舞の達人は一子相伝・免許皆伝で身につくかもしれません。しかし刀を両手に一本ずつ持って敵と戦う二刀流の「発明」は、その後の戦い方を変えるほどのインパクトを有しているのです。
「二刀流」は宮本武蔵氏が思いついた「思想」であり「哲学」です。一対多での乱戦では圧倒的な攻撃力を有しています。だから「剣と魔法のファンタジー」でも最強の存在は「二刀流」を極めているのです。川原礫氏『ソードアート・オンライン』で最強の主人公キリトも「二刀流」のスキルを有していましたよね。
最後に
今回は「伝授と発明」について述べました。
「世界最強」はなにも主人公である必要がありません。パーティー・メンバーの誰かが「世界最強」であってもじゅうぶん面白い物語になります。それなのに「主人公最強」が人気なのは、ただの手抜きです。
仮に「主人公最強」を選んだ場合、独力で「主人公最強」になったのなら必殺技を自ら編み出した「発明」か、一子相伝の奥義を「伝授」されたのかが想定されます。
ですがゲーム系の「異世界ファンタジー」では「主人公だけが持っている技能」によって「主人公最強」となるケースが多く見られるのです。
主人公だけをそこまで厚遇しても、物語は面白くなりません。どうせならパーティー・メンバーそれぞれが一癖も二癖もある技能の持ち主のほうが、俄然面白くなります。
あなたの「主人公最強」は本当に「主人公最強」でなければ書けない物語なのでしょうか。構想している段階から、まず疑ってかかりましょう。
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