1314.物語篇:物語58.男装と女装
毎日連載1,250日となりました。お付き合いいただきましてありがとうございます。
私の中にある物語を書き出しているのですが、そろそろネタ切れかなと思っています。
続く篇を決めていないので、毎日連載が途切れるかもしれません。まぁ添削・講評依頼をこなしたいので、いったん途切れさせてもよいように思いますけどね。ということで今日のぶんを投稿いたします。
最近の小説とくにライトノベルでは「男装」「女装」がよく登場します。
ゲームのスクウェア(現スクウェア・エニックス)『FINAL FANTASY VII REMAKE』で主人公クラウドが女装していましたね。
なぜ「男装」「女装」は人気があるのでしょうか。
物語58.男装と女装
物語の中でもちょくちょく出てくるのが「男装」「女装」です。
「男装の麗人」だったり「女装のオカマ」だったり。
物語にアクセントを加えたい書き手には重宝されます。
男装の麗人
おそらく歴史に名高い「男装の麗人」はフランス王国の軍人だった「オルレアンの乙女」ことジャンヌ・ダルク氏ではないでしょうか。
男性でなければ仕官できなかったため、男装をしてまでフランス軍に入隊し、百年戦争でイングランド打倒を目指していきます。のちにカトリック教会が認定した聖女です。実はシャルル七世が即位したのち、コンピエーニュの戦いでイングランド軍の捕虜となります。このときに異端審問にかけられて男装の罪で火刑に処せられました。
フランス王国の「男装の麗人」と言えばマンガの池田理代子氏『ベルサイユのばら』の主人公オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを思い出す方もいらっしゃるでしょう。
しかしこちらは元から「自分は女だ」と主張していました。まぁ創作キャラですから、どんな設定でも罪には問われないんですけどね。フランス革命に至る物語において、長く近衛連隊大尉として王太子妃マリー・アントワネットの護衛を務め、マリー・アントワネットが王妃になると大佐、准将へと昇進していきます。フランス革命では一市民として部下を率いてバスティーユ襲撃で前線指揮を執るも勝利目前で狙撃を受けて倒れるのです。
オスカルの人気は絶大で、作中で死亡するとファンが実際に葬儀を執り行なった、数少ない二次元キャラクターのひとりです。他には&高森朝雄(梶原一騎)氏&ちばてつや氏『あしたのジョー』の力石徹、アニメの東京ムービー『六神合体ゴッドマーズ』のマーグ、マンガのあだち充氏『TOUCH』の上杉和也、アニメの富野由悠季氏『機動戦士ガンダム』のガルマ・ザビ、アニメのスタジオぴえろ『超時空要塞マクロス』のロイ・フォッカー、田中芳樹氏『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー、武論尊氏&原哲夫氏『北斗の拳』のラオウなどがいます。
「男装の麗人」はいずれにせよ気高い精神を持っているのです。
「男装の麗人」には自分が女性であることに誇りを持っているパターンと、自分が女性なのはなにかの間違いだと思っているパターンのふた通りあります。
オスカルは前者、ジャンヌ・ダルク氏は後者ですね。
ではなぜ彼女たちは「男装」を選んだのでしょうか。
「男性」でなければ務まらない職業に就くためです。
ジャンヌ・ダルク氏は百年戦争でのフランス軍に従事するため。オスカルはジャルジェ家に男児が生まれなかったため幼い頃から家族に「男装」を強要されていました。
二次元の「男装の麗人」はかなりいますので、代表的なキャラクターをふたり挙げましょう。
マンガの手塚治虫氏『リボンの騎士』のサファイア・フォン・シルバーランド。彼女は日本における「男装の麗人」キャラの先駆けとも言うべき存在です。宝塚歌劇団の男役をモデルとしています。生家に男児が誕生しなかったところに天使のいたずらで男女ふたつの心を併せ持って産まれた存在です。
さいとうちほ氏&ビーパパス『少女革命ウテナ』の天上ウテナも有名でしょう。「王子様のように気高くカッコよく」を信条として、女性という制約に縛られたくないために男装をしています。
女装の美人・男の娘
「男装の麗人」の対義語は正確にはわかりませんでした。そこでとりあえず「女装の美人」と呼ぶことにします。少年が美少女になる場合は「男の娘」と呼ぶ人もいるでしょう。
「女装男子」の代表格は井上堅二氏『バカとテストと召喚獣』の木下秀吉、茅田砂胡作氏『デルフィニア戦記』のシェラ・ファロットが有名なところでしょうか。
「男の娘」の代表格はマンガの竹岡葉月氏&Tiv氏『政宗くんのリベンジ』の朱里小十郎、渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の戸塚彩加になると思います。
「女装の美人」は、歌舞伎や大衆演劇の女形を彷彿とさせるものがあります。どちらも基本的に舞台へ上がるのが男性のみだった時代に、男性が白塗りして女ものの着物でしなを作る姿がとても「女らしい」ところで人気が出ました。
その中でも最高峰とされるのが六代目中村歌右衛門氏です。現在では坂東玉三郎氏、尾上菊之助氏といったあたりも人気がありますね。
「歌舞伎の女形」と書いたところで思い出しました。アニメのビッグウエスト『マクロスF』の主人公・早乙女アルト、通称「アルト姫」がいましたね。こちらは子役時代に女形をやっていて、それを部活動仲間のミハエル・ブランにからかわれているのです。アルトにとっては黒歴史もよいところ。
大衆演劇の女形として有名なのは、若いところでは早乙女太一氏。子役時代から女形に定評があり、上記の早乙女アルトのモデルとされているようです。
そして忘れてはならない人がいらっしゃいます。MBS系列『プレバト!!』で俳句の永世名人の称号を持つ梅沢富美男氏です。彼の女形は全盛期、巡業に多くのファンがついていくほどの人気を誇っていました。歌舞伎だと敷居が高いと思う方でも、大衆演劇なら観てもよいかなと思わせたのです。しかも梅沢富美男氏の女形はそんな大衆演劇の中でも群を抜いていました。そのため「下町の玉三郎」の異名を持ちます。人気絶頂期に小椋佳氏作詞作曲の『夢芝居』で紅白歌合戦へ出場していたほどです。今では『プレバト!!』MCの浜田雅功氏と俳句講師の夏井いつき氏にからかわれながらも、俳句を詠む姿が多くの支持を集めています。ただ、あの往生際の悪さを観ていると、もはや「絶世の美女」として名を馳せた女形のかけらもないような気がします。
性的マイノリティー
「男装の麗人」「女装の美人・男の娘」に共通してついてまわるのが「性的マイノリティー疑惑」です。
つまり「男装しているのは女性を引っかけたいからだろう」というもの。
これほど人権を無視した発言は今の世の中では受け入れられません。
それこそ昭和以前を舞台にした作品なら、そんな偏見があったという「歴史的事実」を書いているのでまぁ許されます。
しかし令和の時代は「性的マイノリティー」に言及するのが憚れるのです。
ですが「女性に恋する女性」だったり「男性に恋する男性」だったり。
昔からそういう作品はけっこうあったんですよね。
百合だったりBLだったり、けっこう性的な描写も多いので、詳しくはインターネット検索で見つけていただきたいと思います。
『CITY HUNTER』の北条司氏が描いた『F.COMPO』という作品があります。これは男装していて心も男だと思っている女の父親と、女装していて心も女だと思っている男の母親、その間に産まれた性別不詳のヒロインが登場する、いわば「性的マイノリティー」問題を1997年に提起していた歴史的な作品です。あの時代にここまで「性的マイノリティー」を描いた北条司氏の慧眼が光ります。これから「性的マイノリティー」を題材に物語を書きたい方には、ぜひ読んでいただきたい。マンガなので読みやすいですしね。
今「性的マイノリティー」を扱いたいのなら、北条司氏のように十全に計算してからにしてください。その場の勢いだけで書いてしまうと、彼ら彼女らを傷つけてしまうおそれがあります。
きちんと計算して「これならだいじょうぶ」と判断できるところまで持っていってから書けば、配慮の行き届いた作品に仕上がるでしょう。
BL小説が好きだから書きたいという方もいらっしゃると思います。。そういう場合は「揶揄するものではありません」くらいの文言をあらすじにでも書いておけばよいでしょう。
最後に
今回は「物語58.男装と女装」について述べました。
「男装の麗人」はけっこう高く評価されるのですが、「女装の美人」「男の娘」は蔑みの要素がいくらか入ってしまうんですよね。評価されるのは歌舞伎や大衆演劇の女形くらいなものです。それ以外は「変態」扱いされるんですよね。
女性の男装は「カッコいい」。男性の女装は「気持ち悪い」。
これも性差別ですかね。
まぁ髭面筋骨隆々で女装していたら、誰が見ても変質者かもしれませんが。
マンガの秋本治氏『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に出てくる特殊刑事課の面々を見ると、やはり男性の女装は市民権が得られにくいんだなぁと感じますけどね。
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