1313.物語篇:物語57.私たち入れ替わってる!
心が他人と入れ替わってしまう物語もありますね。
現在最も有名なのがサブタイトルにもしましたが新海誠氏『君の名は。』ではないでしょうか。
そんな物語に必要なものと問題点を挙げていきます。
物語57.私たち入れ替わってる!
中身が入れ替わってしまう物語があります。
サブタイトルはそんな物語であるアニメの新海誠氏『君の名は。』からとりました。
入れ替わってしまうといろいろと不都合なことが起こります。
「入れ替わり」の物語は基本的に小さなエピソードで終わりますが、ときには『君の名は。』のようにメインテーマとなりうるのです。
どうやって入れ替わり、元に戻るのか
「入れ替わり」の物語で考えておきたいのは、どうやって入れ替わったのか。もとに戻るにはどうすればよいのか。この二点です。
たいていの物語では「超常的な力」によって入れ替わります。たとえ双方の願望が一致したのだとしても「超常的な力」が働かなければなりません。
「剣と魔法のファンタジー」なら「入れ替わり」の魔法があるかもしれない。魔法はなくてもマジックアイテムならある遺っている可能性があります。現在の魔法では無理だが、過去に栄えた魔法王国の遺産として伝えられてきたのなら、あっても不思議はありません。
「現代ファンタジー」で「入れ替わり」を扱ったのが『君の名は。』です。
「入れ替わり」の方法を工夫すれば、さまざまな物語が思い浮かぶでしょう。
しかし二〇二〇年の今「入れ替わり」物語を書くと『君の名は。』かよ、と思われてしまいます。それだけインパクトがあったのですね。
私が最初に「入れ替わり」の物語を見たのはマンガの藤子・F・不二雄氏『ドラえもん』だったと思います。次いでマンガのまつもと泉氏『きまぐれオレンジ☆ロード』です。どちらもロープの両端を持つと入れ替わる道具を使っていましたね。『きまぐれオレンジ☆ロード』では他にも超能力者同士が頭突きすると入れ替わる、というネタを使っていました。「入れ替わり」に必要な「超常の力」も超能力者なら持っているかもしれませんね。
入れ替わってからの物語も面白い。のですが、問題は「どうやって元に戻ればよいのか」がわかりません。少なくとも入れ替わった当初は。
たいていは頭をぶつけるとか階段から落ちるとか車に轢かれるとか、痛い思いをしないと戻れない場合が多いのです。
どうやって戻り方を知るのか
「入れ替わり」の問題は「どうやれば戻れるか」の方法を知る点にあります。
誰も体験したことのない現象なのに、誰かが戻り方を知っているのは無理がありませんか。
どこかのマッド・サイエンティストが「君たち入れ替わっているね。戻り方を教えてあげようか」とでも言って近づいてくるのでしょうか。それだけでじゅうぶん犯罪行為のような気もしますが。もしかしたら「入れ替わり」はこのマッド・サイエンティストのせいかもしれません。それならなおさら許せませんけどね。
たいていの場合「偶然」に戻ってきます。その「偶然」がどんな要素だったのかを精査していけば、いつでも戻れるようになれるのです。
だからといって誰かとポンポン「入れ替わり」続けるのも面白みに欠けます。
せっかく「入れ替わり」という非日常な出来事が起こったのに、そうポンポン「入れ替わり」するとありがたみがなくなってしまうのです。
だから基本的に「偶然入れ替わって、相手の日常を過ごしてみて、なにかの拍子に元に戻る」という流れで物語を作る必要があります。
「入れ替わり」と「元に戻る」はそれぞれ一回あればよいでしょう。
長編小説で十回も二十回も入れ替わっていたら、入れ替わりのシーンだけで原稿用紙三百枚・十万字なんてすぐに埋まってしまいます。
「偶然入れ替わって、相手の日常を過ごしてみて、なにかの拍子に元に戻る」
たった一回の非日常ですが、たった一回だからこそ小説では価値があるのです。
『君の名は。』のような展開はアニメ映画だから通用します。小説にすると安っぽくなってしまうのです。
ファンタジーだからこそ
「入れ替わり」の物語は「ファンタジー」だから面白いのです。
もし「推理」もので「入れ替わり」ができたら、潜入捜査も簡単にできてしまってまったく面白くなくなります。とくに犯人がすぐにわかるのでは興醒めです。
「入れ替わり」に用いる「超常の力」が科学に根ざしているのなら、「SF」でも使えます。
少なくとも「推理ファンタジー」というジャンルはほとんど見ませんから、まずありえないと思ってよいかもしれません。まぁだからこそ人の通らない裏道を行く人が目立つんですけどね。
基本的には「推理ファンタジー」は無理ですが、「推理」ものをきっちりと書ける方が、「ファンタジー」ジャンルに手を出したいとき。導入としてはありだと思います。それで人気が出るかどうかは別として。少なくとも類例がパッと浮かびませんから、珍奇な物語になるのは確かです。
「ファンタジー」とは言っても、トリックは現実世界でできるもの以外は不可。しかも「入れ替わり」でネタが割れないのも不可です。
「入れ替わり」ものなのに、入れ替わったあとになにも変わらない話もありえません。
少なくとも他人の生活を体験できたわけですから、主人公の考え方が変わっているはずなのです。能天気な性格で「ま、いっか」で済ませられるのなら「入れ替わり」する意味なんてありません。
「入れ替わり」という非日常でも、小説である以上、心の変化を丁寧に書くべきです。
誰がなってもほとんど関係ない場合もあります。しかしたいていはその主人公でなければ書けない物語にするべきです。主人公の特徴を活かした「入れ替わり」ものは、とても印象に残ります。
『君の名は。』だって、あのふたりが入れ替わったからこそ印象的なのです。
もし父と子が入れ替わったところで、たいして面白い話にはなりません。性別が違うし、暮らしている場所も異なる。だから入れ替わると面白いのです。
最後に
今回は「物語57.私たち入れ替わってる!」について述べました。
「入れ替わり」の物語は、入れ替わった原因と元へ戻る方法に興味が湧きます。
このふたつがはっきりとわかったときに物語が終わるのです。
原因も方法もわからなければ、元へ戻れなくなりますからね。
それを逆手にとって、「入れ替わり」したまま死ぬまで別人として生きていく物語もあります。変わり種ですが、物語としては「あり」ですね。
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