1298.物語篇:物語42.迷いと悟り
本日は毎日連載1234日目となります。長らくお付き合いいただきましてありがとうございます。
物語篇で連載を引き伸ばしていますが、それもそろそろ尽きそうです。まぁ私に40以上の物語があったんだと知れただけでもよしとしましょう。
そんな記念するべき回に投稿する物語は「迷いと悟り」です。
まさに今の私そのもの。まだ続けようかなが、いつネタ切れで終了してもいいやになっています。
物語42.迷いと悟り
人間であれば誰もが持っている「迷い」や「ためらい」。
もし「迷い」や「ためらい」を持っていなければ、すでに釈迦やキリストのような聖人でしょう。
「悟り」の境地にたどり着いていなければ、「迷い」や「ためらい」から逃れられません。
凡人は何度でも同じ「迷い」や「ためらい」や「恐れ」を抱きます。
晴らすには「悟り」を開かなければなりません。
なぜ迷いためらうのか
人はなぜ「迷い」「ためらい」「恐れる」のか。
損得勘定が働くからです。
どちらを選べば得をするのか損をするのか。わからないから「迷い」ますし「ためらい」ますし「恐れる」のです。
「悟り」を開いた聖人がなぜ「迷い」も「ためらい」も「恐れ」も抱かずに行動に移せるのでしょうか。
それは「悟り」の本質が「損したって関係ないね」と意に介さない姿勢だからです。
誰だって損はしたくありません。できればたくさん得をして死んでいきたい。
ですが死んだあと墓場にまで財産や地位を持っていけません。まぁ古代エジプトのピラミッドや古代中国の墳墓には財宝がたんまりと溜め込まれていたそうですが。
たとえば一兆円の資産を持って死んだ人は、死後の世界にも一兆円を持っていけるのでしょうか。できませんよね。
損得勘定は現世を生きている私たちには欠かせないものなのです。
しかし「悟り」を開いた人は、現世にとらわれません。
死ぬまでにいくら貯金しても偉くなっても、死んでしまえばなにも残らない。待っているのは、なにも存在しない無限の無の境地。
釈迦が瞑想して「悟り」を開いたのは、「なにも考えない」「なにも感じない」無の境地こそが「死後」そのものであるとひらめいたからです。
無の境地にたどり着ける方自体はかなりの数いらっしゃいます。しかしそれが日常の生活の基礎になる人はまずいません。
我欲に縛られず、他人に施せる。自身を律し、他人を許す。「悟り」を開いていない人を教え導く。
これらができるのも「悟り」を開いて生活の基礎になっているからです。
マインドフルネス
「iMac」「iPod」「iPhone」「iPad」を生み出したAppleのスティーブ・ジョブズ氏は、若い頃ドラッグにハマって自我を抑制できず、その生活が災いしてAppleを追放されてしまいます。そのあと禅僧のもとで「瞑想」を続けました。そうして我欲にとらわれず、他人がなにを求めているのかを見つけ出す「心の目」を養ったのです。
現在ビジネス界では「マインドフルネス」という言葉が流行っています。どんな意味だろう、と思うかもしれませんね。なんてことはない。ちょっとした「瞑想」のことです。
画期的な発明をしたスティーブ・ジョブズ氏に倣おうと、アメリカを中心に「マインドフルネス」が一大ムーブメントとなっています。
「マインドフルネス」には「瞑想」のように我欲を抑制する効果があるので、損得勘定もコントロールできるようになるのです。
自分にとって損か得かではない発想が生まれるかどうか。
社会の奉仕者としての立ち位置からサービスを提供するには「マインドフルネス」で意識を集中する必要があるのです。
「今、この瞬間」を大切にする生き方。それが「マインドフルネス」です。
今起こっている経験に注意を向け、それだけに集中していちばんよい選択を生み出します。
このように「マインドフルネス」は、スティーブ・ジョブズ氏が実践した禅の「瞑想」とは少し異なるのです。
「マインドフルネス」は今起きている事柄だけに集中して解決方法を見つける手段。「瞑想」は頭の中を空っぽにして「自我を消し去り、無の境地へ至る」手段なのです。
つまり「マインドフルネス」は実利を得る手段であり、「瞑想」は実利にとらわれなくなる手段になります。
現在は「マインドフルネス」と「瞑想」を組み合わせた「マインドフルネス瞑想」も生み出されました。
そもそも「瞑想」の初歩は「ひとつのことに集中して」雑念を捨て去ります。
座禅を組み、目を閉じて「集中している自我に意識を集中させる」のです。この説明はちょっと難しい。
ですが「集中している」状態をさらに深めたければ、そうしている意識をさらに集める必要があります。
「集中の極致」が「瞑想」の第一段階です。「マインドフルネス」は「瞑想」の第一段階でしかありません。本当の「瞑想」はそれより先まで到達します。
「集中の極致」に至ったら、次は「集中をなくす」のです。「集中している意識を失わせていき」ます。呼吸に意識を集中して「なにも考えない」状態まで持っていくのが「瞑想」の第二段階です。
最終段階では「なにも考えない」をさらに極めます。「呼吸していることすら考えない」完全な「無」に身を置くのです。
まったくなにも考えずに「無の境地」で座禅を組んでいると、時間感覚すらなくなります。
頭の中も空っぽ。体を動かそうとも思わない。無重力下にたゆたっているかのごとくまったくの「無」を体験すると「死」が体感できるのです。「完全な無」である「死」を体験することで「生」の素晴らしさに改めて気づかされます。
スティーブ・ジョブズ氏はこの域にまで達していたのです。
今流行っている「マインドフルネス」なんて、スティーブ・ジョブズ氏の足元にも及びません。
皆様も、執筆に迷ったら「瞑想」してみてください。
なにも考えないから頭がリフレッシュされますし、「無」に身を置くのでストレスからも解放されます。
今書いている
もし主人公が「迷い」や「ためらい」や「恐れ」を克服したいと思ったら、「瞑想」させるのもひとつの手段になります。
まぁ「瞑想」で手に入るのがどんなものかは、実際に書き手であるあなたが気づかなければ「ウソくさく」なるのですが。
「瞑想」して強くなる。これを描いた作品は少ないのですが、まったくないわけではありません。親しいところではアニメのサンライズ『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュが挙げられます。ドモンはギアナ高地で「瞑想」に耽けて「明鏡止水」の心境を手に入れます。ただ残念なのは、ロボットバトルものであるがゆえに、「瞑想」で手に入れた「死生観」が生かされず、ただのレベルアップ手段となってしまったところでしょうか。
本当に「瞑想」で心が強くなったら、勝ち負けだけでなく戦いそのものにこだわらなくなります。
「誰かに勝とう」とすら思わないのです。
「瞑想」には我欲を捨てる効果があります。勝ち負けなんてちっぽけなものに興味を抱きません。
悟りを得た主人公
小説の主人公に「瞑想」させるのはかなり難しい。
まず書き手自らが「悟り」を開いていないと「ウソくさく」なります。『機動武闘伝Gガンダム』のようにです。
また書き手がすでに「悟り」を開いている場合、主人公が「人格者」になりがちなのも注意していただきたい。
最終的に「悟り」の境地にたどり着くとしても、物語のスタート地点では「我欲が強い凡人」に設定する必要があります。そうしないと読み手が主人公に感情移入しづらいからです。
たとえば主人公が釈迦やムハンマドやキリストだったら、あなたは感情移入して作品を読めるでしょうか。
きっと「こんな考えの人なんていないよ」と「創作のウソ」を感じるはずです。
その考え方がたとえ「悟り」の境地であろうとも、読み手の考え方と異なれば受け入れられません。
だから物語の開始時点では読み手の大半同様「凡人」でなければならないのです。
「凡人」が出来事を通じて「悟り」を得て「無の境地」へ到達する。
そして我欲にとらわれない考え方で、問題の解決策を見つけ出します。
しかし「悟り」を開いてしまうと、もう「凡人」には戻れません。現世へのしがらみがすべて取り払われるからです。
だから放浪の旅に出て、行く先々で人々を救う主人公が多くなります。
それこそ釈迦やムハンマドやキリストのようにです。
「悟り」を得るとは「俗世から魂を解放する」ことであり、なにものにもとらわれない空気のような意志となります。
ある種『機動戦士ガンダム』の「ニュータイプ」に近くなるのです。
まぁ「ニュータイプ」はすべからく「最強の戦士」として登場するのが「ガンダム」シリーズなんですけどね。戦わない「ニュータイプ」のほうが少ない。
このあたりに「悟り」とバトルの両立の難しさが現れると思います。
最後に
今回は「物語42.迷いと悟り」について述べました。
上述しましたが「ニュータイプ」はある種の「悟り」を開いた人たちです。
それが「最強の戦士」としてしか存在しえないところに「ガンダム」シリーズの限界があります。というより「悟り」と「バトル」の両立が困難なのです。
「悟り」を開いたら、誰が諸悪の根源なのかひと目でわかります。『機動戦士ガンダム』でアムロが「今なら倒すべき敵が誰なのかわかる」と感じたのも、「悟り」を開いた「ニュータイプ」だからこそです。
「剣と魔法のファンタジー」で「悟り」を組み込むのは難しいかもしれません。
しかし「悩み」ながらよりも「悟り」を開いてラスボスとのバトルに臨まなければ、どうしてもラスボスに遅れをとってしまいます。
「悟り」まで至らなくても「開き直り」でもかまいません。
ラスボスの言葉に「それがどうした」と言い切れるだけの心の強さが、主人公には欲しいのです。
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