1281.物語篇:物語26.古代文明と再生

「異世界ファンタジー」だとなかなか難しいのが「古代文明」に関するものです。

 ですが、現在に遺されたなんらかの痕跡が「古代文明」へつながるような物語はいくらでも創れると思います。

 そんな、ちょっと思いつかない物語について考えてみましょう。





物語26.古代文明と再生


「剣と魔法のファンタジー」でも少し特殊なのが「古代文明」に絡めた物語です。

 私はパソコンゲームのファルコム(現日本ファルコム)『Ys 〜Ancient Ys Vanished〜』(1987年)で初めてこの物語に触れました。

 今から33年も前の作品なんですね。時の流れのなんと速いことか。

 世界には太古の文明の痕跡が多数残されている。それを集めていくと、古代文明に関するあるものが見えてくる。

 そんな心の沸き立つような感覚が味わえる「冒険心」をくすぐる物語です。




現在に遺された痕跡

「古代文明」は人々から忘れられていなければなりません。

 一度滅びた「古代文明」はなにかしらの痕跡を現在に遺しています。

 たとえばマンガの武論尊氏&原哲夫氏『北斗の拳』(1983年)やアニメの宮崎駿氏『未来少年コナン』(1978年)『風の谷のナウシカ』(1984年)は、現代文明が核戦争で滅び、生き残った者たちによる新世界を舞台にした物語です。

 また直接「古代文明」という形をとるなら、アニメ映画の宮崎駿氏『天空の城ラピュタ』(1986年)はそのものズバリだと思います。

「古代文明」であるラピュタを夢見るパズーと、飛空石を持つ謎の少女シータが「ラピュタ」へ向かう冒険活劇です。公開年や連載開始年、発売年を付してみましたが、私って宮崎アニメはほとんど観ていないんだなとわかります。

『北斗の拳』も読んでいなかったし。まぁ「神話」の類いならマンガの車田正美氏『聖闘士星矢』(1985年)は読んでいたので、ギリギリここまでかなという感じです。

 それぞれの作品で「古代文明」の遺物が登場します。

『北斗の拳』なら「北斗神拳」、『聖闘士星矢』なら「聖衣」、『未来少年コナン』なら「ギガント」、『風の谷のナウシカ』なら「巨神兵」、『天空の城ラピュタ』なら「飛空石」、『Ys』なら「シルバー(クレリア銀とも)」など。滅びた「古代文明」からなにがしかが現在まで遺されているのです。

 これらの遺物の存在こそが「古代文明」につながる鍵となっています。

 ここまで書いてきて「これを忘れていた!」というものが見つかりました。ハリソン・フォード氏主演、スティーブン・スピルバーグ氏監督『レイダース/失われた聖櫃アーク』(1981年)です。主人公はヘンリー・ウォルトン・ジョーンズ・ジュニア博士で、通称「インディアナ・ジョーンズ」。考古学者であり、モーセの十戒の書かれた石版を納めたユダヤの秘宝「失われた聖櫃アーク」を探し出す物語です。

 この「失われた聖櫃アーク」もまた「古代文明」につながる遺物、キーアイテムとなっています。

『レイダース/失われた聖櫃アーク』は、主人公ジョーンズ博士の行動を追っていくだけで「古代文明」に行き当たる、まさに「古代文明と再生」のお手本のような作品です。

 とくに主人公が考古学者で、「失われた聖櫃アーク」も冒険心を駆り立てられて探し出そうとしていました。だから主人公を追うだけで「古代文明と再生」の物語を体験できたのです。




古代文明と未来から見た現在

「古代文明」ものにはふたとおりあります。

 今の文明よりも前に栄えた文明である場合。『レイダース/失われた聖櫃』『聖闘士星矢』『天空の城ラピュタ』『Ys』のパターンです。

 現代人がそれとは知らず「古代文明」を探す旅に出ます。ひとつずつ手がかりを見つけ出し、鍵を握るアイテムや情報を手に入れるのです。そして古代にはこんなに豊かな文明があったのだと知ります。

 1980年代に一躍ブームとなった「ムー大陸」「アトランティス帝国」がまさに「古代文明」の舞台となり、耳目を集めました。そう考えるとアニメの庵野秀明氏『ふしぎの海のナディア』も、古代アトランティス帝国の超科学文明を利用して世界征服を企む秘密組織ネオアトランティスと、それを阻止しようとする万能潜水艦ノーチラス号の戦いを描いていましたね。「古代文明」との接点はノーチラス号とヒロインのナディアが持つ青い宝石「ブルーウォーター」です。

 であれば元ネタであるジュール・ヴェルヌ氏『海底二万里』も「古代文明」ものと言えます。

「古代文明」にはロマンがあるのです。

 中国で殷王朝の遺構が見つかったと聞いただけで、私はワクワクしてしまいました。エジプトで新しいピラミッドが発見された、というのも同じですね。

 これまで知られていなかった「古代文明」の真実に触れるだけで冒険心がくすぐられます。

 世界各地に存在する「海底神殿」の類いは「古代文明」を連想させる痕跡です。

 もうひとつが未来の文明から見て隔絶された現在の文明の場合。

『未来少年コナン』『北斗の拳』『風の谷のナウシカ』のパターンになります。今ならマンガの稲垣理一郎氏&Boishi氏『Dr.STONE』も当てはまるでしょう。

 未来から見て、現代文明は「古代文明」なのです。ちょっとした発想の転換が必要になります。

 なぜ現代文明が一度滅びてしまったのか。その設定を考えてみる。多くは核戦争なのですが、『Dr.STONE』のようにある日突然世界中が石化してしまう、というトンデモ設定で現代文明が「古代文明」化する作品も現れました。




再生と破滅

「古代文明」は発見するのがゴールとなりやすい。

 ですが中には「古代文明」を「再生」して世界を変える(元に戻す)物語もあります。

 私が初めて触れた『Ys』は、天空に浮かぶ国イースが地上に帰ってきて地上人が「古代文明」を知るきっかけとなったのです。

『Dr.STONE』は天才科学者が「古代文明」と化した現代文明を次々と復元していきます。人々は暮らしがじょじょに便利になっていくのです。

「古代文明」ものは必ずしも「再生」を必要とはしません。前述したようにただ「発見」するのがゴールでもかまわないのです。

 ですが、もし「再生」させようとしたら、いろいろと厄介な面がありますよね。

 そもそも「古代文明」を復活させてよいものかどうか。とある理由によって滅亡した「古代文明」の力を引き出せば、なにが起こるのか想定できません。それこそ「現代世界」が滅んでしまう可能性すらあります。

『レイダース/失われた聖櫃アーク』も、それを開けてしまったがために「悪い奴ら」は全滅してしまうのです。その危機を感じ取っていたジョーンズ博士は連れの女性に「なにがあっても目を閉じろ」と指示しています。

 古代の遺物はなにが起こるかわからないのです。もしかしたら異星人が遺した「ブービートラップ」かもしれません。間違って起動させたら地球が滅ぼされてしまいます。

 小説において「古代文明」の遺物は「滅亡へのスイッチ」となりやすいのです。

 あまりにも強大すぎる力が、現代人には制御できません。遺物を生み出した「古代文明」が滅んだ理由もそれに関係しているのかもしれない。

 現代世界において、「古代文明」の遺物なんてオーパーツのままでよいのです。こんなものが見つかった! というだけの反応でよいのです。使いこなそうとしたり、再生しようとしたりするがために、世界が滅亡してしまう物語はかなりあります。

 有名なところではアニメの富野由悠季氏『伝説巨神イデオン』でしょうか。「古代文明」の遺物であるイデオンやソロシップを見つけてしまったがために。彼らは手に余る力で追跡者から逃げ続ける羽目に陥りました。そんな逃亡の旅の果てには「全人類の滅亡」が待っていたのです。

 よく「皆殺しの富野」と呼ばれます。しかし「古代文明」の遺物は現代世界にどんなインパクトを与えるのでしょうか。その提起が多分に含まれている作品を多く書いてきたのが富野由悠季氏なのだと思います。『勇者ライディーン』も「古代文明」の遺物でしたからね。

 あなたの物語で「古代文明」やその遺物は「再生」させるべきものでしょうか。

「再生」させたがために起こる悲劇というものもあるはずです。

 変えられない運命や悲劇を書きたいときによく利用されるのが「古代文明」であり遺物なのかもしれません。我々は「古代文明」になにを求めているのでしょうか。





最後に

 今回は「物語26.古代文明と再生」について述べました。

 いつの時代どの国でも「古代文明」は人々を魅了します。

 ですが、そもそも強大な力を誇っていた「古代文明」が滅びたのには理由があるはずです。それもわからずに再生させようとするのはあまりにも危険だと思いませんか。

 人は興味本位で、わからない遺物を再生させようとしてしまうのです。

 それが人々を豊かにするのか、破滅をもたらすのか。

 当時を知らない私たちには想像もつきません。



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