1279.物語篇:物語24.青春と音楽
今回は「青春と音楽」の物語についてです。
面白いことに、「音楽」ものの物語を創るとなぜか「青春」が付いてまわります。
とくに「歌」を前面に立てると、「青春」が既定路線となるのです。
物語24.青春と音楽
最近アニメで多く見られる「アイドル」もの。
その発端はかきふらい氏『けいおん!』かもしれませんね。
「歌」を絡めたロボットアニメのビッグウエスト『マクロスF』の後に放送されたので、「歌」が力を持ち始めた時代でした。
今では『THE IDOL M@STER』シリーズや『ラブライブ!』シリーズ、『BanG Dream!』シリーズなどガールズユニット、ガールズバンドものがビッグヒットを飛ばしています。
ここまで書いたらアニメのサンライズ『超者ライディーン』、子安武人氏『ヴァイスクロイツ』なども男性アイドルものだったなぁと思い出しました。
歌は青春だ
「青春」を描く場合、最も単純なのが「バンド」ものです。
マンガだと実在のユニット「THE ALFEE」を描いた吉岡つとむ氏『ドリームジェネレーション〜ジ・アルフィー物語〜』というものがありました。第一巻が1987年に発売されているので、「音楽」ものでも古参と言えるでしょう。
その頃からすでに「音楽は青春を描くのに最適」だと見られていたのです。
アニメだと1982年にスタジオぬえ『超時空要塞マクロス』が作られています。現在マクロスシリーズの総監督を務める河森正治氏はメカニックデザイナーや脚本を担当していました。監督は『宇宙戦艦ヤマト』の石黒昇氏が務めていたのです。代表作に『メガゾーン23』『銀河英雄伝説』といった「歌」や「音楽」を効果的に用いた作品を手がけています。『マクロス』シリーズは今や『ガンダム』シリーズと比肩するロボットアニメの金字塔となっており、最新作『マクロスΔ』は完全新作『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の公開を控えているのです(新型コロナウイルス感染症拡大のため上映日未定)。
「マクロス」シリーズのヒットにより、アニメ市場に「歌」ものが増えていきます。
スタジオぴえろ『魔法の天使クリィミーマミ』はアイドル歌手にフィーチャーしましたし、『マクロス7』後に前出の『超者ライディーン』『ヴァイスクロイツ』、『マクロスF』後に『けいおん!』『THE IDOL M@STER』『ラブライブ!』、『マクロスΔ』後に『BanG Dream!』といった具合です。
ではそもそもなぜ「青春」を描くのに「歌」「音楽」が注目を集めるのでしょうか。
これは『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のヒットが大きな鍵を握っています。
最終決戦の場面に流れた表題曲の飯島真理氏『愛・おぼえていますか』。これがアニメ界初、TBS『ザ・ベストテン』で歌われて、音楽業界に衝撃を与えました。とにかく歌詞がよい、楽曲がよい、歌声がよい。アニメなのにクオリティーは当時のアイドル歌手と遜色がなかったのです。
それもそのはず、アイドル歌手に楽曲を数多く提供していた安井かずみ氏作詞&加藤和彦氏作曲という最強制作陣で楽曲のレベルが高かった。それに飯島真理氏は国立音楽大学音楽学部ピアノ科に在籍していたほどで、同劇場版エンディング『天使の絵の具』は飯島真理氏の作詞作曲なのです。つまりシンガソングライターが声優をやっていたという画期的なアニメ映画に仕上がりました。
さらに物語は戦闘機パイロットの主人公・一条輝とアイドル歌手リン・ミンメイ、ブリッジオペレーターの早瀬未沙の三角関係を主軸にしたラブストーリーです。つまり「バトル」ものの中でしっかりと「青春」していました。
しかも『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』は1984年7月21日公開と、最初に挙げたマンガの『ドリームジェネレーション』よりも前の話です。
「マクロス」シリーズがアニメやマンガそのものを大きく変えました。
「青春」を「歌」に託した演出は、その後数多くのアニメが影響されました。
とくに「マクロス」シリーズの出発点となった『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督も『重戦機エルガイム』で女性ボーカルを起用するなど影響もかなり受けたようです。それまでのロボットアニメは男性ボーカルの力強い歌声が主流でした。『重戦機エルガイム』は女性ボーカルのMIO氏と鮎川麻弥氏が担当しています。その流れで『機動戦士Ζガンダム』も鮎川麻弥氏と森口博子氏が担当しているのです。
世の中には「ゲームチェンジャー」と呼ばれる人物や作品が必ず現れます。それまでの流れをガラリと変えてしまうのです。「マクロス」シリーズは間違いなくアニメ業界の「ゲームチェンジャー」と言えます。
ガールズバンドやアイドルユニットへの「ゲームチェンジャー」は『けいおん!』でした。『けいおん!』が「青春」ものに「日常」ものを加えて成功を収めます。ここから「歌」「音楽」は「青春」「日常」ものに欠かせない要素となったのです。
青春小説と音楽
実は小説と音楽は殊のほか相性が悪い。
なにせ小説は文字だけの娯楽であって、テンポもリズムも音程もわかりません。
そこで「誰々のなんという曲が流れてきた。」のような書き方をして物語のBGMにしてしまう手を思いついた書き手がいました。つまり逃げを打ったわけです。
しかし音楽と直接向かい合って成功した作品があります。恩田陸氏『蜜蜂と遠雷』です。2017年に直木三十五賞と本屋大賞のダブル受賞を果たしました。国際ピアノコンクールを舞台に、若きピアニスト四人の葛藤や成長を描いた「青春」小説。まさに名作です。
また武田綾乃氏『響け! ユーフォニアム』シリーズは京都アニメーションでアニメ化・アニメ映画化もされました。こちらも「青春」ですね。
また映画の矢口史靖氏『スウィングガールズ』も落ちこぼれ女子高生たちがビッグバンドを組んでジャズを演奏しており、のちに同氏のノベライズが発売されています。
やはり「音楽」を題材にすると「青春」が付いてくるようですね。
私も「音楽」を題材に短編連作の『ホワイトナイト』シリーズを書いています。やはり「青春」ものですね。
音楽バンドを組むと仮定して、社会人だとなかなか集まって練習できませんよね。でも学生なら部活動でやる時間はありますし、同好の士とバンドを結成するのも自然な流れです。
つまり「音楽」をやりきるには「学生」であるべき。だから「音楽」は「青春」なのだと思います。
しかし社会人がバンドを組んだってよいではないか。
でもそれって傍から見て「第二の青春」とか言われてしまうわけですよ。
結局は「青春」ものになってしまいます。
それなら最初から抗わずに「青春」ものを書いたほうがよい。
それが第一だろうと第二だろうと第三だろうと……ラジオ体操じゃあるまいし。
「歌」「音楽」を題材にした小説は「青春」ものになる。では逆はどうでしょうか。「青春」ものと言えば「歌」「音楽」でしょうか。違いますよね。「スポーツ」に懸ける「青春」だってあるはずです。まぁ「勉強」だけして過ごした「青春」は振り返ると味けなさすぎますけどね。
最後に
今回は「物語24.青春と歌曲」について述べました。
物語に「歌」「音楽」の要素を取り入れると「青春」ものになる。これは定理です。ただ、「推理」の謎を解く鍵が「音楽」という手もあります。
ただ「青春」ものはすべて「歌」「音楽」の要素を取り入れているわけではありません。
この因果関係を押さえておけば、小説に「歌」「音楽」を取り入れるのも不可能ではないのです。
ぜひ「音楽」で「青春」しちゃってください。
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