1259.物語篇:物語4.王子と姫

「異世界ファンタジー」なら定番の「王子と姫」の物語。

 ですが現代ものにして「財閥の息子と一般女性」でもかまいません。

 男性のほうが身分が高ければよしとします。





物語4.王子と姫


「王子と姫」の物語も鉄板でしょう。

「王子」は文字どおり「王族の息子」であるパターンと、「貴族の息子」の「貴公子」のパターンがあります。生まれが人並み以上であれば「王子」と考えてかまいません。

「姫」はどこかの王族の娘でもよいし、貴族の娘でもよい。逆に下賤の娘も「あり」です。

 とにかく「男性のほうが女性よりも立場が上」なら「王子と姫」の物語になります。




王子が主人公なら

「王子」は文字どおり「王の息子」か、一段落とした「貴公子」と相場が決まっています。

 彼らは囚われの姫を救い出すために行動を起こすのです。

 こう書くと「ロマンス」の香りがするかもしれませんね。それは「姫」側から見たときの話です。

「王子」側は純粋に「姫」の救出をしたいと考えているにすぎません。「姫」を家族の元へ帰したらそこでミッション終了となります。

「王子」が欲しいのは名声です。誰もが成し遂げられなかった困難な任務を完遂する。それ自体が彼の勲章となります。

 ギリシャ神話で神に認められた勇者ペルセウスが、ペガサスに乗ってアンドロメダ姫を救出するエピソードはまさに「王子と姫」の物語です。

 ただ昨今のライトノベルには、純粋な「王子と姫」の構図は見られません。たいていが「パロディー」となっています。

「王子」が道化で、「勇者」の前で「姫」を助けようとしてドジを踏む。そこで「勇者」が「姫」を救出して王国へ連れ帰る。

「王子」と「勇者」が両立するライトノベル世界ではよく見られる事態です。

「勇者」は「選ばれし血族」ですが、「王子」も国王の血を引くので「選ばれし血族」と定義できます。そこで「王子」を「勇者」にする物語が生まれました。

 本来別の存在なのですが「王子」が「選ばれし血族」である以上、もし父王が「勇者」であれば「王子」も勇者の血を引く存在です。

 水野良氏『魔法戦士リウイ』シリーズの主人公リウイは魔術師ギルドの最高導師兼宮廷魔術師を務めた“偉大なる”カーウェスの養い子として登場します。しかし実は偉大な冒険者であった国王リジャールの血を引く庶子という設定です。庶子の設定が活かされるのは『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』シリーズにおいてですが、前日譚である『魔法戦士リウイ』でもたびたび言及されています。まぁ『魔法戦士リウイ』においては助けるべき「姫」は少ないのですが。隣国である魔法王国ラムリアースの王族通称エリスことエリスティアからの任務を「王子(庶子)」のリウイたちが遂行する形で助けています。

 注意したいのが「王子」が主人公の場合、恋愛ものになる作品は少ないように見受けられる点です。

 このあたりはマンガの北条司氏『CITY HUNTER』の冴羽リョウが物語の「王子」格で、依頼人の美女が「姫」役を演じるパターンが卑近でしょうか。




姫が主人公なら

「王子と姫」の物語では主人公は「姫」と相場が決まっています。

 簡単にいえば「白馬の王子様」を心待ちにする「乙女」の物語です。

「王子と姫」で「姫」が主人公の場合、多くは恋愛ものの物語になります。

 最も有名なのは『シンデレラ』でしょう。家庭内では継母や義姉妹から下女扱いされています。しかし彼女たちが王子様が参加する舞踏会に行くくらいには裕福な家庭です。つまりシンデレラは曲がりなりにも「姫」だと言えます。

 シンデレラは「姫」なのですが、「シンデレラ・シンドローム」の少女・女性は一般人がほとんどでしょう。「下女扱い」という一点で「下賤の身」と思い込んでいるだけです。

『白雪姫』も「姫を王子が助ける」物語ですが、「王子」が助けに来るまで「姫」は身動きできません。この場合は恋愛ものでも「王子」が主人公と考えてよいでしょう。

「王子と姫」の「王子」は身分が高ければよいので、「王子」「貴公子」などの他、ダイレクトに「国王」そのものも「あり」です。

 小野不由美氏『十二国記』も歴史ものですが、数々の恋愛模様を描いた作品になっています。女性向けの文芸として不動の人気を誇る理由も、やはり「王子と姫」の根本がしっかりしているからでしょう。

 これらの変形として「悪役令嬢」が生まれました。恋愛ゲームで破滅フラグしかない「悪役令嬢」が玉の輿を狙うパターン。小説投稿サイトでビッグヒットを飛ばして幾多の作品が「紙の書籍」化されていくほどの人気物語となりました。

「姫救出」は男性の「王子」側ではエピソードのひとつにすぎずゴールではありません。しかし女性の「姫」側では「恋愛もの」で「成就」「離別」がひとつのゴールとなります。

 多くの恋愛ものが女性主人公なのも、「姫」が「白馬の王子様」を待っている構図が女性の読み手に共感されるからでしょう。




じゃじゃ馬姫

「王子と姫」のパターンに「じゃじゃ馬姫」の物語があります。

 おしとやかな「姫」が多い中、「じゃじゃ馬姫」は人間関係をとにかく激変させていきます。

 もちろん意中の「王子」はいるものの、結婚して家庭に収まるのをよしとせず、社会で活躍する道を選ぶのです。

 マンガの大和和紀氏『はいからさんが通る』の主人公・花村紅緒やマンガの水木杏子氏&いがらしゆみこ氏『キャンディ・キャンディ』のキャンディス・ホワイト・アードレーも「じゃじゃ馬姫」と言えます。

 通常「王子と姫」の物語では、「王子」が格上で、「姫」がそれに劣るというのが定型です。とくに「姫」が「深窓の令嬢」タイプなら行動的でないため、物語で目立ちにくい。

 しかし「じゃじゃ馬姫」は格上の「王子」が劣る「姫」に振りまわされる、力関係が逆転したパターン。

「王子」が主人公の小説では「深窓の令嬢」を思い浮かべるものです。しかし「姫」が主人公なら読み手の等身大は確実にウケます。

「王子と姫」の物語でも「姫」が主人公なら「深窓の令嬢」よりも「じゃじゃ馬姫」のほうがはるかに書きやすいはずです。波乱が起きていてもおしとやかに対処していたら、読み手が飽きてしまいます。活発に動きまわる「じゃじゃ馬姫」はひじょうに行動的です。波乱があったらすぐ行動に移す。それが読み手に活力を与えます。まぁあえてそういったまったりとした雰囲気の小説にもファンは一定数つくので、まったく駄目なわけではありません。

 マンガの美内すずえ氏『ガラスの仮面』の主人公・北島マヤはひじょうに行動的な女の子です。対になる存在である「王子」は“紫のバラの人”である大都芸能社長の速水真澄。ひじょうに冷徹な辣腕社長である真澄が、「じゃじゃ馬姫」であるマヤに翻弄され、次第に惹かれていく。主人公が「じゃじゃ馬姫」の典型的なパターンになっています。

 男性は「姫」に「深窓の令嬢」を求め、女性は「姫」に「等身大」を求める。だから「じゃじゃ馬姫」は女性ウケするのです。





最後に

 今回は「物語4.王子と姫」について述べました。

 主に「王子」が主人公で「深窓の令嬢」の「姫」を救い出す物語と、「じゃじゃ馬姫」が主人公で「王子」を振りまわして楽しませる物語があります。

 読み手層を想定して「姫」の性格を決めるとウケやすい作品に仕上がるでしょう。



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