1257.物語篇:物語2.神と巨人
今回は「神と巨人」の物語です。
世界中の神話に登場する「巨人」ですが、なぜ「神」ではなく「巨人」だったのでしょうか。
おそらく他宗教の「神」は「悪魔」にしてしまったから、土着宗教の「神」は神通力を持たない「巨人」にしてしまおう、と思ったのではないでしょうか。
物語2.神と巨人
「神と巨人」による最終決戦で幕が下りる神話が世界各地にあります。
それほど超越者「神」とそれに対抗するだけの体躯を持った「巨人」は題材として扱いやすいのです。
神話に見る最終決戦
ギリシャ神話では主神ゼウスら「神」たちに対して「巨人」たちが反乱を起こしたギガントマキアと呼ばれる大戦が起こりました。
これにより神々は勢力を著しく落としたのです。
そして巨大な魔物テュポーンと主神ゼウスとの戦いによりギリシャ神話は幕を下ろすのです。
北欧神話では大神オーディンらが、霜の巨人族ヨトゥンとの最終決戦ラグナロクによって主だった神々が巨人たちと相討ちとなります。世界樹は炎に包まれて海に沈み、オーディンたちが支配する世の中は終わりを告げたのです。
ケルト神話も巨人フォモール族が神々を倒してエリンの地を支配します。フォモール族の王・邪眼のバロールを、光の神ルーが倒したことでその支配が終わりを告げたのです。その後しばらくしてエリンの外からやってきた部族によって神々は地下世界へと追放されました。
このように、神話では「神」と「巨人」は同格とされていたのです。
そのためか「神と巨人」の物語が数多く残されています。
神話では鉄板の「神と巨人」ですが、小説ではほとんど見られません。
「貴族と蛮族」の構図そのものだからです。
たとえば「中華と夷狄」との関係と大差ありません。
神が主人公なら
「神」が主人公になることはほとんどありません。これは前回にも語りましたね。
私たち人間が読む物語で「神」が主人公になると理解しづらいからです。
ですが相手が明確な敵である「悪魔」とは異なり、子どもも設けられる「巨人」なので、「神と巨人の子」として主人公になる場合があります。
ケルト神話の光の神ルーも「神と巨人の子」として生まれ、巨人の父を投石器で
このように「神と巨人の子」が主人公になるケースはいくつか見受けられます。
ですが「神」の側から物語を書きたい場合、主人公が「神」であってもかまいません。その代わり全知全能だけは避けましょう。なにかに特化した「神」なら物語が広がりやすいのでオススメです。
狩猟の神と巨人族なら、光の神ルーのように大戦で巨人族の王を射殺すのも物語に映えます。
美の女神なら巨人族からも求婚が殺到するでしょう。こちらも面白い物語になりそうです。
巨人が主人公なら
実は「神と巨人」の物語を巨人側から書いたものはまずありません。
「神」にはたいてい一芸がありますし、威厳も感じられます。
しかし「巨人」はただ体の大きな人間のようなものです。どこにも華がありません。
かといって「巨人」に一芸を持たせてしまうと、「神」のような存在になってしまいます。そうすると「神と悪魔」と似た構図になるのです。ちょっと厄介なところがあります。
そこで主人公は「神に憧れている巨人」になりがちです。
結果として「巨人が神と恋愛する、結婚する」物語が生まれます。これは各々の神話にも登場するので、本当に古典的な物語です。
「可愛さ余って憎さ百倍」
「神に憧れる」がために、神々を滅ぼそうとする巨人もいます。
そうなればティタノマキアやラグナロク、マグ・トゥレドの戦いなど、神々と巨人族との存亡を懸けた戦いへと発展していくのです。
ですが神々と巨人族の戦いを原稿用紙三百枚・十万字の長編小説で著すのはまずできません。
そこで神のひと柱と巨人の戦いを描き、それが全体を巻き込んだ大戦へとつながっていく。その契機としての戦いだけを書く手法があります。
これなら長編小説に収まりますし、連載小説化も容易です。しかも最終決戦まで含めたら単行本十巻はかるく超えるくらいの連載にもできます。もちろん面白くて売れる作品でなければなりませんが。
その点さえクリアできれば、「巨人」の主人公でもさまざまな物語が作れます。
神と巨人の問題点
「神と巨人」の物語で最も気をつけたいのが「作品のスケール」です。
どうしてもスケールが大きくなりすぎてしまうのが玉に瑕。
なにせ世界を支配する「神」と体が大きい「巨人」ですから、どうしても物語が大きくなりやすい。
そのぶん人類が小さな存在になりがちなので、もし主人公を人類にした「神と巨人」の物語なら、人類が置かれている苦境を丁寧に書きましょう。
「巨人」を「巨大ロボット」にして物語を成立させたアニメも多いですね。
嚆矢となった『鉄人28号』『マジンガーZ』は「巨人」を「巨大ロボット」で代用して、特殊能力を持つ「神」のような存在と戦いました。「巨大ロボット」側にはあまり属性がないのも特徴です。ただの力押しで勝ててしまう単純な流れではありますが、それだけに子どもには大ウケしました。
このように「神」がつねに善とはかぎりません。邪な神もいますし、魔族を従えた神もいます。正義がいずれの側にあるのか。それだけでも面白い物語への可能性は広がります。
スケールにさえ気をつければ、読み手を惹き込みやすいのも「神と巨人」の物語の特徴です。人間はちっぽけな存在であり、大きなものに憧れを抱きます。
北欧神話の「神」と「巨人」はそれぞれ人間サイズまで小さくなれるのです。もちろん「神」のサイズにも「巨人」のサイズにもなれます。
これにより「人」「神」「巨人」の間に子どもが生まれることがあるのです。それがさらに物語を複雑化させます。
「人」を出さない「神と巨人」の物語なら十万字に収められるかもしれない。でもかなり難しいのは確実です。
「神と巨人」はさまざまな能力を持つ「神」と特殊能力を持たない「巨人」とのやりとりが主流になります。それが恋愛だったり戦争だったりするだけです。現実世界になぞらえれば「異種族」との交流に近いでしょう。
最後に
今回は「物語2.神と巨人」について述べました。
サイズが大きくなっただけで、「能力者」と「凡人」、「自国民」と「異民族」との交流と言えなくもありません。
壮大な物語よりも十万字に収まる平凡な物語がよいのであれば、「能力者」と「凡人」に当てはめて考えましょう。
たとえば「超能力者」と「一般人」の組み合わせ。「超能力者」はなんでも自分でできますが、「一般人」には理解されませんし迫害もされます。だから「超能力者」は自らの能力を秘めておくのです。秘めた超能力を肝心な場面で使う物語。
これなら十万字で書けそうですよね。
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