1239.学習篇:小説を読ませてはならない
今回は「小説は読むものではない」ことについてです。
絵と違って文字で書かれているのだから、読まなければ内容が入ってこない。
確かにそうなのですが、読まされていると気づかれない配慮が必要です。
小説を読ませてはならない
今回のサブタイトルほど頭に「?」マークが浮かぶものも珍しいですね。
たまにこういう奇抜な投稿も有意義だと思っています。
あなたが書いた小説は、誰にも読んでもらわなくてかまわない、と言っているわけではありません。
できるだけ多くの方に読んでもらったほうが断然よいのです。
では、なぜ「小説を読ませてはならない」のでしょうか。
できるだけ多くの方に読まれるには
小説を読んでもらうには「話題性」が不可欠です。
「紙の書籍」の小説なら「表紙買い」もありえます。しかし小説投稿サイトのほとんどは「表紙絵」が付けられません。
では読み手にどうやって気づいてもらうのか。
主に三つの導線があります。
「ランキングに載る」のは難しい。
ですが、多くの読み手はここから読みたい作品を選んでいます。
矛盾しているようですが、多くの方に読んでもらうためには「多くの方に読まれて評価してもらう」のです。ランキングポイントがある程度たまれば「ランキング」に載れます。
これにより一度「ランキング」に載れば、さらに多くの方に読まれる可能性が高まるのです。
簡単に言えば「百人が評価してランクインしたので一万人に読まれた」というパターンだと思ってください。
しかしこの「百人が評価」というのがミソです。よほど名の通った書き手でなければ、新連載が「百人」もの方に読まれるなどということはありえません。
そこで次の導線が検討されます。
「レビューが書かれる」のもなかなか難しいですが、「ランキングに載る」よりははるかにラクです。
たったひとりに読まれても、その方に「面白い」と思ってもらって「レビュー」を書いてもらえば「新着レビュー」欄に載れます。
多くの読み手はランキングの中から読みたくなった作品を読むのです。しかし埋もれた作品が好きな方は「高評価のレビューが付いた作品」を厳選して読みます。
「ランキングにはない隠れた名作」を読むのが好きだからレビューに注目するわけです。
しかし誰にも注目されていない作品まで読むつもりはなく、誰かが「これはいい!」とオススメしたものだけを読みます。書店でPOPが書かれている作品を買う方に多い傾向です。オススメされるとつい気を惹かれてしまう。オススメされないと気が向かない。独自の価値観を持っていないとも言えますが、できるだけ手間をかけずに良作と出会うには向いています。
「新着一覧を片っ端から読む」方も実はかなりいらっしゃいます。
とくに投稿本数の少ない新興の小説投稿サイト『カクヨム』『ノベルアップ+』には大勢いらっしゃいます。投稿本数が多い『小説家になろう』『エブリスタ』でも、ジャンルとキーワードを絞れば、手当たり次第に読む方がいらっしゃるのです。
それでも自分の書いた小説の閲覧数がゼロなんだけど。という方もいますよね。
それはジャンルが悪いかキーワードが適切ではないかです。
あまり読まれないジャンルは読み手も少ないのですが、投稿本数そのものが少ないため、手当たり次第に読む方が意外と多い。よく読まれるジャンルのほうがかえって読まれにくいのです。
たとえば『小説家になろう』『カクヨム』の「ハイファンタジー」「異世界ファンタジー」は投稿本数が他ジャンルとは桁違い。あれだけあるとキーワードで絞り込まないと「手当たり次第」とはいきません。
とこのように三つの導線で小説は読まれていきます。
読んでいることを忘れさせる
しかし「小説を読んでいる」と感じさせるのは得策ではありません。
初話は「小説を読もう」でなければ読まれないものですが、二話以降は「小説を読もう」と思わせてはならないのです。
「物語を楽しもう」「この先どうなるんだろう」と思ってもらえたら大成功と言えます。
「小説を読む」行為は読み手の自発に任せられます。
しかし「物語を楽しもう」「この先どうなるんだろう」は「欲求」です。
「欲求」を抑え込めるほどの人格者はなかなかいません。
一度「欲求」が高まると、どうしてもそれが気になるのです。
「この小説が読みたい」と自発的に行動してもらうには、あらすじで惹かなければなりません。
そして初話で「物語を楽しもう」「この先どうなるんだろう」と「欲求」が高まるように物語を演出してください。
初話だけで満足されてしまったら、次話以降はまったく読まれません。なにせ初話で満足しているのですから、あえて続きを読むまでもない。
初話に「謎」が書いてある。すると読み手は「答え」が知りたくなります。
すると次話は「小説を読む」意識より「答えが知りたい」欲求が高まるのです。
「欲求」が高まると、「今日もこの小説を読もうかな」よりも「今日はどんな展開かな?」と投稿を楽しみにしてくれます。
サブタイトルの「小説を読ませてはならない」の真意は、読み手に「小説を読もうかな」と押し付けないこと。「今日はどんな展開かな?」と投稿を楽しみに待ってくれるように工夫してください。
「小説を読ませよう」という意識は捨ててください。
「物語を楽しんでくれますように」と演出に注意を払いましょう。
「小説を読ませる」のではなく「物語を楽しくさせる」のです。
読みたくてたまらなくさせるのです。
いつまで経っても「小説を読ませよう」の意識では、いずれ誰にも読まれなくなります。
あなたが読ませたいのは「文章」でしょうか、「物語」でしょうか。
記号としての主人公や登場人物では誰も楽しんでくれません。
魂のある生き生きとした主人公や登場人物なら、誰もが楽しんで読んでくれます。
どんなに巧みな筆致であろうと、「小説を読ませよう」と思っているうちはすべてのものが記号でしかないのです。
「物語を楽しませよう」と意図して「謎」を埋め込んでいけば、自然と面白くなっていきます。
「謎」と「答え」のチェーンが、「物語を楽しませよう」とする書き手が仕掛けるべきことです。
わかりやすく例を出します。
推理マンガの双璧である天樹征丸氏&さとうふみや氏『金田一少年の事件簿』と、青山剛昌氏『名探偵コナン』の違いがわかるでしょうか。
『金田一少年の事件簿』は連続殺人がメインで、基本的にひとつのシリーズが終われば物語も途切れます。
しかし『名探偵コナン』にはひとつの大きな「謎」がある。通称「黒の組織」です。この大きな「謎」が解けないかぎり物語も続いていきます。
これが『金田一少年の事件簿』の連載が先に始まったのに、『名探偵コナン』よりも先に連載が終わった原因です。
『金田一少年の事件簿』には大きな「謎」がなかった。だから「物語を楽しませよう」より「推理を読ませよう」という動機で書かれた作品なのです。
これはおそらく天樹征丸氏&さとうふみや氏と青山剛昌氏も気づいていなかったでしょう。
しかし大きな「謎」こそが、読み手に「物語を楽しませた」のです。
シリーズ区切りの『金田一少年の事件簿』が短命で終わり、大きな「謎」を持つ『名探偵コナン』が長命で生き残った理由。
それこそが「マンガを読ませよう」ではなく「物語を楽しませよう」とした構想の動機なのではないでしょうか。
最後に
今回は「小説を読ませてはならない」について述べました。
読ませるのは「物語」であって「小説の文章」そのものではないのです。
そこを見誤ると、読み手はなかなか定着してくれません。
多くの方にブックマークされるには、「小説の文章」ではなく「物語」を読ませてください。
「物語」を読ませるには「謎」を用意するのです。できれば作品全体に通底する大きな「謎」があると、どれほど長い連載であっても読み手はついてきてくれます。
大きな「謎」がないと、物語がひと区切りついたところで読み手は潮を引くように去っていくのです。
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