1233.学習篇:睡眠は最高の学習効果を生む

 今回は「睡眠の効用」についてです。

 受験生や新入社員などは勉強や残業で睡眠時間を削られてしまいます。

 それで効果があればよいのですが、たいていは翌日も同じ生活が待っているのです。

 勉強や残業をしないためには「よく寝ま」しょう。





睡眠は最高の学習効果を生む


 受験や資格試験で、夜を徹して勉強されている方もいらっしゃるでしょう。

 睡眠時間を削ってでも勉強しなければ合格できないと思い込んでいます。

 しかし睡眠をしっかりとらないと、そもそも物事を憶えられないように出来ているのが人間なのです。




睡眠には記憶を整理する機能がある

 人間はとても効率的に出来ています。

 物事を記憶するのも、本来なら効率的に行なわれるものです。

 しかし現実に学習してもなかなか憶えられない事態は発生します。

 なぜいくら学習しても憶えられないのでしょうか。

 その多くは「睡眠が不足している」からです。

 睡眠は脳と体を休めるために行なうもの、というイメージが強い。

 確かにそれもあります。

 ただし脳はただ休むだけでなく、これまで学んできたものを整理してもいるのです。

 人の睡眠は大きく「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に分けられます。

 人はまず脳も体も休む「ノンレム睡眠」を始めます。それから四十五分後に体は休めたままで脳が起きる「レム睡眠」へ移行するのです。この時間も四十五分間。

 では体は休めたままで脳が起きる「レム睡眠」ではなにが起こっているのでしょうか。

 眠っているのに眼球が動いたり夢を見たりします。そうなのです。夢を見るためには最低でも四十五分以上眠って「レム睡眠」をとらないといけません。

 それだけでなく、記憶の整理を始めるのも「レム睡眠」への移行期に見られる特徴です。

 つまり睡眠を削ってまで勉強しても、記憶が整理されないため脳に定着するはずもありません。

 日中にいくら繰り返し記憶に刷り込もうとも、眠らなければ定着しません。憶えていられるのは記憶を意識している間だけです。そこに割り込み仕事が入ると、たいていの方は先ほど記憶していた事柄を忘れます。

 これはあなたの記憶力が悪いわけではないのです。

 記憶を維持しようと意識していなければ、ワーキングメモリーからそれらが消えてしまって思い出せなくなります。

 記憶に注力しなければ忘れてしまう。

 これ、当たり前なのです。

 学校の試験で、開始時間ギリギリまで教科書やノートを読んで、少しでも点数を上げたいと思いますよね。これはとても有意義。憶えようと集中し、試験問題に出てきたらすぐにワーキングメモリーから引っ張り出せるのです。これで点数を稼いだ方も多かったはずです。

 これは「憶えよう」と集中し、それが途切れないうちに問題を解くから「憶えていられる」のです。試験が終わったら、いや問題を解き終えたら、途端に記憶から消えていきます。

 学年末試験の際に苦労するのは、「憶えていなければならない」ものが多すぎてワーキングメモリーがすぐに埋まってしまうからです。そこでヤマを張ります。「ここが出るんじゃないか」とあたりをつけるわけです。


 しかし学習して睡眠をとると、記憶が整理されて格段に憶えていられるようになります。

 その過程で見るのが「夢」です。

「夢は願望の現れ」との立場から精神科医ジークムント・フロイト氏は『夢判断』の研究を発表しました。しかし現代の脳科学ではおおかた否定されています。

 脳科学では「記憶を整理し定着する過程で、それに関連した情報がリンクされて意識に表れるのが夢」という判断です。

 たとえば「potato」という単語を憶えようとします。

 読みは「ポテト」で意味は「じゃがいも」。「じゃがいもは畑の土の下に塊でなっている」「チップス」「フライド・ポテト」のように揚げて食べてもおいしい。「肉じゃが」「シチュー」「カレーライス」のように茹でたり煮込んだりしてもおいしい。芽には毒性がある。

 と、このくらいの情報を付加して憶えると、シナプスがたくさんつながりますから、覚えやすくなります。

 その日の夢では「大自然の畑」「チップス」「フライド・ポテト」「肉じゃが」「シチュー」「カレーライス」「人が死ぬ」が思い浮かんでもまったく不思議はないのです。

「potato」という単語が脳に定着する過程で、意識に浮かんでくるのは、憶えようとしたときの脳内に広がる風景や光景。そのイメージが「夢」となって現れるのです。

 そして「夢」の形で、脳はその単語を憶えたと表層意識にシグナルを送ってきます。もし「夢」を見なければ、憶えていないのです。

 だから憶えるものがたくさんあったら、その日見た夢の内容と昨日勉強した内容を突き合わせてみてください。「夢」に出てきたら憶えている。出てこなければ憶えていないので、もう一度憶え直す。

 ただし、夢は深く眠っているとほとんど見ません。見ないけれども脳内の記憶はきちんと整理されています。

 実はこのとき「夢」を見ているのですが、「夢」を見ているときに起きなければ「夢」を見たという記憶が残らないのです。

 つまり「ノンレム睡眠」のときに叩き起こされると「夢」は見ません。朝方に寝床でまどろんでいるようなときは、確実に「夢」を見ます。「レム睡眠」でいつでも起きられる意識のある睡眠状態だからこそ「夢」を記憶できるのです。


 そもそもあなたが幼稚園児・保育園児だったとき、「お昼寝の時間」が必ずありましたよね。なぜしていたのか考えたことがありますか。

 あれは上記したように「記憶を定着させる」ためです。

 幼稚園・保育園で児童は、大量の新しい情報を与えられています。そのままでは脳の整理が追いつかないので、昼寝して要るものと要らないものを分けて脳に記憶させていくのです。

 赤ちゃんはほとんどの時間寝ていますよね。あれも人物識別や言語習得など大量の情報を脳へ記憶させるために寝ているのです。


 大人になった今でも、睡眠を軽んじてはなりません。

 記憶を定着させたければ、学習したら寝てください。睡眠こそが最強の「暗記ツール」なのです。

 だから宵越しまで学習するべきではありません。

 人間の生理では、午前〇時から午前二時までの間は睡眠していたほうが効果的と言われています。

 つまり午後十一時くらいには寝床へ入っているべきです。

 寝入る時間はオススメできますが、眠る時間は人それぞれ差があります。

 一般的に七時間半睡眠が推奨されていますが、人によっては三時間あればよいと豪語する方もいらっしゃるのです。

 しかしここで他人のマネから三時間睡眠をとるのは間違い。

 あなたにとって最良の睡眠時間を見つけなければなりません。八時間睡眠をとれば記憶の定着と脳と体の回復が万全整う方もいます。

 現在のパフォーマンスがよくないと思ったら、まず睡眠時間を見直してください。

 長くしてみたり短くしてみたり。最適な睡眠時間が見つかると、後顧の憂いなく学習に取り組めます。

 そう考えると、頭のよさも睡眠時間に影響されているのかもしれませんね。





最後に

 今回は「睡眠は最高の学習効果を生む」について述べました。

 睡眠時に音声を聴いて憶える「睡眠学習」をしろと言っているわけではありません。むしろ安眠できなくて効率が落ちる可能性もあります。

 日中たくさん学習したら、睡眠時間もたっぷりとりましょう。

 眠っている間に脳が情報を整理して、記憶に残してくれます。

 憶えるのが苦手な人は、睡眠と関係があるのかもしれません。

 一度、自身の睡眠が適正か試してみませんか。



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