学習篇〜いかに効率よくものにするか
1223.学習篇:さまざまな知識を憶えるには
今回から「学習篇」を始めます。
内容自体は数回前から「学習篇」だったのですが、替え時が見つかりませんでした。
「学習」とは「知識を憶える」ことです。
どうすればさまざまな知識を憶えられるのでしょうか。
さまざまな知識を憶えるには
勉強をすれば知識が手に入ります。
しかし目標が試験合格だけだと、試験が終わったあとにはなにも残りません。ほとんど忘れてしまうでしょう。
せっかく身につけた知識をいつまでも憶えていたいのなら、将来に直結する知識を選んでください。
一度憶えた知識を忘れないために
数年前から、空前の「学び直し」ブームです。
最近では新型コロナウイルス感染症による外出自粛要請を期に「学び直し」する方も多いでしょう。
小学校や中学校の科目を学び直して、基礎的な知識をもう一度憶え直す。
高等教育の知識を憶え直すためにも、小中の基礎知識は不可欠です。それが前提の理論や法則もありますからね。
「アフター・コロナ」と呼ばれる新しい生活様式において出世するなら、なにか資格を持っていたほうがよい。その資格にも相応の知識が求められるため、「学び直し」の需要はいっそう高まっています。
では、一度憶えた知識を忘れないためにはどうすればよいのでしょうか。
同じ知識を要求される問題集をたくさんこなすのです。
ひとつの問題集を何度も解く場合、最初はよいのですが二回目以降は「答えの記憶」が働いてしまいます。「この問題の答えはこれだ」と紐づいてしまうのです。
その点「同じ知識を要求される問題集」を何冊もたくさんこなせば、毎回違った角度から知識を引っ張ってこないといけないので、記憶の定着率が格段に高まります。
たとえば中学二年の教科書を一冊憶えたら、各社が出版している中学二年の問題集をたくさん買ってくればよいのです。たとえば十種類買えたら、十の方向から知識にアクセスできます。
でも十種類を解き終わったら知識がなくなるのではないか。
そうお思いになるかもしれません。
安心してください。中学二年の知識なら高校受験の問題集を買ってくれば、中学三年間ぶんの知識が要求されますから、再び知識にアクセスできます。
もし知識が思い出せなければ、教科書からその部分をもう一度学び直せばよいのです。そうしてまた多種類の問題集で記憶にアクセスして、高校受験の問題集できっちりと脳に刻みつけましょう。
義務教育ぶんの「学び直し」が終われば、もう一度教科書と問題集、受験問題集を解いて、完璧ならいよいよ高等教育へと進むのです。
高等教育は完璧な義務教育の知識を求められます。
記憶は消えない
これだけ手順を踏んでもなお義務教育ぶんの「学び直し」が進まないのであれば、すでに脳内にある知識が間違っているのです。間違って憶えてしまっているがゆえに、「学び直し」で違和感を覚えても記憶が優先されてしまいます。
実は一度記憶に定着した知識は、よほどのことがないかぎり修正できません。「刷り込み」と同じ原理です。最初に触れた知識が「真実」だと思いこんでしまうのです。
すでに憶えてしまったものを、消して上書きできるほど、人間の脳は便利に出来ていません。
「間違って憶えている」場合は、無理に記憶から消して憶え直す必要なんてないのです。
今「間違って憶えている」知識に引っかける形で、「ここはこう憶えているけど、正解はこれなんだよね」と憶えましょう。
この方法は、人間の生理上不可能な「記憶を消す」必要がありません。
たとえば「りんごの生産量日本一は長野県」と間違って憶えていたとしましょう。その場合は「りんごの生産量日本一は長野県。と憶えていたけど、正解は青森県なんだよね」と憶えればよいのです。ついでに「生産量の二番目が長野県」と憶えれば、「りんごの生産量」の記憶には「日本一は青森県」「二番目は長野県」とふたつが結びつきます。つまり記憶にムダが生じないのです。
この「○○と憶えていたけど、正解は△△」こそ、「学び直し」を効率よく進めるのに最適な形になります。そして「でも▽▽に関しては○○が正解」とリンクさせればよいのです。ふたつ憶える手間を省けます。
人間の脳は一度憶えたものをすべて脳内に刷り込んでいるのです。
「記憶を消そう」としても、一生消えません。
無理をして「記憶を消して上書きし」ようとも、時が経てば消したはずの記憶が再び浮上してきます。
「記憶を消す」と思っている行為は、単に表層意識から取り除くだけで、記憶の源泉である深層意識から記憶が消えることはありません。もし交通事故や大病を患ったなどして大脳が損傷した場合にのみ記憶から消えます。
あなたは「記憶を消す」ためだけに、交通事故や大病を患いたいですか。
おそらく「ご免こうむりたい」でしょうね。
今ある記憶を無理に消そうとしても、いつか記憶がすり替わってしまいます。
しかし「これはこう憶えていたけど、正解はこれだよね」なら、記憶がすり替わる心配がありません。かえってひとつの知識から多くのものを引き出す素となります。
上記の「りんごの生産量」なら「日本一は長野県と憶えていたけど正解は青森県」と「長野県は二番目なんだよね」と付帯して記憶から引き出されるのです。
「博学」とは基本的に「より多くのものを憶えている」ことを指します。しかし「間違った記憶」とそれに引っかけた「正解」を憶えれば、ひとつの労苦でふたつも記憶できるのです。「間違って憶えた」はずなのに、結果「博学」になっています。
引っかけると鎖のように憶えられる
たとえ「間違って憶えた」としても引っかけて憶えれば知識は二倍。
この原則を利用すれば、数多くのものが憶えられます。
「りんごの生産量」について述べてきましたので、これに引っかける形で三位以下を憶えていきましょう。
「りんごの生産量日本一は青森県」「長野県は二番目」の鎖に「ちなみに三位は岩手県」「四位は山形県」「五位は福島県」「六位は秋田県」までをつなげてみましょう。たとえば「りんごは岩山福秋」と憶えてしまえば、六位までを無理なく憶えられます。さらに「ちなみに青森県のシェアは五十七.九パーセントで、長野県は十九.四パーセント。ふたつ合わせれば国内シェアの八割を占めている」まで憶えてしまうと「青森県」と「長野県」はより憶えやすいはずです。
さらに「世界の生産量」に注目するのも鎖がつながって憶えやすい。
ちなみに「世界一は中国」で「世界二位のアメリカの八倍も生産している」と「ついでに世界三位はポーランド」もつなげてしまいましょう。そして「日本は世界で十六位にすぎない」まで憶えればじゅうぶんです。
このように「りんごの生産量」を憶えるとき、引っかけて憶えていけばどんどん情報が膨らんでいきます。
小説の書き方も引っかけて憶える
「すでにある記憶に引っかけて憶える」方法は詰め込み教育に向いています。
しかし「小説の書き方」も、基本的には「引っかけて憶える」ようにしてください。
たとえば「比喩」を憶えたい場合、「直喩(明喩)」の「まるで〜のような」「いわば〜のような」の形をまず憶えてください。「直喩」が憶えられたら、そこに引っかけるように「隠喩(暗喩)」の「「まるで」も「のような」も使わない「比喩」」もあると憶えればよいのです。
「直喩」の「女性はまるで太陽のように暖かく見守ってくれる存在だ。」の形をバリエーションで憶えていきます。それに引っかける形で「隠喩」の「女性は太陽だ。」を憶えればよいのです。これだけで比喩をすんなり憶えられます。
正しい日本語文として「彼は誰よりも速く走っている。」を憶えておき、「い抜き言葉」である「彼は誰よりも速く走ってる。」も憶えるのです。逆でもかまいません。
なぜ「誤った日本語」も憶えておく必要があるのか。
「正しい日本語」を知るには、あえて「これは誤った表現である」を記憶したほうが手っ取り早いからです。
誤った日本語として「ら抜き言葉」も有名ですね。最近本コラムで触れた「すべき」問題もあります。
いずれも「この形だと誤りで、日本語としてはこちらの形が正しい」と記憶すればよい。
また「誤った日本語」は、スラングとして使えます。
「そんなこと言ったって、できっこないよ」も本来なら「言われたところで」の崩した表現つまり「スラング」です。
小説では基本的に「正しい日本語」が求められます。しかし登場人物の会話文はスラングを使ってもかまいません。上記の「そんなこと言ったって」も、地の文では使えませんが、会話文ならいくらでも使ってかまわないのです。そのほうがキャラが立ちますからね。
そんな言葉遣いも、引っかければいくらでも憶えられます。
最も多いのが「方言」です。ひとつの方言を憶えるだけでも難しいのですが、ふたつ目からはひとつ目に引っかけて憶えていけば、案外するすると頭に入ってきます。
たとえば「ちゃうちゃう、チャウチャウちゃう?」とか。なにを言っているのかわからない方もいらっしゃるでしょう。わかる方も当然いますよね。これは関西方言ふうの一文です。「違う違う、チャウチャウではないか?」を崩した表現になります。
こういった「なんちゃって方言」は、異世界ファンタジーでは絶大な威力を発揮するのです。もしエルフが全員「関西弁」ふうの話し方をしていたら。ちょっと面白い世界観になりますよね。ドワーフが全員「博多弁」ふうの話し方も面白そうです。
そういった使い分けができると、物語世界は多様になります。異種族が標準語をしゃべっていると違和感を覚えやすいのです。
もしエルフが津軽弁をしゃべっていたら、多くの読み手がまったく理解できないかもしれません。でも異種族との会話なんて本来そんなものです。
最後に
今回は「さまざまな知識を憶えるには」について述べました。
まずはひとつだけ、徹底的に憶えてください。それが憶えられたらあとは引っかけるだけで簡単に憶えられます。
あえて「間違ったものも憶える」必要があるのです。そのときは「正しい知識」をまず憶え、そこに引っかけて「でもこう間違えることもあるよね」と憶えていきましょう。
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