1180.技術篇:チャンスが来るまで仕込み続ける

 今回は「プロ」になるためにはタイミングが重要な点についてです。

「小説賞・新人賞」を選ばなければ、どこかの小説投稿サイトで必ず作品を募集しています。

 でも、できれば憧れのあの出版社レーベルから発行したいな、と思うものです。





チャンスが来るまで仕込み続ける


 あなたが将来「紙の書籍」を出版する「プロ」になりたいとします。

 昔は出版社レーベルの編集部へ原稿を送ったり自分で出向いたりし、担当編集さんが付いて「紙の書籍」化へとつながる道がありました。。

 現在では原則的に編集部へ直接の売り込みは禁止となっています。

 では「プロ」への道は完全に閉ざされたのでしょうか。




小説賞・新人賞を獲る

 昔から存在していた道のひとつに「小説賞・新人賞」を獲るというものがあります。

 そもそも「小説賞・新人賞」は大賞を「紙の書籍」化して開催費用を上回る利益を得る手段です。そして開催した出版社レーベルは将来の「ドル箱作家」を増やします。

 だから「小説賞・新人賞」を獲って「プロ」になるのが一般的なのです。

 これは小説投稿サイトが増えた今でも変わりありません。

 数ある小説投稿サイトでは定期的に「小説賞・新人賞」が開催されています。すべての小説投稿サイトを知っているわけではありませんが、おそらく開催されていない時期はないはずです。必ずどこかの小説投稿サイトで「小説賞・新人賞」が開催されています。

 出版社レーベルを選ばなければ、現在開催されている「小説賞・新人賞」へ原稿を応募すればよいのです。

 しかし出版社レーベルの人気や規模によって、将来見込めるリターンが変わってきます。

 またあなたの作風と出版社レーベルのカラーとが合致しなければ、いくら良作であっても大賞は獲れません。出版社レーベルはこれまでの実績によってカラーを築きあげきました。それをあなたひとりの、たったひとつの良作のためだけに変えるなどありえないのです。

 たとえば「ぜひアルファポリスから紙の書籍化したい」と思っているのなら、『小説家になろう』ではなく『アルファポリス』で開催されている「小説賞・新人賞」へ応募しましょう。

「KADOKAWAから紙の書籍化したい」のであれば『カクヨム』で応募します。しかしKADOKAWAは複数のレーベルを抱えているため、応募しているレーベルのカラーと合致した作品でなければ、どんな良作でも「紙の書籍」化はありえません。

 KADOKAWAのレーベルは『電撃文庫』『富士見ファンタジア文庫』『角川スニーカー文庫』『MF文庫J』などライトノベル系が多いのですが、文芸の『角川書店』レーベルも所有しています。

『カクヨム』から「紙の書籍」化を狙うなら、どのレーベルが募集しているのかを見極めたうえで応募してください。

 重ねて書きますが、あなたの作風と出版社レーベルのカラーが合致しなければ、どんな良作でも大賞は獲れないのです。




チャンスは毎年やってくる

「小説賞・新人賞」はどこの小説投稿サイトかを問わなければいつでも開催しています。

 前記したように、狙っている出版社レーベルがあるのなら、それに固執するべきです。

 しかしたいていの出版社レーベルは、年一回しか「小説賞・新人賞」を開催していません。たとえKADOKAWAであっても、複数回開催しているの賞は数少ない。『富士見書房ファンタジア大賞』が前期・後期と分けているくらいではないでしょうか。

 しかしほとんどの出版社レーベルは毎年「小説賞・新人賞」を開催しています。

 なぜなら「ドル箱作家」の連載がいつ終わるかわからず、その書き手の次シリーズが必ず大ヒットするとは限らないからです。

「小説賞・新人賞」の受賞作のほうが、時代(読み手)が求めている作品だといえます。

 つまり売れなくなった書き手のクビはさっさと切って、活きのよい作品で勝負に出る傾向が高い。この新陳代謝の速さが、現在のライトノベルの活況を支えています。

 その意味でも、出版社レーベルのカラーとあなたの作風が合致している必要があるのです。もし毛色の異なる作品が圧倒的に面白ければ、出版社レーベルも賭けに出るかもしれません。うまくすれば、そちらのカラーも加えて幅広く展開できるからです。

 前述したとおり特定の出版社レーベルが開催している「小説賞・新人賞」は年一回が多い。ですが毎年必ず募集があるとも見れます。

 そうなのです。チャンスは毎年必ずやってきます。もし現在執筆中の新作が今年の「小説賞・新人賞」に間に合わないかもしれない。それなら来年にまわせばよいのです。そして来年にもう一本応募できるよう努力すれば、単純計算で受賞確率が二倍となります。

 できれば「企画書」だけで十本近く持っておくべきです。そして新しく募集が開始された「小説賞・新人賞」のテーマに合致する「企画書」を選んですぐに「あらすじ」を仕立ててください。それが面白くなりそうなら、あとはそのワクワクを「箱書き」「プロット」へ落とし込んでいけばよいのです。

 その作品をどうしても『電撃文庫』から出したいのであれば、必ず『電撃文庫大賞』へ応募してください。他の「小説賞・新人賞」はすべて無視してかまいません。

 別の作風の作品をさまざまな「小説賞・新人賞」へ応募するよりも、ひとつの「小説賞・新人賞」へ何本も応募したほうが、単純な確率を上げられます。

 仮にすべての「小説賞・新人賞」に三千人が応募していたとすると、三つの「小説賞・新人賞」へ応募したら、すべて確率は三千分の一になる。しかしひとつの「小説賞・新人賞」へ三本応募できれば確率は千分の一です。

 そう考えれば確率的にもひとつの「小説賞・新人賞」へ複数作を応募したほうが有利であるとわかりますよね。

 チャンスは毎年やってくる。そのとき何打席立てるかでヒットが何本打てるかは変わってきます。たとえ打率が二割五分でも四打席立てれば、期待値で確実に一本はヒットが打てるはずです。

 狙い定めた「小説賞・新人賞」へ毎年大量に応募するようにしてください。

 できれば作風はすべて変えたほうがよいでしょう。

 前述しましたが、出版社レーベルにはそれぞれカラーがあります。それに合致しない作品はどんなに良作でも「紙の書籍」化はされません。

 だからこそ、すべての作品でアプローチを変えたほうが有利なのです。

 野球だって、打席に入るときは毎回アプローチを変えています。ストレート待ちか変化球待ちか。外角待ちか内角待ちか。いっそど真ん中に絞ってもよい。

 柔軟なアプローチが安定してヒットを打つコツなのです。

 小説も、作品が異なればアプローチはすべて柔軟に変えましょう。





最後に

 今回は「チャンスが来るまで仕込み続ける」について述べました。

 あなたの作風と性格と、カラーが合致している出版社レーベルの「小説賞・新人賞」へ応募してください。

 たいていの「小説賞・新人賞」は毎年必ずやってきます。

 それまで作品を仕込み続けるのです。一年一回の試合でも、何打席立てるかはあなたの努力次第。

 ぜひひとつの「小説賞・新人賞」にこだわってください。

 手当たり次第に応募して、そのうちひとつが受賞できたらよい、という考え方にも理はあります。私もそちらのご提案をしていますからね。

 ですが、そこまで幅広い作風をお持ちでなければ、作風とカラーの合致する「小説賞・新人賞」だけで勝負するべきです。

 チャンスは毎年やってきます。

 それを逃さないようにするのが「攻略法」と言えるでしょう。



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