1166.技術篇:小説にルールは存在しない
本コラムを1165話お読みいただいて、ここで思いっきりちゃぶ台返しなサブタイトルをつけてみました。
しかし基礎自体にはルールはあるので、そこはしっかりと押さえておきましょう。
小説にルールは存在しない
ここまで丸三年、四年目を迎えた今、こんなことを書くのは自虐でも滑稽でもあるのですが、ひと思いに書きたいと思います。
小説において絶対的なルールがあるとすれば、「ルールなんて存在しない」ということです。
あるのは、書き手本人が自らに課したルールのみ。あとは自由に書いてよい。
しかし読み手の立場から読んでみて、書き手自らのルールに則った作品が必ずしも面白いものであるのか、読みやすいものであるのかはわかりません。
書くのにルールは存在しない
小説はどんな書き方をしてもよいのです。
「ルールがないのがルールです」
まるで禅問答。答えになっていません。
そもそも小説は俳句や短歌のような「韻文」ではなく、自由に書いてよい「散文」に類しています。
何文字で書いてもよいし、季語を含まなくてもよいし、韻を踏まなくてもよいのです。
だからこそ、小説を書くのは難しい。
決まりごとがあれば、それに則った作品を創れば誰もが平等に評価されます。
テレビ番組『プレバト!!』において芸能人が俳句のランキングを競っていますが、あれも決まりごとのある俳句だからできるのです。もし小説でランキングを競う企画を立てたところで、絶対的な基準がありません。季語が効果的だの、リズムに乗っているだの、韻を踏んでいるだのは評価のポイントにもならないのです。どんな世界観のどんな作品を書いても、それは「小説」と呼ばれます。
小説に決まりごとなんてありません。だから皆様はどう書けばよいのかわからなくなるのです。
書くためのルールがいっさいない小説だからこそ、書き方を教えてくれなければ書きようがありません。
誰もがバスケットボールのドリブルができるわけでもないし、レイアップシュートが決められるわけでもないですし、スリーポイントシュートが放り込めるわけでもないのです。
まずボールをどう扱えばドリブルができるのか。教えてもらう必要があります。ドリブルもできずにバスケットボールはプレイできません。ダブルドリブルやオーバーステップなどの反則を犯すのが関の山です。
ドリブルができるようになったらレイアップシュートの練習です。このふたつができるようになれば、攻撃面を任せられる存在になれます。さらにスリーポイントシュートが放り込めるようになれば、ロングレンジからの決定力も増して攻撃の要となれるのです。
一人前になるのにこれだけのことを教えてもらわなければなりません。
バスケットボールにはコーチがいて、正しいドリブルやレイアップシュートやスリーポイントシュートのやり方を手取り足取り教えてくれます。
しかし小説はどうでしょうか。誰も教えてはくれません。学校の国語で小説を書く練習はしたでしょうか。教えられたでしょうか。教わっていませんよね。
小説は長年「職人芸」と同様に思われていました。「技術は盗んで身につけろ」のスタンスです。
それで良質な書き手が誕生するのなら、「技術は盗んで身につけろ」には説得力があります。しかし小説投稿サイトに掲載されている作品を読んでみてください。「玉石混淆」というよりも「掃き溜めに鶴」が似合う状況ではありませんか。
本コラムは、そういった「小説を書くためのルール」を皆様に知っていただこうと企図しました。
そもそも「ルール」なんてないのに、なぜ「小説を書くためのルール」を書いて発表しているのか。
小説は「職人芸」ではないと考えているからです。
きちんとした理論があり、方程式があり、解法がある。
そう信じています。
ではなぜ学校では小説の書き方を教えてくれなかったのでしょうか。
評価が難しいからです。
前述しましたが、小説に絶対的な評価は存在しません。どんな書き方をしても、面白く読めればそれが正解なのです。ですが教える側つまり国語教師は小説を書いた経験がない。「この作品はどのくらい面白いのだろうか」がわからないのです。
だからどんな国語教師でも「小説の書き方」は教えられません。
しかし世の中には「小説の書き方」を教えてくれる人が何名もいます。
多くは過去に大賞を授かってプロデビューした人です。彼ら彼女らがカルチャースクールやセミナーを開いて小説家志望の人に「小説の書き方」を教えています。なぜそんなことをしているのか。書いた小説だけでは食べていけないからです。つまり自分流の「小説の書き方」は持っているものの、それを駆使しても食べていけるだけの大ヒットは飛ばせない。そんな方から「面白い小説の書き方」なんて教われないのです。
次に「専門学校」か「大学国文科」で講師・教師から教われます。カルチャースクールやセミナーよりも理論はすぐれています。しかし残念なことに専門学校卒、国文科卒で「小説賞・新人賞」を授かった人は数えるほどしかいません。年に数千人の卒業生が生まれ、その中から「小説賞・新人賞」を奪い合うわけです。高い授業料を払ったのに大賞を獲れない方のほうが圧倒的に多い。授業でも「文豪」の名作を引いて「この表現がよいね」とか「ここはもっと追及したほうが深みが出るね」とか論評する。その「文豪」のシンパが生まれるだけです。
本コラムはカルチャースクールやセミナーとも専門学校や大学国文科とも異なります。
「文豪」の書いた「小説読本」やカルチャースクールやセミナーを開催しているプロの書いた「小説の書き方」などの書籍に、「文章の書き方」「敬語の使い方」などプロでも教えないものも取り上げています。
参考にした書籍はコラムを書き終わったらすべて古本屋で処分しているため、何冊読んだかわかりません。百冊はゆうに超えていると思います。
「文豪」から「新進気鋭」「国語学者」に至るまで、参考にした書籍は枚挙に暇がありません。
それだけの情報量を詰め込んだからこそ、総文字数が四百万字を超えているのです。
あなたが本コラムからなにを学べるのか。
ただの「読み手」として読んでも「これなら私にも書けそう」と思うでしょう。しかし「書き手」として読んでみて初めて「あぁ、そうか!」と合点がいくはずです。
本コラムから小説を書くエッセンスを汲み取れる方だけが「小説賞・新人賞」を獲れます。
読みやすいルールは存在する
どんな書き方をしてもよいのが小説です。しかし「多くの人に読んでもらえるルール」つまり「読みやすいルール」は存在するのです。
そもそも「読みやすい」とはなにか。「違和感を覚えない」「物語の展開が破綻していない」「表現が多彩」といった要素がすべて含まれています。
どんなに表現が多彩でも、それだけでよい小説にはなりません。語彙不足でも面白い物語はいくらでもあるのです。幼稚園・保育園時代に読んだ童話やおとぎ話、小学生時代に読んだ偉人伝などは、大人になった今読んでも面白いと思います。大人だからこそ気づきにあふれていて楽しめるかもしれません。
「読みやすい小説を書くルール」は「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の順に物語を構築するという原点から始まります。そして面白い小説も同じ手順を踏めば必ず出来あがるのです。
主人公の設定だけを作り込んで、誰と戦わせるのか、どんな仲間やライバルなのかを明確に決めず、結末もまったく定めていない。この状態で連載小説を書き始めたら、十中八九「エタり」ます(永遠に終わりません)。
小説投稿サイトの連載小説で、好評を博した作品が突如として「エタる」のも、筋道を明らかにしないまま始めてしまったからです。結末が見えないのであれば、伏線を張れもしません。思わせぶりな描写を書いて、のちに伏線として活かせたらいいなと、思いつきだけで書く人が多いのです。
本コラムは一話ごとに取り扱うテーマを変えていますから、千話以上あっても読み進められます。サブタイトルで気になった一話だけ読んでもだいたいはご理解いただけるはずです。
しかし物語としての連載小説で五百話を超えてもなお終わらない作品というのも、小説投稿サイトにはゴロゴロ存在しています。小説投稿サイトで四百万字も書いて「紙の書籍」にさえならない。趣味で書いているとしても、よく続けられるなと思います。
違和感を覚えない作品には「助詞を重複させない」「同じ漢字は使わない」など細かなルールがあります。
これも本コラムではさんざん書き続けましたから、もう耳にタコ……って読んでいるのですから目に鱗でしょうか。いつか皆様の目から鱗が落ちる日が来ると願っています。
「読みやすいルール」を守って書いているかぎり、読み手は読んでいて楽しいのです。
読みにくい漢字は使わない。知らないかもしれない横文字(外来語)は使わない。
これも「読みやすさ」を考慮したルールです。
「読みにくい小説」を楽しく読める方は、フョードル・ドストエフスキー氏『罪と罰』を苦もなく読めてしまうのでしょうか。読み手として尊敬しますが、書き手としてはもっと楽に読める作品のほうが楽しめますよと言いたいところです。
最後に
今回は「小説にルールは存在しない」ことについて述べました。
小説には明確なルールや縛りはありません。
ですが、意味不明な文章が並んでいるものを「小説」とは呼ばないのです。
物語としてしっかり形になっているから、読み手を楽しませられます。
今一度「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の精神に立ち返りましょう。
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